ファッション

300匹の鯉のぼりが奏でる “日本のテキスタイルの物語” NUNO須藤玲子ディレクターに聞く

 テキスタイルデザイナー集団「NUNO」の須藤玲子ディレクターは11日から、国立新美術館で展覧会「こいのぼりなう!」をスタートする。「NUNO」がこれまで手がけてきたテキスタイルを使った300匹の鯉のぼりが2000平方メートルの会場を動き回る、メディアアーティスト集団ライゾマティクス(Rhizomatiks)を率いる斎藤精一と、世界的な展示キュレーターのアドリアン・ガルデールとコラボレーションしたユニークな展覧会だ。「NUNO」のテキスタイルはビクトリア&アルバート博物館(The Victoria and Albert Museum)やニューヨーク近代美術館(MoMA)にパーマネントコレクションとして所蔵されるなど海外の美術館や博物館で高い評価を受け、これまで海外では数々の展覧会を行ってきた。だが、実は日本での大規模な展覧会は2001年の初の展覧会「布・技と術(わざとわざ)」以来2度目になる。須藤ディレクターに聞いた。

WWD:鯉のぼりの展覧会は今回で3回目なんですね。

須藤玲子ディレクター(以下、須藤):2008年に米国ワシントンのジョン・F・ケネディー舞台芸術センター(The John F. Kennedy Center for the Performing Arts)で行った展覧会「ジャパン!カルチャー+ハイパーカルチャー」が最初です。展示は安藤忠雄さんと草間彌生さんと一緒でした。その後、14年に仏パリの国立ギメ東洋美術館に巡回しました。

WWD:今回の見どころは?

須藤:300匹の鯉のぼりのうち、大半は今回の展覧会のために作り直したものです。ワシントンでは69匹、パリでも20匹を新たに作り足していましたが、これまでの貴重なアーカイブも使ったり、過去に「NUNO」に参加していたデザイナーの手掛けたテキスタイルを加えたりと、今回は「NUNO」の集大成のような形になっています。

WWD:というと?

須藤:「NUNO」の創業者で先ごろなくなった新井淳一さん、伊東豊雄さんや青木淳さんなど数多くの建築家と組んでカーテンなどを手掛けている安東陽子さん、現在は「ラス(LA+H)」というストールブランドを手掛ける大谷敬司さんらです。新井さんの手掛けたテキスタイルは今では「NUNO」でも販売していないほど貴重なものですが、やっぱり一点だけでも入れたくて。

WWD:「NUNO」のコンセプトの一つは日本の産地企業との協業。産地企業との取り組みで印象に残っているものは?

須藤:印象に残っているのは、1980〜90年代に活動されていたCBU工芸の梅谷和夫さんという流しの捺染職人です。捺染のためのスクリーンをトラックに乗せて工場さんに出向いて箔押しのプリントをしたり、と思うと川でプリントしたり。プリントの仕方も仕事のやり方も破天荒というか、全く型にはまらないし、当時は携帯電話もなかったのでいつも連絡がつかなくて大変でした(笑)。でも妙に気が合ってよく仕事をご一緒させてもらいました。亡くなってしまいましたが、滋賀の木村染工の木村吉宏・社長も記憶に残っています。日本には本当に全国にユニークな発想と技術を持った “職人”が多い。300匹の鯉のぼりには、それぞれそんなストーリーがあります。鯉のぼりに使ったテキスタイルは、別室に10センチ四方に切ったスワッチを設置して、実際に触れるようにもなっています。

WWD:「NUNO」は海外からの評価も高い。そのきっかけは?

須藤:2001年に京都芸術センターで行った初の大規模展「技と技」です。展覧会のディレクターは友禅作家の森口邦彦さんが務め、展示したテキスタイルも、絹織物で知られる京都の丹後と一緒に新素材を開発したりと、かなり力の入った展覧会でした。音楽はグラフィックデザイナー・サウンドアーティスト南琢也さん、プロジェクションには000スタジオの松川昌平さんらも関わり、インタラクティブな試みもかなり積極的に取り入れました。今回の展覧会で一緒に組んでいるライゾマティクスの齋藤精一さんも、松川さんの紹介が縁でNUNOのウェブサイトを手掛けてもらってきました。海外のキュレーターやメディアもかなり見てくれて、そこから海外の展覧会が増えるきっかけになりました。NUNOが作るテキスタイルはアート作品ではなく、全て商業生産しています。海外で高く評価されているのも、造形性や創造性だけでなく、職人技術と融合したクオリティの高さだと思っています。

■こいのぼりなう!
日程:4月11日〜5月28日
時間:10:00〜18:00(毎週金・土曜日、4月28日〜5月6日は20:00まで)
会場:国立新美術館 企画展示室
住所:東京都港区六本木7-22-2
入場料:無料

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