
ビームス、ユナイテッドアローズ、ノーリーズ、ビショップ、アバハウスはこのほど、販売員の地位向上を目指す合同教育プログラム「スペシャリティ ストアーズ アソシエーション(以下、SSA)」の2025年度最終研修を行った。最終研修には、ビームスの窪浩志ディレクターズバンク・エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターと、ユナイテッドアローズの栗野宏文上級顧問が登壇。販売員時代のエピソードを交えながら、服の魅力を伝えるために必要な視点を語った。

「SSA」は、ビームスとユナイテッドアローズを中心に1991年に始動した取り組みで、今年で36回目を迎えた。参加企業は年度ごとに異なるが、年間を通じてテーマに沿った合同研修のほか、ビーチクリーンやチャリティーパーティーなどの社会貢献活動も行い、販売員が企業の垣根を越えて学び合う場となっている。
1970年代から着続ける私物も披露
2025年度は「多様性の時代に合わせた『ファッションを楽しむ』を考える」をテーマに、各社の販売スタッフを中心に約35人が参加。最終研修では、両社内はもちろん、業界内でも“レジェンド“と呼ばれる窪クリエイティブ・ディレクターと栗野上級顧問が幼少・学生時代のファッション体験や、当時はまっていたカルチャーや音楽にどのような影響を受けてファッションが好きになったのか、といった生き方にも通じるエピソードを繰り広げた。
さらに両氏が1970年代以降に自身が実際に着用してきた服を持参し、それぞれのアイテムとの出合いや着こなしについても語った。1着1着にまつわるエピソードは興味深く、参加者は細部を確かめながら熱心に写真に収めていた。
栗野上級顧問は、いずれもほころびたところを修繕し、いまでも着用しているという。「服は道具だからこそ、自分が着たいように自由に着ればいい」と語り、暗黙のルールに縛られ過ぎることが、かえって業界の可能性を狭めてしまうと参加メンバーたちに伝えた。
販売員に必要な“知識を知恵に変える力”
トーク後半では、両氏の販売員時代について振り返り、当時、ファッションの楽しさをお客さまにどう伝えてきたかといった経験談を共有。ブランドの背景を知るだけでなく、服の構造やものづくりへの理解を深めること、時間がある時にはひたすらコーディネートを組み、感覚を磨くことなど、具体的なアドバイスも伝えた。
栗野上級顧問は「知識と知恵は違う。知識は調べれば誰でも分かるが、それだけではオリジナルではない。知識を自分の中に取り込み、知恵に変えていくことが大切だ」と話し、「クリエイティブな販売員になるためには、そこが必要になる」と強調した。
窪クリエイティブ・ディレクターは、「僕は物知りで歴史を語れる人が良い販売員だとは思わない。誰もが同じ熱量で服を好きなわけではないからこそ、自分が本当に好きだと思えるポイントを、自分の言葉で伝えることが大事。プロのアマチュアリズムを極めてほしい」と話した。
午後は質疑応答に続き、各テーブルで当日の学びを整理し、それを接客や売り場でどう生かすかを議論した。参加者は今後、それぞれの店舗に持ち帰り、スタッフや顧客とのコミュニケーションに反映していく。
この業界にいると、誰もが服が好きで興味を持っていると勘違いしてしまうことがある。ファッションの奥深さや魅力を知っているから仕方のないことだが、その魅力をお客さまにも感じてもらえるよう伝えるのは、販売員の役目だと、あらためて感じることができた。