三吉彩花のファッションを輝かす“言葉の力”

　「セブンティーン（Seventeen）」（集英社）専属モデルで女優の三吉彩花は2016年、長かった髪を40cm以上切ってショートボブにイメージを刷新した。変化は見た目だけではなく、20歳の誕生日には“言葉のカウントダウン”と題した所信表明を10日前からインスタグラムで発信。内に秘めたメッセージを10個の言葉で呼びかけた。今年3月に発売したスタイルブック「みよしーくれっと」の中でも自分の内面を吐露するとともに、「セブンティーン」でも年長者として意見を求められるリーダー役を引き受けている。日本テレビ「メレンゲの気持ち」のMCを務めるなど、同世代モデルの中でも言葉に長けた存在だ。そんな彼女に今回は、女性支援に意識的なブランド「ダイアン フォン ファステンバーグ（DIANE VON FURSTENBERG）」を着用した撮影を通して、言葉とファッションについて話を聞いた。

WWDジャパン（以下、WWD）：昨年6月の20歳の誕生日に“言葉のカウントダウン”を行った理由は？

三吉彩花（以下、三吉）：トレンドや出演作品を伝えることも大事ですが、SNSでも言葉を残す方が自分らしいと思って始めました。20歳を迎える大切なタイミング、10代最後の1週間にインドを訪れて書いていたので、日本にいる時には考えつかなかったような死生観もあったかもしれない。生きていく上で当たり前だけど、みんなに大事にしてほしい言葉を携帯のメモにたくさん綴って、その中から10個を選んで発信する順番も考えました。人生の節目節目に思い返してもらえるような言葉になればいいなと思って書きました。

WWD：言葉は普段から書き留めている？

三吉：日記は書いていますが、書き留めた言葉をSNSで発信することは今回が初です。良い言葉も悪い言葉も膨大に飛び交う世界なので、気づいたらたくさん吸収していて。言葉は自分が常に頭の中で考えているものになっていました。

WWD：ショートボブへの変化の理由は？

三吉：20歳のタイミングでひとつ生まれ変わりたかった。人の役に立つことに限らず面白いことでもよかったのですが、わかりやすい大きな変化に髪を切るという選択肢がありました。切った髪の毛も素敵な取り組みにつながりました。

WWD：“言葉のカウントダウン”のコメント欄にはたくさんの反響が寄せられた。

三吉：率直に嬉しかったです。私が一方的に発信するだけじゃなくて、皆さんの意見から私がヒントをいただいて活動に活かすこともありますから。地元の友達と話をするような感覚でみなさんの意見を知れた貴重な機会でした。スタイルブック発売記念の握手会では「私も髪の毛を切りました！」って言ってくれた方もいて、すごくありがたかった。私もそうでしたが、特に若い女子にとっては勇気のいる変化だと思いますし。若い世代がこれからの日本を良くしていくので、一緒にがんばっていきたいです。

WWD：今日の撮影衣装の「ダイアン フォン ファステンバーグ」も社会貢献活動に意識的なブランドだが？

三吉：創業デザイナーによる女性の自立支援や社会進出への貢献のお話もお伺いして、強い意志が素敵だと思いました。女性が逆境に立つ局面もありますが、その分メンタルが鍛えられてきたと思う。それを支援や洋服のデザインに発揮されてきた姿を尊敬します。だからか着てみると、少しでも自分を綺麗に見せたい女性の心理を叶えてくれる、女性を美しくしてくれるブランドだと思いました。現デザイナーのジョナサン・サンダース（Jonathan Saunders）のデザインも好きです。

WWD：ショートボブになってファッションに変化は？

三吉：変わりましたね。私が好きなジャンルはもう、モードとストリートに固まりました。買う服もシンプルなものが増えたし、モードな服も着る機会が増えました。デコルテがすっきりしたので、もともと好きな黒がいっそう似合うようになったと思います。いまトレンドでは、ワイドパンツや袖丈が長めのアイテムが気になります。それと自分にしっくりくるパンツのブランドを探しています。丈感やサイズ感、ウエストまわりの見え方などにこだわっていますね。

WWD：スタイルブック「みよしーくれっと」や「セブンティーン」では“みよしんぷる”というシンプルスタイルを提案している。どのようにファッションを楽しんできた？

三吉：お母さんが洋服好きで作ってくることも多かったので、小さい時から着せ替え人形のようにあらゆる洋服を着て育ってきました。ただ幼心に、着たくない服も着させられることには反発心もあった。その中で自分に合う合わない、着たい着たくないの判断力を身につけてきたんだと思います。中学2年生で「セブンティーン」モデルになってからは、雑誌の中での自分のポジションを考えてガーリーな服よりクールな服の方が似合うんじゃないかと掴んできた。そうやって一歩引いて、物事を客観的に見るクセがあるんです。SNSで海外のヴィクシーモデルの着こなしをチェックしていた頃も、ハイブランドだけじゃなく、「この服、実はファストファッションなんだ！」といった発見をするなど、楽しんでいました。そこからシンプルにつながっていったところもあります。

WWD：3月の東コレにも来場していて、「ターク（TAAKK）」のショーには東京ガールズコレクションのリハーサルと本番の合間に駆けつけていた。

三吉：観たかったんです（笑）。モデルの友人も出演していましたし。「アクオド バイ チャヌ（ACUOD BY CHANU）」も、デザイナーが友人で観に行きました。東コレのブランドは演出も含めて世界観がありますし、見ていてパンツのルックがすごく多いなと思いました。あとメンズ服、可愛いですね。髪を切ってからメンズ服も以前以上に着るようになったんですけど、ちょっとハードコアなものやエッジの効いたレザーアイテムも好むようになりました。私もチャンスがあれば、いつか歩きたいなと思います。海外のファッション・ウィークもタイミングが合わず、未経験です。今年から海外での仕事経験も増やしたいので、訪れてみたいですね。

WWD：今後はどのように活動をしていく？

三吉：「中学生に見えないね」「高校生に見えないね」など、常に大人っぽいと言われてきました。最近も「まだ20歳なの!?」とびっくりされます。その驚きをプラスに捉えて、大人っぽさを自分の武器として、これからもさまざまなことに挑戦していきたいですね。

WWD：直近の日本テレビドラマ「視覚探偵 日暮旅人」へのゲスト出演では、耳の聞こえない女性の役柄を演じて、強みのひとつである言葉を封じた。

三吉：声が使えない分、私たちが普段どれほど言葉に助けられているかを実感しました。声を強めたりボリュームを上げたりすることで伝えたい想いを表現できるし、逆にボソボソと話せば隠したいことや恥ずかしいことがわかる。想いを伝えたい意志の強い女の子の役でもあったので、仕事である以上に大事なものを教えてもらった作品でした。機会があればまた演じたい大切な役です。

WWD：“言葉のカウントダウン”をはじめ、三吉さんも伝えたい想いを内に秘めている？

三吉：そうですね。音楽を通して言葉を吸収して影響を受けることも多いのですが、素敵だなと思う一方で、音楽で世の中にメッセージを訴えかけることができるミュージシャンの方に羨ましい気持ちを感じることがあります。

WWD：ファッションを通して伝えていきたいことは？

三吉：最近、「人生1回しかないしな」と思う機会がとても多いんです。だからファッションでも、後悔しないように自分の着たいものを着て、人の目を気にせず、もっと誰もが楽しめたらいいのにと思います。なので私も好きな服を着て自由に過ごしています。「あぁ、レザーのタイトスカート履いておけば良かった」って思いながら死にたくないなって（笑）。