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タイ発「パンピューリ」、23年貫く香りとウェルネスに時代が共鳴 コーセー傘下で世界売上高2.7倍目指す

PROFILE: ヴォラヴィット・シリパーク創業者兼最高経営責任者(CEO)

ヴォラヴィット・シリパーク創業者兼最高経営責任者(CEO)
PROFILE: タイ出身。17歳でカナダに渡り、ピアソン・カレッジUWCで国際バカロレア課程を修了。マギル大学で経済学の学士号を取得した後、デロイトで経営コンサルタントとして勤務。米ニューヨーク勤務中の2001年に米同時多発テロを経験したことを機にキャリアを見直し、イタリア・ミラノのSDAボッコーニ経営大学院でラグジュアリー商品の経営を学ぶ。2003年にタイで「パンピューリ」を創業し、フレグランスやボディーケア、スパなどへ事業を拡大した PHOTO:TAMEKI OSHIRO

タイ発のウェルネスブランド「パンピューリ(PANPURI)」が、日本市場への投資を加速している。3月に伊勢丹新宿本店に出店し、8月には東京・南青山に日本初の路面旗艦店を開業。ニュウマン横浜、ギンザ シックス(GINZA SIX)にも店舗を広げ、11月にはグランフロント大阪への出店を予定する。2024年末にコーセー傘下に入ったことを機に、販売代理店を介した展開から直接投資による事業運営へと転換した。29年にはグローバルで売上高30億バーツ(約139億円)を目指す。「パンピューリ」を展開するタイのピューリ(PURI)のヴォラヴィット・シリパーク(Vorravit Siripark)創業者兼最高経営責任者(CEO)は、日本を「第2のホーム」と呼ぶ。その言葉に込めた思いや、コーセーとの協業、香りを起点とするウェルネス事業の展望を聞いた。

「日本は第2のホーム」 ブランドを体験できる場所を増やす

WWD:日本を「第2のホーム」と表現しています。なぜ、日本を大切に考えているのでしょうか。

ヴォラヴィット・シリパーク=ピューリ創業者兼最高経営責任者(以下、シリパーク):日本は、私たちにとって本当に大切な市場なんです。以前から、日本のお客さまと「パンピューリ」はとても相性がいいと感じていました。今はコーセーというパートナーもいます。だからこそ、短期的に売り上げを伸ばすだけではなく、時間をかけてブランドを育てていきたい。日本を「第2のホーム」と呼ぶのは、そういう思いがあるからです。

WWD:今後は東京、大阪、京都などで出店を拡大する方針です。日本ではどんな店舗を作りたいですか。

シリパーク:「パンピューリ」は、商品を棚に並べるだけでは伝えきれないブランドだと思っています。香りを試したり、空間に身を置いたり、サービスを受けたり。そういう体験を通じて、初めて私たちが大切にしていることを感じてもらえるんです。例えば青山店では、商品だけでなくウェルネスサービスも提供します。香りとウェルネスを一つの場所で体験してもらいたいんです。ただ、どこでも同じ店舗をつくればいいとは思っていません。東京の中でもエリアによって特徴は違いますよね。大阪や京都もそうです。その土地のお客さまが何を求めているのかを理解しながら、日常の中に「パンピューリ」を取り入れてもらえる場所を増やしたいと考えています。

WWD:これまでの日本での展開とは、何が違うのでしょうか。

シリパーク:一番の違いは、お客さまとの距離ですね。以前は販売代理店を介して展開していましたが、今は直接投資しています。販売代理店を通すと、私たちが伝えたいことも、お客さまの声も、一度別の会社を経由することになります。その間に、少しずつ認識の差が生まれることもあるんです。でも、今はお客さまと直接つながれる。何が好きなのか、何を求めているのかを、自分たちで聞くことができます。もちろん、以前の方法が間違っていたわけではありません。ビジネスにはそれぞれの段階があります。私たちにとっては、今が次の段階に進むタイミングだったんだと思います。

2029年に9カ国・80店舗超へ アジア市場で成長を加速

WWD:中国への進出も進めています。日本と中国では、ブランドの展開方法も異なりますか。

シリパーク:そうですね。日本と中国はどちらも重要な市場ですが、オンラインとオフラインのバランスが違います。中国ではオンラインの比重が比較的大きい。一方、日本では、実際に店舗へ足を運んで、ブランドの世界観を体験してもらうことがとても重要です。もちろん、「パンピューリ」が大切にしていることは、どの国でも変えません。ただ、お客さまの好みや市場の特徴は違いますよね。だから、届け方はそれぞれの国に合わせて変えていきます。

WWD:2029年までにグローバルで売上高30億バーツ(約139億円)、9カ国で80店舗超、北アジアの売上高構成比30%を目指す計画を掲げています。24年の売上高11億バーツ(約51億円)から約2.7倍に伸ばす目標ですが、現在の進捗はいかがですか。

シリパーク:順調に進んでいます。タイ市場は安定して成長していますし、今後は日本、シンガポール、香港、中国といったアジア市場が成長を支えていくと考えています。ただ、店舗数や売り上げだけを追いかけたいわけではありません。私たちにとって大切なのは、ブランドの質を保ちながら成長することです。例えば、フレグランスとウェルネスのつながりを、もっと深めていくこともその一つです。どの市場でも「パンピューリ」らしさを失わずに成長したいと思っています。

WWD:日本を今後どのくらいの規模まで成長させたいですか。

シリパーク:具体的な売上高や店舗数は、まだお話しできません。ただ、今後3〜4年はかなり積極的に出店を進めていきたいと考えています。日本は「パンピューリ」にとって極めて重要な戦略市場の一つです。長期的な視点で育てていきたいですし、今後数年間で、最も重要な国際市場の一つに成長させることが目標です。

コーセーとの協業で広がる商品開発の可能性

WWD:コーセー傘下に入ってから、どのような変化がありましたか。

シリパーク:海外でビジネスを成長させる上で、とても大きなサポートを受けています。例えば日本では、コーセーが持つ市場や流通に関する知識を共有してもらっています。それは日本だけでなく、ほかの国へ展開する際にも役立っています。一方で、ブランドの個性やクリエイティビティーについては、私たちを信頼して任せてくれています。そこは本当にありがたいですね。「パンピューリ」が大切にしてきたことを守りながら、新しい挑戦ができるんです。

WWD:商品開発でも連携していますか。

シリパーク:はい。消費者インサイトや商品開発では、すでにコーセーと緊密に連携しています。コーセーは科学的な研究や処方開発に強みがあります。私たちも、その知見には大きな可能性を感じています。今後はフレグランス、スキンケア、ウェルビーイングの各分野で、研究やイノベーションにおけるさらなる協業を模索していきたいと考えています。

WWD:最近では、ブランド初のアルコールフリー処方のオードパルファムコレクションも登場しました。

シリパーク:そうなんです。あのコレクションは、約2年をかけて開発しました。構想から始まり、処方を開発して、テストをして、また改良する。そうしたプロセスを何度も重ねています。フレグランスは香りがよければそれでいい、というものではありません。私たちが大切にしているウェルビーイングの考え方を、どう商品として表現するのか。そこにもイノベーションの余地があると思っています。

「香りは他人のためではない」 ウェルネスへの入り口に

WWD:フレグランスやウェルネスを掲げるブランドが増えています。その中で「パンピューリ」の独自性は何でしょうか。

シリパーク:私が「パンピューリ」を始めた23年前は、今ほど「ウェルネス」という言葉は使われていませんでした。でも、私たちにとってウェルネスは、マーケティングのためにつくったコンセプトではないんです。私は子どもの頃から、両親や祖父母を通じて、日常の中にあるさまざまなウェルネスの習慣に触れてきました。タイの文化や東洋の哲学の中には、もともとそういう考え方があるんです。だから「パンピューリ」にとってウェルネスは、後から付け加えたものではありません。最初からブランドのDNAの中にあるものなんです。

WWD:そのウェルネスの捉え方も、以前とは変わってきていますか。

シリパーク:面白いのは、消費者の考え方が変わってきたことです。以前はウェルネスというと、例えば年に一度リトリートに行くような、日常から離れた特別な体験を思い浮かべる人も多かったと思います。でも今は違います。日々のちょっとした行為の中にも、自分のためのウェルネスをつくれる。そう考える人が増えています。私たちが23年間大切にしてきたことと、お客さまが今求めていることが、自然に重なってきたんだと思います。

WWD:フレグランスは現在、売り上げのどの程度を占めていますか。

シリパーク:日本では約4分の1、グローバルでは約3分の1を占めています。とても成長しているカテゴリーですね。私たちにとってフレグランスは、ウェルビーイングへの入り口でもあります。実は23年前、私が最初につくった商品は、いわゆる香水ではなくボディーオイルだったんです。そこにも、香りとウェルビーイングのつながりがありました。子どもの頃、家族がジャスミンの香りを日常に取り入れていた記憶があります。それが、最初の商品をつくるインスピレーションの一つになりました。だから、私たちにとってフレグランスとウェルビーイングは、別々のものではないんです。最初からずっとつながっています。

WWD:香りをまとうことの意味も変わってきているのでしょうか。

シリパーク:そう思います。私たちが考えるフレグランスは、他人に自分をどう見せたいか、そのためにまとうものではありません。「自分は今、どんな気持ちでいたいのか」「どんな自分でいたいのか」。そのために香りを選ぶものだと思っています。今はお客さまも、誰かのためではなく、自分自身のためにフレグランスを選ぶようになっています。一つの正解があるわけではありません。人によって好きな香りも違いますし、香りに求めるものも違う。自分なりの価値を見つけるようになっているんです。そういう変化は、私たちにとって大きな追い風ですね。

タイ発ラグジュアリー、中東・欧州・北米への進出も視野に

WWD:今後はアジア以外への展開も考えていますか。

シリパーク:もちろんです。ただ、まずは日本、中国、香港、シンガポールなど、今展開している市場をしっかり育てたいと思っています。単純に店舗を増やして広げるのではなく、「パンピューリ」らしさや質を保ちながら成長したい。それには時間も必要です。その先では、中東にも可能性を感じています。そして、欧州や北米も将来的な進出先として考えています。でも、今はまずアジアです。一つ一つの市場で、きちんとブランドを育ててから次に進みたいと思っています。

WWD:タイ発のラグジュアリーブランドとして、世界で成長するために必要なものは何でしょうか。

シリパーク:タイというルーツは、私たちにとってとても大切です。ウェルビーイングへの考え方やクラフト、自然との関係。そうしたものが「パンピューリ」のものの見方をつくっています。でも、「タイらしさ」だけを強調すればいいとは思っていません。自分たちのルーツを大切にしながら、世界の人たちと共有できる価値観を持つことが重要だと思っています。日本でも中国でも香港でも、ウェルビーイングや自分自身の健康、毎日の中に意識的な習慣を持つという考え方には、共感してもらえます。23年前は、ウェルネスとは何なのかを、私たちから説明する必要がありました。でも今はもう、多くの人にとって生活の一部になっています。私たちにとってウェルビーイングは、マーケティングではありません。「パンピューリ」が生まれたときからあるルーツです。これから新しい商品やカテゴリーに進んだとしても、そこはずっと変わらないと思います。

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