米化粧品専門店大手アルタビューティ(ULTA BEAUTY)は、米量販店大手ターゲット(TARGET)の店舗内にアルタビューティが出店するショップ・イン・ショップ形式の提携を2026年8月で終了することで合意したと発表した。21年に始まった協業は約5年で幕を閉じる。契約満了後は更新せず、両社が独自戦略に注力する方針。契約終了までは、「アルタビューティ・アット・ターゲット(Ulta Beauty at Target)」のコーナーは、ターゲットの店舗と公式ECサイトで継続する。
セフォラが全米コールズへの展開完了、競争環境激化
提携解消の背景には、市場の競争激化がある。ラグジュアリービューティ市場では、20年12月にセフォラが米百貨店コールズ(KOHL’S)との提携を発表。今春には小型店舗105店に新規オープンし、全米コールズへのチェーン展開を完了した。コールズによると、提携からわずか4年で全米1100店舗以上に「セフォラ・アット・コールズ」を導入。ビューティ事業を20億ドル(約2960億円)規模に育成した。デイヴ・キンベル(Dave Kimbell)=アルタビューティ前最高経営責任者(CEO)は「競争は激化し、これまでにない厳しい環境」と述べていた。「アルタビューティ・アット・ターゲット」は全米に610店舗を展開し、当初は約800店舗まで拡大予定だったが、今年初めに新規出店を停止。最終的に提携終了を決定した。
アルタビューティのアミー・バイヤー・トーマス(Amiee Bayer-Thomas)最高小売責任者は、「ターゲットとの提携はブランド力を全米に広げる一つの手段だった。今後は自社戦略“アルタビューティ アンリーシュド(Ulta Beauty Unleashed)”に沿って幅広い品ぞろえやサービスを提供し、ブランドの次章を切り開く」とコメント。ターゲットのリック・ゴメス(Rick Gomez)=エグゼクティブ・ヴァイスプレジデント兼チーフ・コマーシャル・オフィサーも「アルタビューティとの成功を誇りに思う。今後も、消費者がターゲットに期待するビューティ体験を提供し続ける」と述べた。
アルタビューティは海外進出とEC事業で成長模索
米証券会社ジェフリーズ(JEFFERIES)の市場アナリストであるアシュリー・ヘルガンズ(Asheley Helgans)氏は、今回の提携はアルタビューティの大きな収益源ではなかったものの、利益率改善とブランド認知拡大に寄与したと指摘。今後はデジタル強化や海外市場開拓など、より広範なブランド戦略に焦点を移すとみている。アルタビューティは先月、英高級美容小売りのスペースNK(Space NK)の買収を発表。年内にオンラインマーケットプレイスの開設を予定している。また、メキシコと中東へも年内に進出する予定だ。
ターゲットは低価格帯強化で対抗
一方のターゲットは、困難な時期を迎えている。過去5年間で株価が24%以上下落。長年務めたブライアン・コーネル(Brian Cornell)会長兼CEOは、22年に「あと約3年」と続投期間を明言しており、近く退任が見込まれ経営は転換期を迎えている。同社はコーネルCEOの下、パンデミック対応や即日配送強化、大手ブランドとの協業を進めたが、文化戦争をめぐる対応やDEI戦略転換など課題も抱えた。同社の23年の既存店売上高は前期比3.7%減だったが、昨年は同0.1%増と持ち直した。だが今年第1四半期には再び減少。ただし、ビューティ部門は好調で、昨年の売上高は同5.1%増の132億ドル(約1兆9536億円)に達し、19年比でほぼ倍増した。
ターゲットは提携で得たノウハウを全店舗の化粧品売り場に応用し、品ぞろえを拡充。2000アイテムを追加することを発表し、その9割を20ドル(約2900円)以下に設定。「イオス(EOS)」や「ナイキス(NYX)」「ネイティブ(NATIVE)」などの強化に加え、50ブランドを新規導入するなど、低価格帯での競争力確保を狙う。