フォーカス

「グッチ」のミケーレが明かす 「毎シーズンのコレクションは、映画の一章を見せるようなもの」

 「グッチ(GUCCI)」にアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターが就任して、早くも3年が経とうとしている。フリーダ・ジャンニーニ(Frida Giannini)の後任として、舞台裏から影響力の頂点へと駆け上がった彼は、クリエイティビティーの力を信じて彼を抜てきしたマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)社長兼最高経営責任者(CEO)と共に改革に取り組み、ファッション界に大きなインパクトを与え続けている。エキセントリックなコレクションへのアプローチからファー使用廃止の理由まで、米「WWD」がミケーレの考えに迫った。

WWD:まず皆が触れようとしない2018年春夏のショーの話を聞かせてほしい。服自体が問題ではなかったが、暗闇にたいたストロボのせいで服がよく見えなかった。

アレッサンドロ・ミケーレ「グッチ」クリエイティブ・ディレクター(以下、ミケーレ):言わんとしていることはよく分かる。というのも、私がやっていることを説明するのは非常に難しく、明快ではないこともよくある。でも、問題だとは思っていない。それが自分の仕事のやり方であり、自分自身や自分のビジョンを表現する方法だからね。そういう意味で私は完全に自由だし、あなたが意見を持つのも自由だ。

今回のショーに関して言うと、自分の視点を表現するために霧を使った。フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)の映画のように、この世に存在しないものを表現するための叙情的な手法だからね。雲や霧の中からはどんなクレイジーなものが現れることもありうる。そして、現実ではないどこかにいるような感覚にもなる。ファッションショーにしてはライトが時々強すぎたというのはもっともだし、その理由を理解しがたいということも分かる。だけど、それがファッション業界人やショーを見たいと思っている人に私が言いたいことを理解してもらうためのパーソナルな方法だった。

何でも見たいときにインターネットで見られる時代を生きているから、私自身、全てをくっきりと見せることにあまり興味がない。それよりも何かを感じ取ってほしいんだよ。ただ、来シーズンは全てをはっきりと分かりやすく見せることもあるかもしれない。でも、18年春夏に関しては、この世に存在しないようなムードを作りたかったし、そのために霧が役に立った。

WWD:この世に存在しないような空間を作るというのは、常にあなたの中にある哲学か?それとも、今この瞬間だけのものか?

ミケーレ:正直、ほぼいつも自分の中にあるものだと思う。現実に存在するのか分からないものに惹かれる私にとって、クリエイティビティーの最高の表現は、そういうものを見せることだ。そして、「アンリアル」や「イリュージョン」という言葉はポエムのようなもので、触れられないけれど、魂を感じることはできると思う。

WWD:ショー前の記者会見では、服はアイデアを説明することを助ける架け橋のようなものだと語っていた。そして、フィレンツェではエキセントリックさは偶発的なものではなく、アイデアを伝達しやすくするものと話していたが?

ミケーレ:コレクションの服はいわば映画の衣装のようなもので、着る人の人柄や感情を理解させてくれる。服自体や外見に語らせることが好きなんだ。顔と服や、心理状態と見た目、着る色とそれがもたらす感情の変化といったように、常にいろんな議論がある。そしてエキセントリックさは、そこに制限がなく、ユニホームが必要ではないことを意味する。自由なアイデアを伝達する言葉なんだ。白いTシャツが昔の社会の中でどのような意味を持っていたかを考えれば、それだけでもエキセントリックになり得ることが分かるはず。今は誰もがはいているスニーカーも同じだ。だから、エキセントリックはクレイジーなものを意味する言葉であり、クレイジーとは見た目は素敵なのに存在する場所が合っていないことを意味している。

WWD:では、映画の衣装をデザインするように、ショーを作り上げているということか?

ミケーレ:そうだね。毎シーズン、私が見せているのは、映画の一章のようなもの。ファッションは1シーズンよりも大きな枠組みとの関係を考えることが必要だから、前のシーズンと完全に切り離したりしたくないんだ。それに、もしも毎シーズンのコレクションが全く異なるものだったら、ブランドに魂を宿らせるのはとても難しいだろう。ムッシュ・ディオールが“アティチュード”を表現することに専念していたように、過去を振り返れば、その重要性は明らかだ。繰り返すけれど、クリエイションは映画の大作のようなもので、毎シーズンのコレクションはその中の小さな一章。だから、私は「グッチ」ウーマンや「グッチ」マンになるための現代的な方法を確立することを目指している。私は、ブランドに新鮮な風を吹かせることが好きなんだ。先のことはわからないけれど、今年、誰かが「グッチ」に加わることもあるかもしれないし、もしかしたら、彼らが別のことを始めるかもしれない。

WWD:誰かが「グッチ」に加わる予定があるのか?

ミケーレ:いやいや、違うよ。でも将来的には誰かが「グッチ」に加わることはあるだろう。むしろ、それが起こらないことなんてないんじゃないかな?実際、ここ数年多くのブランドがクリエイティブのトップに新しい人材を起用し、ブランドに新たな生命を与えようとしている。だけど、ブランドの“顔”を5〜6年ごとに変えるなんて、おかしいと思う。もしも自分がブランドのファンだったら、自分が選んだブランドで自分自身を識別したいんじゃないか。そういう意味で、「シャネル(CHANEL)」のコレクションを手掛け続けているカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)のことをとても尊敬している。彼は唯一無二の存在だ。もしあなたが「シャネル」の顧客だったら、きっと昔のアイテムも全て大切に持っているんじゃないかな。「シャネル」からは長年にわたって、とても現代的で一貫した精神やアティチュードが感じられるからね。でも今、他のブランドで同じことができるかは分からない。だから、カールは勝者なんだ。