ファッション

フランスで45.9度! 記録的な猛暑で欧州アパレルビジネスはどうするべきか

 2018年の夏はヨーロッパ各地で40度超えという記録的な猛暑となった結果、「ギャップ(GAP)」や「H&M」「ユニクロ(UNIQLO)」「スーパードライ(SUPERDRY)」、そしてプライマーク(PRIMARK)など多くの大手アパレルや小売りが売り上げ不振に見舞われた。今年もすでにフランス南東部で45.9度と同国での史上最高気温が更新されるなど、ヨーロッパは暑く長い夏になると予想されているが、ビジネスの“干上がり”を防ぐ方策はあるのだろうか?

ファッションブランドは
自社ブランドを縮小

 独ファッションEC企業ザランド(ZALANDO)のフェデリコ・ロッシ(Federico Rossi)需要計画・分析部門ディレクターは、「予想外の気候変動に対応するため、従来のようにシーズン前に商品を仕入れるのではなく、シーズン中に仕入れるようにした。また化粧品やアクセサリーなど、季節にあまり依存しない商品を増やしている」と語った。同社は最近、「ナイキ(NIKE)」や「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」など他社ブランドの取り扱いを拡大している。これによって自社生産や在庫を抱えるリスクを低減すると同時に、各ブランドの“シーズン対応策”から学ぶことができたという。

 やはり18年の猛暑に苦労したという「ヒューゴ ボス」は、季節外れの暑さや寒さなどへの対応策としてデザインのデジタル化を進めている。これによって需要に柔軟に対応でき、在庫や無駄を削減できるという。また、気候に左右されにくいシャツやスーツなどの定番商品を全体の半分程度まで増やしているということだ。

天候に合わせて顧客にメール配信

 気候変動に関するコンサルティングを手掛ける米プラナリティクス(PLANALYTICS)のエヴァン・ゴールド(Evan Gold)=グローバルパートナーシップ部門エグゼクティブ・バイス・プレジデントは、「天気予報では、正確な天気は2週間先程度までしか分からない。そのため、消費者はシーズン前にものを買うのではなく、実際に必要になってから買うようになった」と話す。「例えば週末が暑くなると分かった時点で、顧客に『サマードレスがセールになります』とメールを配信するというのも一つの手だと思う。ただし、ベルリンで猛暑でもパリでは雨ということがあるので、地域別に対象を分けてリアルタイムで配信するなどの工夫が必要になる」とアドバイスした。

 定番商品のほかにも、“夏物”や“冬物”と季節に限定されずに着られる商品を仕入れておくことも重要だろう。ファッション関連データ会社の英エディテッド(EDITED)による18年の調査では、最近は全体的に夏物の方がよく売れ、売り場に占める割合も大きくなっていることが分かった。

地球温暖化対策も大事!

 サステイナビリティーに関するコンサルタント会社、仏ビーエスアール(BSR)のエリザ・ニエムゾー(Elisa Niemtzow)=マネジング・ディレクターは、「気候が変動すると、コットンやカシミアなどの原材料の調達やその価格にも影響すると同時に、暑すぎて出かけたくないといった消費行動にも影響する。あらゆる分野に影響するので、包括的なアプローチが必要だ」と述べた。天候によって変化する消費者の需要に迅速に応えるには、サプライチェーンを柔軟に管理する必要があるため、IT技術への投資も欠かせないと同氏は語る。これには在庫は少なくてよいという側面があるので、在庫一掃セールなどの値下げが必要なくなるなど、プラスの効果も期待できるという。

 また、近年の環境保護に対する意識の高まりも忘れてはならないだろう。猛暑が続くと、消費者は地球温暖化を強く意識するので、買い物もそれに影響される。ドイツで3年前に設立されたブランド「ファンクション シュニット(FUNKTION SCHNITT)」のアシュラフ・スプリットガーバー(Ashraf Splittgerber)=マーケティング・マネジャーは、「そのアイテムを中心にスタイルを作り上げられる、タイムレスでサステイナブルな衣服を好む人が増えている。当ブランドは、“トレンドフリー”な定番商品を注意深く選んだ原材料で作っている。現代は気候変動や、個人の消費が地球温暖化にどう影響するかを意識している人が以前より増えたと思う」と話した。

まとめ:猛暑に打ち勝つ12カ条

・天候に関連した消費者行動をしっかり分析する
・D2C(顧客直結型)ビジネスにする
・より柔軟な生産体制を、より近場に構築する
・天候で変化する消費者の需要に素早く応えるため、小ロットで迅速に生産する
・シーズン中に生産する
・シーズンに左右されない定番アイテムをそろえる
・アクセサリーなど、シーズンに左右されないカテゴリーの商品を扱う
・季節に限定されない、中程度の厚みの素材や機能性素材の衣料を扱う
・夏物を増やす
・メインのコレクションを補完するカプセルコレクションを発表する
・天候や地域など細かくターゲットを設定したマーケティング戦略を取る
・とにかくECを強化。出かけるには暑すぎる日でも、家で買い物を楽しんでもらおう

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