モノレールを挟んで「太陽の塔」と向かい合う「EXPOCITY」の建設現場(右側)。2009年までは遊園地「エキスポランド」が営業していた
三井不動産が開発する新型“エデュテイメント”SCとは
1970年の大阪万博の開催地として知られる大阪府吹田市が今秋、再び全国から注目を集めている。三井不動産が開発する大型複合施設「エキスポシティ(EXPOCITY)」が万博記念公園の隣接地に11月19日開業する。岡本太郎の「太陽の塔」を間近に望む約17万平方メートルの広大な敷地に、旗艦モールと位置付ける「ららぽーとエキスポシティ」と8つのエンタテインメント施設で構成される。弊紙6月1日号のショッピングセンター(SC)特集で実施したファッション専門店へのアンケート調査でも「最も期待する新規SC」として圧倒的な票数を得ていた。同社は売上高目標を明らかにしていないが、開業後には日本最大級となることが確実といわれている。
300を超えるファッションや飲食のテナントの充実はもちろん、それ以上に期待されるのがエンタメ施設の集客力である。非物販の強化は最近の商業施設共通の傾向だが、「エキスポシティ」はその規模と内容において既存SCとは一線を画す。人気水族館の海遊館が監修する生き物ミュージアム「ニフレル」、テーマパークのような空間で子どもから大人までが英語を学べる「オオサカ イングリッシュ ビレッジ」、ポケモンと一緒にコミュニケーションスキルを身に付ける「ポケモンエキスポジム」、大迫力の映像で世界中の大自然を体感できるミュージアム「オービィ大阪」など、教育とエンタメを融合した“エデュテイメント”をコンセプトに掲げ、かつての大阪万博のような非日常空間を作り上げる。家族連れがショッピングだけでなく、一日中遊び、学ぶことまでできる。開発を担当した安達覚・商業施設本部上席主幹は「関西だけでなく、日本全国、さらには海外からも人を呼び込める超広域型のSCを目指した。その意味でライバルはUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)だ」と話す。
三井不動産は8月3日、「エキスポシティ」の施設概要に関する会見を東京と大阪で開いた。通常、地元で行われるSCの会見を2カ所で開くのは異例で、全国に向けて発信しようという力の入れようが伺える。東京の会見で登壇した菰田正信・社長は「45年前の(大阪万博の)熱気とにぎわいを再現したい」と意気込みを見せた。
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飽和状態のSC業界
少子高齢化が進む日本で毎年60前後の新規SCが誕生しており、飽和状態にあることは間違いない。従来はテナント数の規模、あるいは「日本初上陸」「エリア初」など店舗の目新しさを売りにしてきたが、これも今や差別化にはつながらない。株高の恩恵を受けた富裕層、円安を背景にした訪日外国人客の高級ブランドへの旺盛な消費が話題になっているものの、昨年の増税以降、マスマーケットは停滞したまま。特に衣料品の購買回数が減っているのが深刻だ。SCとしては、まずは消費者に施設に足を運んでもらわなければ始まらない。そのための有効な手段としてエンタメ施設が浮上しているのだ。
「エンタメ」が集客のキーワードに
イオンモール幕張新都心
千葉市に13年12月開業した「イオンモール幕張新都心」は、吉本の劇場や職業体験ができるテーマパーク「カンドゥ」、「東映ヒーローワールド」、ペットと楽しめるドッグカフェやペットホテルなど、全体の3分の1を非物販にあてて、広域からの客を集めることに成功した。東京・昭島市に今年4月開業した「モリパーク アウトドアヴィレッジ」はアウトドアブランド16店が入る専門型モールだが、高さ17mのクライミングウォールをはじめ、カヌーに乗れる池、200mのミニトレイルコース、キャンプ場などのレジャー施設が充実しており、休日は多くの家族連れでにぎわいを見せている。「エキスポシティ」はこれらの一つの到達点と見ることができるだろう。
大手デベロッパーの最近の動きを見て、「ユニクロ(UNIQLO)」を展開するファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長のかつての発言を思い出した。「『ユニクロ』のライバルは服のブランドとは考えていない。スマートフォンやゲームなどあらゆる消費や体験と競っているのであり、(それらと比較して)お金を払う価値があると選ばれる存在にならなければ、われわれは生き残れない」。SCも同じだ。都心の百貨店やファッションビルだけでなく、あらゆる時間消費や体験の中から選ばれることが前提になった。「ライバルはUSJ」という認識は正しい。
左から時計周りに:ペットと楽しめるドッグカフェやペットホテル、吉本の劇場や職業体験ができるテーマパーク「カンドゥ」、イオンモール幕張新都心内の4館の間を移動できるベロタクシー
eコマースの発展がエンタメ型SCの需要を後押し
エンタメ型SCの増加の背景には、eコマースの急速な発展もある。経済産業省の調べによると、国内のeコマースの市場規模(BtoC)は2014年度で約12兆8000億円に拡大した。百貨店の約6兆円の2倍を超え、SCの約29兆円の半分に迫る勢いで、今後も成長が見込まれている。品ぞろえや手軽さを考えれば、eコマースに分があるだろう。だからこそ、わざわざクルマや電車で訪れる郊外型SCには、その場に行かなくては味わえない体験を提供しなければならない。「エキスポシティ」はかつて高度経済成長時代の祝祭が行われたこの場所で、成熟時代にふさわしい価値を作れるのか。
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※文中の肩書き・事実関係などは2015年8月24日当時のものです