ファッション

技術は想像以上に進んでいた! 素材見本市「ミラノ・ウニカ」が刺激的

 この5月からテキスタイル担当になり、初めて素材見本市「ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」を取材した。約12年間、ファッションショーやデザイナーズ・ブランドの取材と、百貨店やセレクトショップといった小売りを担当してきた私にとって、素材の見本市は非常に新鮮で学ぶことが多かった。

 素材に興味を持ったきっかけは、ファッション業界におけるサステイナビリティーとは何か?と本気で考えるようになったからだ。今、技術革新によって何がどこまで可能になったのか?――「WWDジャパン」7月30日号で詳細をレポートしたが、「ミラノ・ウニカ」もまた、前回の2019年春夏シーズンからサステイナビリティーをメッセージとして大きく打ち出しており、出展企業がどのようなアプローチでサステイナビリティーを追求し、素材や加工技術を開発したかが分かる冊子を用意しており、とても役立った。印象的だったのはエルコレ・ボット・ポアーラ(Ercole Botto Poala)「ミラノ・ウニカ」会長の言葉である。「戦略的にサステイナビリティーの追求に取り組まなければグローバルでは戦えない」――消費者の新しい選択肢の1つにサステイナビリティーがあり、そのニーズが高まり、それに対応できなければ生き残りは難しいということだ。

 今回、特に驚いた技術は、3つあった。1つ目は、これまで多量の水が必要だったインディゴ染色を水なしでできるという技術。今年3月に国際連合が、「ジーンズ1本の綿花栽培で人間1人の10年分の飲み水を失う。ファッション業界は全産業で2番目に多く水を消費しており、世界の排水量の約20%を占める」と警告したことが記憶に新しいが、節水はファッション業界にとって取り組むべき大きなテーマの1つである。WWF(世界自然保護基金)によると、ジーンズ1本に使用される綿花栽培に必要な水は約8500L。さらに、1本のジーンズを染色したり加工したりするのに使う水の量は3500Lという報告もある。この水なしで染色できる画期的な技術は、スペイン・バレンシア拠点のテキスタイルメーカーのテジドス ロヨ(TEJIDOS ROYO)などが共同で開発したもので、9月から同社で量産が可能になるという。より環境に配慮したデニム作りの可能性が広がると感じた。

 2つ目は、石油ではなく、植物由来の原料を使った化学繊維の存在。素材担当としては知っていて当然の情報かもしれないが、私は知らなかった。ひまし油(トウゴマの種子から取れる植物性油)からナイロンが生成できるというもので、そのナイロン糸とポリウレタン弾性繊維、コットンやウールを組み合わせて高機能ニット素材を作る企業があった。イタリア・コモのブルニョーリ(BRUGNOLI)だ。さらに、その工程は同じ構造の繊維を編むのに比べ、二酸化炭素排出量と水の使用量が各段に少なくなる。ひまし油由来の成分を用いて防水加工を行っている企業もあった。石油由来がほとんどだった化学繊維が植物由来でも製造できるということと、その可能性に期待は広がる。

 3つ目は、甲殻類から抽出できるキトサンの存在だ。細い繊維を織るときに強度を増すために使う“のり”のような役割を果たす薬剤に代わるものとして、キトサンを用い、さらに水とエネルギーを大幅削減できる技術を開発したメーカー、カネパ・グループ(CANEPA GROUP)に出合った。その薬剤の多くは、法的には認められているものの実は有害物質だという。その代替として自然由来のキトサンを用い、さらにこの技術では同じ繊維を織るのに比べ、水とエネルギーの使用量を90%カットできるというのだ。

 次の一手を打ち、技術を開発して量産まで進めている企業が多いことに感銘を受け、未来に光が差したように感じた。このような画期的な技術を多くの人々に伝えたいと強く感じたし、こうした技術を用いて地球環境に配慮したモノ作りが今後さらに進むことに期待したい。

 なお、「WWDジャパン」8月6日号のデニム特集のテーマはサステイナビリティーを予定している。

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