ファッション

「H&M」がサポート、モデルのShogoと花楓が障害児スタイリングで笑顔が溢れる

 モデルのShogoと花楓(かえで)が8月5日、東京都立久我山青光学園の知的障害教育部門PTAと協力し、知的障害や視覚障害を持つ子どもたちに向けたファッションスタイリング・イベントを開催した。「H&M」が全面協力してスタイリング用のウエアを提供。小学部4年生から高等部2年生までの在校生・卒業生約50人に対してボトムス、トップス、アクセサリーをコーディネートし、プロのカメラマンが本人や家族写真を撮影。その場でCD-ROMに記録して手渡すという仕組みだ。クールなスタイルに身を包み、日頃以上に表情が豊かになりポーズを決める子どもたちや、それを見て笑顔になり、時には涙ぐむ親たちの姿に、ファッションの力を改めて感じさせられる、好イベントだった。そこで、取り組みの発端や狙い、込められた思いを関係者に直撃した。

 Shogoは母親が特別支援学級の教諭だったため、幼いころから障害児たちと接する機会も多く、東日本大震災後には東北で復興支援をするなど、ボランティア活動を積極的に行ってきた。さらに、大学時代の親友が教員を務める久我山青光学園でも3年前からボランティアに訪れていた。そして昨年、三浦千尋・知的障害教育部門主任教諭から「子どもたちがカッコ良くなれるハウツーを講演会を通して教えてほしい」と依頼があったという。

 三浦教諭いわく、「以前から進路指導部として“身だしなみ指導”に力を入れようと話してきたが、知的障害の子どもたちは身だしなみを自分で考えたり確認することが難しいことが多く、悩んでいた。一歩街に出ても年齢に似合わない服装をしていたり、不思議な組み合わせだったりして、周りから特異にみられる子が多いのも事実だった。それが、学芸会の役に合わせてスーツやワンピースを着せたらとてもカッコ良く、『カッコイイね~!』と本気で叫んだら、普段は言葉も話せない重度の知的障害の子が得意げに笑って。それを見て、私たち教員も保護者も、ファッションなんて興味ないだろうし、分からないだろう、組み合わせたり選んだりなんてできないだろうと思い込み、大事なことをおざなりにしてはいないだろうかと申し訳ない気持ちになった。この子たちも、『カッコイイ!』『ステキ!』『カワイイ!』と言われたらうれしいし、やる気も主体性も引き出せるのではないか。そこで、ボランティアで来てくださっていたShogoさんと奥さんの花楓さんの協力を得て、カッコ良くなれるハウツーを講演会を通じて教えてもらい、保護者の意識を高めることから始めようと、私の担当学年で実験的な体験授業として『ファッションモデルになってみよう』を2月に行ったところ、仮説を実証するすばらしい発見がたくさんあった。もっとたくさんの児童生徒に体験してもらいたいと思い、PTAを巻き込んで今回のイベントに至った」と背景を語る。

 さらに、ファッションが子どもたちに与える影響については「この子たちにも思春期ってある。イライラしたり、親と距離を置きたくなったり。でも、健常の子たちと少し違うのは、人からどう見られているか?を意識して見た目に気を遣うことが難しいところだと思う。自分で服を選んでいる子も多くない。なので、身だしなみなどに『気を付けさせよう』という発想ではなく、『カッコイイ』『ステキ』を体感させることで、ファッションへの興味関心を引き出していけたら。

 実際、2月の講演会後に『キレイにしていたら手を差し伸べてくれる人が増えると思う』という保護者からの声も届いた。好印象を抱いてもらえる身だしなみを心掛けることは、結果的に子供たちが生きやすくなることにつながるのかもしれないと確信した」という。

Shogo「好印象をファッションでサポート」、花楓「母親も応援したかった」

 これに対してShogoは、「母の関係で、障害者の子たちとも小さいころから接したり、一緒に世話をしてもらったりもしてきた。大人になってから、障害者の子たちは生きづらそうだな、そんなところを変えられたら、と思っていた。大学の同級生を通じて3年前から久我山青光学園で手伝わせてもらう中で、三浦先生から、ファッションの視点で問題を投げかけ、解決するために手伝ってほしいと頼まれた。前回の特別授業では、オシャレは自由であってほしいと思うけれども、一定の決まりごとをつけていかないと外れてしまうので、周りの方々に『好印象』で『人にいい印象を与える』ことに主眼を置き、色の組み合わせなどの指標を描いたコーディネート表なども作り、講演。『H&M』から服のサポートを得て、カメラマンによる撮影も行ったところ、普段言葉が出ない子も主体的に選んだり、ポーズをしたりして、とても感動的だった。今回はそれがより多くの子たちと一緒に体験できて本当に良かった」と語る。

 一方、妻で一児の母でもある花楓は、「私自身、洋服を買ってくれるのは父だったので、父の趣味や好みなどに影響されているところがある。とにかくファッションは楽しむことが一番大切なことだと思っている。そんな中、『KUGAYAMA SEIKOU SCHOOL FASHION EVENT 2017~カッコイイ自分を見つけよう!~』を手掛けるにあたり、Shogoは子どもたちの気持ちやモチベーションが上がることを一生懸命に考えていたが、私が真っ先に考えたのは、お母さんたちの気持ちで……。女性目線、母親目線で、いろいろ大変なことがあるお母さんたちが、子どもさんと一緒に買い物をしたり、服を選んだりして、少しでもファッションを楽しめるきっかけになれればと。今日も服を気に入ってくれた子どもさんたち以上に、お母さんさんたちが喜んでくださっているのが本当にうれしい」とニッコリ。女児たちに向けたスタイリングについては、「普段のスタイルとは少し違う印象を取り入れるようにした。普段かわいらしいタイプやスカートが多いということであれば、パンツにしてトップスには少しだけフェミニンな要素が入ったものにしたり、いつもスポーティなものが中心ということだったら、スカートやフリルやシフォンのものを取り入れることを心掛けた。『あ、こういうものも似合うのね!』と、驚きや新しい発見をしてもらえたと思う」と振り返る。

ファッションで成功スパイラルに 「H&M」に感謝

 実行委員長も務めたPTA代表は、「先に開催された体験授業で撮影された写真がカッコ良かったので、わが子もそんな写真を撮ってもらえると思うと、とてもうれしかった。普段は着やすさや着脱のしやすさを中心に服を選んでしまいがち。でも、服で損をしているかも、とハッとさせられた。ファッションを通じて、子どもたちが褒められるツールが増えるということであれば、こんなにすばらしいことはないと思う。一人では自立できないので介護の方々にもサポートしていただいているが、オシャレをすることで、手を貸してくださる方々や介護してくださる方々も気分良く、本人も褒められて気分良くなるはず。両者の気分が良いときにはいろいろなことがうまくいき、その成功がさらに両者で自身に蓄積されていくという、成功スパイラルもあるかも!? 褒められることは誰もがうれしくなることだけれど、いろいろなことがうまくいかない子どもたちにとっては、褒められることは本当に大切な喜びになることだと思う」とファッションの力に期待を寄せる。

 さらに、協力してくれた「H&M」に対しては、「さすがグローバル企業だと。異人種、異文化の中で、いろいろな宗教や価値観などを持つ人々がいる中で仕事をすることは、それぞれ違う人を排除するのではなく、いろいろ違うことを認め合って仕事をされているわけで。その“違い”の中に障害者も入るのでは。実際に存在する“違い”を知っていただき、がんばりすぎない、手助けをする方もあまり負担にならないちょっとしたサポートをしてくださったら、障害がある人もない人もサポートする方もされる方も気持ち良く過ごせると思っているので、知ろうとしてくださる姿勢がとてもうれしかった。本当に感謝の気持ちでいっぱいだ」と述べた。

 会場では、現役モデルからアドバイスを受けながら、服を自ら選び、新しいスタイルを褒められることで、子どもたちにはいつも以上に笑顔が広がっていた。保護者たちも、「着せたことがなかったけれど、こんなスタイルが似合ったのね」とか、「うちの子はこんなに足が長かったのね」など、子どもの魅力を再確認。写真を撮られるのが苦手な子やじっとしていることが苦手な子も多い中で、自らポーズをとったり、カメラをしっかりと見つめるなど、いつもよりも活発な子どもたちの姿に、喜び、涙ぐむ父母も多かった。同じ方向を向いてカメラのレンズを見ていたのでその場では気づかなかったかもしれないが、中でも子どもたちが一番いい笑顔をしたのは、家族とともに写真に納まったときだったのは間違いない。記念にもらったCD-ROMの写真を家で見て、あらためてファッションの力や、人々のやさしさを感じられた1日だったのではないか。Shogoと花楓の呼び掛けで集まったボランティアたちも同じ気持ちだったはずだ。

最新号紹介

WWD JAPAN

デジタルコマース特集2020 コロナで変わったもの/残すべきもの

「WWDジャパン」10月26日号は、デジタルコマース特集です。コロナ禍でデジタルシフトが加速し、多くの企業やブランドがさまざまなデジタル施策に注力していますが、帰るべきものと残すべきものの選別など、課題が多いのが現状です。今年はそんな各社の課題解決の糸口を探りました。巻頭では、デジタルストアをオープンしたことで話題の「シロ(SHIRO)」の福永敬弘=専務取締役やメディアECの先駆け的存在「北欧、暮…

詳細/購入はこちら