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「ミュベール」中山路子の隠れ家「エム」、日台シンガポールの女性デザイナーで広げる共感の輪

 「ミュベール(MUVEIL)」の中山路子が手掛ける「エム(M)」の東京・神田明神境内店舗で11月、台湾のプロダクト「キム デザイン(KIMU DESIGN以下、キム)」とシンガポールと東京を拠点にするジュエリー「ユミコ ルカウ(YUMICO LUCAU以下、ユミコ)」との合同展「皇帝のトレジャーボックスとジュエリー」を開催した。「キム」とは中山がビジネスで頻繁に訪れる台湾で、「ユミコ」のジュエリーとは、同ブランドがとある百貨店で開催していたポップアップショップで出合ったという。ファッション、プロダクト、ジュエリーと異なるジャンルの女性クリエイター3人に話を聞いた。

 中山が「エム」を立ち上げたのは約2年前。衣服の持つ“間接的影響力”をテーマにした「ミュベール」とは正反対の物作りで、彼女自身の思いが詰まったブランドだ。中山は、「展覧会や食事会など自分が主役ではないシーンがある。個を持ちつつ“他人”を引き立てられるモノ作りをしたいと思った」と話す。2017年6月に神田明神境内に「エム」の旗艦店をオープン。同店は「エム」の販売だけでなく、作家の作品展示を行うなどギャラリー的な存在でもあり、コミュニティーづくりの場所でもある。「点ではなく、線や面でつながるようなシンプルで長く寄り添える洋服を作りたい。そのため、物作りにもこだわっているので大量生産はできない」という。そのため、販売は旗艦店及び自社ECサイト、限られた取引先で行っている。店舗の営業時間も、金、土、日、月の13~19時半。事前予約制ではないが、来店客とは会話やお茶を楽しみながらゆったりとした時間を過ごしてもらっているそうだ。

 「キム」のプロダクトに関しては、「一つ一つが際立ちながらも和洋両方になじんで引き立てるデザインが、『エム』の目指す物作りと似ていると思った」と中山。この秋に登場したらせん階段のような形の“リベールコンテナ”は清王朝の宝箱からインスピレーションを得た収納ツールで、その中に「ユミコ」のジュエリーが飾られている。「キム」は、台湾人女性2人と男性1人のデザイントリオ。今回の展示のために来日したケリー・リン(Kelly Lin)は、「私たちのプロダクトと『エム』の洋服、『ユミコ』のジュエリーには共通点がある。デザインに遊びがあるため、使う人が使い方を決めることができる」とコメント。新作の収納ボックスは360度好きな角度で開けるので、さまざまな飾り方ができる。

 「ユミコ」のデザイナーのルカウ優美子はシンガポールと東京を拠点に活動している。彼女はニューヨークの金融機関に勤めながら彫金を学んでいたが、アメリカ人の夫のアジア転勤を機に、本当にやりたいことを始めようと自身のジュエリーブランドをスタートさせた。ルカウは「自分が欲しいと思うジュエリーを作りたかった。それを他の人にも届けたいと思ったのがブランド立ち上げのきっかけ。『エム』とは出合った時から相思相愛だった」と話す。「エム」とのコラボは今回で3回目だ。ルカウがデザインしたジュエリーは日本の職人と二人三脚で仕上げ、百貨店などのポップアップショップを中心に販売。中山は、「『ユミコ』は自立した自由な女性のためのジュエリーで、それは『エム』が描く女性像と共通している。『ユミコ』も『キム』も哲学が込められたブランドでシンパシーを感じる」と言う。

 これら3人の女性クリエイターの共感により、ファッション、ジュエリー、プロダクトという異なるジャンルが融合した空間は新鮮だった。「女性の方がライフステージの変化から受けるインパクトが大きく、男性より感性がこまやか。だから、女性同士の方が共感したり、刺激を受けたりしやすいのだと思う」とルカウ。

 これからも「エム」では、中山が共感したクリエイターや作家たちとのコラボレーションが見られることだろう。