ファッション

日本の“東海岸”で探すアメリカ 杜の都のファッション戦線に異状あり!?

「WWDジャパン」8月26日号は、“2019年春夏に百貨店で売れたもの”を特集しています。今回は、北は北海道から南は鹿児島まで50百貨店に協力いただきました。さらに、これまで定期購読特典だったビジネスリポート(データ集)が単品販売で1万円で購入できるようになりました!僕は、創業200周年を迎えた仙台の藤崎を取材したのですが、せっかく仙台まで来たのだからと、百貨店以外の商況についても探ることにしました。

 7月に、ロサンゼルスで行われた全米最大級のビンテージフリーマーケット「ローズボウル(ROSE BOWL)」を取材しました。事前リサーチで“ローズボウル”と検索してヒットしたのが、仙台にあるアンティーク家具店の「ローズボールアンティークス」でした。実は数年前に「ローズボウル」に行く際にも検索の上位に挙がってきて、勝手に気になっていた存在でした(笑)。しかし仙台にとんと縁がなくて、今回の出張取材に伴い、ようやく訪問することができました。

 対応してくれたのはバイヤーの菊田豊さん。聞けば、もともとは「ローズボール」という古着店だったとか。「オープンは1984年。当時は仙台中心部の一番町にありました。古着店は2~3軒くらいしかなかったのですが、90年代後半をピークに一気に増えて100軒以上になりました。それが今は10軒ほど。こんなに浮き沈みがあるのって仙台くらいでは?」。う~ん、きれいめ志向な仙台っ子に古着ブームが伝播して、でもその熱が冷めてしまったということでしょうか。「『ローズボール』も業態を変更して、10年にアメリカのビンテージ家具などを扱うショップになりました」。さらに15年に仙台港近くの卸問屋街に移転しました。

 古着が流行った90年代後半の仙台っ子のファッションについて聞くと、「ビンテージのデニムウエア、ハワイアンシャツ、軍モノが人気でした」との答え。雑誌「メンズノンノ(MEN'S NON-NO)」(集英社)の全国スナップで見た、セレクトショップのオリジナルブランドを着るような、もしくは彼女のお母さんに気に入られそうなきれいめな格好をしている仙台っ子のイメージとはかけ離れた実像!僕の驚きをよそに、菊田バイヤーは「コテコテでしたよ(笑)。フライトジャケットの“A-2”も売れたなぁ」と続けます。ますます仙台っ子のイメージが崩壊……。

 とはいえそのブームは去り、今の仙台には僕の想像する通りのコンサバな装いがあふれていました。気になる業態変更後の「ローズボールアンティークス」のビジネスは、「いいですよ」とにこり。主な購買層は50代前後。それでいて同店の平均単価は1万~2万円、高くても30万円と値頃感があります。さらに個人客に加えて、全国のショップやカフェにショーケースなどの什器を卸しているそうです。「個人客向けには、ランタンなどアウトドアで使えるアイテムが売れています。ほかにも、木製の折り畳みアイロン台をテーブルに転用したり、お客さんの方が自由にアンティーク家具を遊んでくれています」。アメリカでの買い付けは年に3回。「それでも商品が足りない」ほど人気だと言います。

武骨なオーナーが服ではなくスタイルを売る

 「ローズボールアンティークス」を後にして訪れたのは、一番町にある古着店の「アントレー」です。ここではオーナーの大貫友也さんに話を聞きました。「ローズボールアンティークス」の菊田バイヤーの話の裏を取ろうと、もう一度90年代後半の仙台っ子のファッションについて質問しました。「『オーシャンパシフィック(OCEAN PACIFIC)』や『ライトニングボルト(LIGHTNING BOLT)』『ヴァンズ(VANS)』など、西海岸っぽいファッションが流行っていましたね。皆『リーバイス(LEVI’S)』のベルボトム“646”をはいていました」。こ、今度はサーフ!僕がこれまで信じて疑わなかった仙台っ子像はどこへ……。

 アントレーは09年のオープン。大貫オーナーが1人で切り盛りしています。軍モノが多いですが、大貫オーナーは「特にこだわってはいません。シンプルで機能的な服を集めた結果、軍モノ比率が高まりました」と言います。客層は10~40代が多く、99%が男性。売れ筋はコートで、「真夏でも売れます」。なかなかに強気なスタイルですが、「わがままな店づくりも僕1人だからできること。スタッフを抱えていたら“売れるもの”を扱わなくてはならないので」と聞いて納得しました。「バーバリー(BURBERRY)」はオープン当初、つまりはブーム以前から買い付けており1960~70年代のアイテムが並びます。

 アントレーで古着の魅力にハマった客も多いそうで、それは若年層?と聞くと「いえ、40~50代が多いですね」。そのわけは、きっと大貫オーナーによるブログ。「インスタグラムなどSNSはやりません。マス向けだと思うし、あれって虚飾ですよね(笑)。文字数も短いのが推奨のようで、それだと書きたいことが書けません。だから僕はブログです」。毎日1投稿と決め、撮影に2時間、原稿に4時間かけるそうです。「写真は三脚を立てて自撮りしているし、原稿も接客しながらだからはかどらなくて」と謙遜しますが、半日がかりの作業には頭が下がります。

 夢について聞くと、「ショップも10年のひと区切り――だからブランドをやってみたいんです。ジャケットやパンツなどクラシックなものを作りたいです。もちろん大好きな古着店はやめません」と笑った。

 シンプルな機能服があったり、こだわりのビンテージがあったり、「やっぱり現地体験しなくちゃ分からないな」と仙台の奥深さを感じつつ、新幹線やまびこに乗って帰京しました。

最新号紹介

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