ファッション

4年目の「オーラリー」がパリコレに挑戦する理由

 「オーラリー(AURALEE)」は糸から開発するオリジナルテキスタイルと、今の空気感をとらえた絶妙なシルエットに定評があるブランドだ。生地問屋のクリップ クロップからスピンアウトし、強みにする生地は、より良い原料を求めデザイナー自ら国内外の産地まで足を運ぶこだわりよう。クリーンかつミニマルなテイストで見た目に特徴があるデザインではないが、質の良さ、適正な価格設定でファンの心を掴んできた。

 スタイリストやメディア関係者など、ファッション玄人からの評価も高い。卸先はデビューシーズンから買い付けを続けるロンハーマン(RON HERMAN)、ビオトープ(BIOTOP)、ビショップ(BSHOP)をはじめ、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)、エディフィス(EDIFICE)、イエナ(IENA)、エストネーション(ESTNATION)、バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)などの有力店が名を連ねる。2015年春夏にデビューし、17年9月には東京・南青山に直営店を出店。昨年比30%増の伸び率で成長している。

 10月には東京都と繊維ファッション産学協議会が主催するファッションコンペ「ファッション プライズ オブ トウキョウ(以下、FPT)」で、「マメ(MAME KUROGOUCHI)」に続く、第2回の受賞者として選出された。ブランドスタートから4年目にして、19-20年秋冬シーズンのパリ・ファッション・ウイークでパリコレデビューする。パリコレに挑む理由を岩井良太「オーラリー」デザイナーに聞いた。

WWD:パリコレに参加しようと思った理由は?

岩井良太「オーラリー」デザイナー(以下、岩井):ブランドをスタートさせた当時は直営店を開くことを目標にしていましたが、思ったよりも早くその夢を叶えることができました。次のステップはブランドの世界観や空気を凝縮して見せること。これまでモノ作りに一生懸命になっていた中で、ブランドの見せ方にちゃんと時間を使えていなかった。また、いろんな方からFPTを勧めていただいたのもきっかけです。

WWD:FPTを受賞した感想は?

岩井:実はプライズに応募したのは、締め切りの日でした。スタッフ5人集めて、「パリコレに挑戦したい」ということを伝えてからエントリーしました。受賞の連絡があった時は、うれしいと感じる余裕がなくて“とにかくやらなくては”という気持ちでした。

WWD:発表形式は?

岩井:本来は1月のパリ・メンズ・ファッション・ウイークで発表したいと思っていましたが、生地が間に合わず2月末〜3月頭のウィメンズのウィークでメンズとウィメンズを合同で見せる予定です。たくさんの人に見てもらいたいので、プレゼンテーション形式でコレクションを見せられたらと考えています。ただ演出家も未定なので、これからチームと一緒に決めていきたいです。

WWD:今の海外でのビジネスは?

岩井:これまで海外で展示会を開いた経験はありませんが、海外バイヤーが日本の展示会に買い付けに来てくださることはありました。18-19年秋冬でイギリス、フランス、カナダ、韓国、台湾、香港の約10店舗に卸しています。海外のセールスはウィメンズとメンズで均等に売れています。でも、直営店に来店される外国からのお客さまは圧倒的に欧米の男性が多いです。なので、海外では特にメンズに可能性を感じています。現在の売上高のバランスは国内が95%、海外は5%。これを海外10%くらいにしていきたいです。 “海外でも知ってもらいたい”という思いが強いのですが、結局海外の認知度を高めるためには必然的に商売につなげなければいけません。

WWD:昨年、ブランドスタートから3年目で直営店を開いたが?

岩井:タイミングはもう1年先だと思っていたんですが、事務所の引っ越しを考えたときにこの物件が空いたんです。場所がとても気に入ったのですが、店舗用の物件ということで店を開くことを決めました。店を開いてからいろんなことが変わりました。人が集まってくるようになり、お客さまとお話できることも糧になっています。ブランドの見られ方も変わったと思います。

「“オーラリーらしさ”とは、
品があって、等身大で背伸びしない服のこと」

WWD:“オーラリーらしさ”とは?

岩井: “品があって、等身大で背伸びしない服”です。業界の先輩たちには「ものに対してまじめ」と言っていただけます。いい素材を追求して、気負いなく着られる服。重量感がない軽いイメージと、シルエットにもこだわっています。

WWD:ブランドの名前の由来は?

岩井:「オーラリー」はエルビス・プレスリー(Elvis Presley)の名曲「Love Me Tender」の原曲の名前であり、“光る土地”という意味なんです。語呂がいいからという理由で選びましたが、日の当たる場所で着る、日中の服を作りたいと思っていたのでぴったりでした。

WWD:デザインは素材ありき?

岩井:素材からとデザインからの両方です。「こういう原料、加工があるから、このアイテムを作ろう」というパターンと、「こういう商品を作りたいから、こういう素材を作ろう」というパターン。時間のかけ方も、次のコレクションを準備するために半年という期間がある中で、半分は素材の開発に充てています。モノによっては1年かけることもあります。大半が糸から作っているもの、その他は別注生地など100%がブランドのオリジナルです。シーズンに1〜2回は原料探しの出張に出ています。最近はオーストラリアやニュージーランド、モンゴルへ紡績屋や機屋の方々と一緒に行きました。

WWD:実はマニアックな素材の使い方だが、服自体はそう見えない。

岩井:こだわってはいるのですが、素材だけを武器にしたくなくないんです。空気感や感覚的なものを重視しています。でも、展示会では生地の説明ばかりしてしまいますね(笑)。

WWD:素材に興味を持ったきっかけは?

岩井:今はないブランドですが、前に働かせていただいた「ノリコイケ(NORIKOIKE)」での経験です。素材へのこだわりと上品なデザイン、モノ作りの基礎を教えていただきました。テキスタイルの勉強をした訳ではなく、素材が好きになり詳しくなっていきました。

WWD:今後の目標や課題は?

岩井:いいモノを作り続けて人を喜ばせたい。そこをベースに新鮮なものを取り入れていきたい。まだまだやれることはあると思っています。これまでできていなかったシューズやバッグもこれからやっていかないといけないことですし、今はスタッフが5人なので、ブランドを強化していくためにもメンバーを増やしていきたいと思っています。

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