ファッション

ラグジュアリーブランドが「フリーズ・ソウル」に集結するワケ アート・マーケティングの最前線リポート

アートフェア「フリーズ・ソウル(FRIEZE SOUL)」が9月2〜5日、韓国・ソウルで開催された。第5回となる今年は、世界30カ国・地域から130を超えるギャラリーが参加。4日間の来場者数は7万人を超え、25カ国・地域から178の美術館や文化機関の関係者が来場するなど、いずれも過去最多を記録した。「フリーズ・ソウル」は、アジアと欧米のアートマーケットをつなぐ国際的な商談の場へと存在感を広げている。「ハウザー&ワース」「ガゴシアン」「ペース」「ホワイト・キューブ」などの国際的トップギャラリーに加え、「ククジェ・ギャラリー」「ギャラリー・ヒュンダイ」「PKMギャラリー」など韓国を代表するギャラリーも参加。内覧会では、個性豊かな装いの来場者が行き交い、アートとファッションが交差する華やかな熱気に包まれた。

新コレクターの台頭により動くアートマネー

期間中は、活発な取り引きが相次いだ。「ククジェ・ギャラリー」が取り扱ったユ・ヨングクの作品は22億〜25億ウォン(約2億6400万 〜3億円)で販売され、韓国人作家としてフェア史上最高額を更新。「ハウザー&ワース」はラシッド・ジョンソンの絵画を120万ドル(約1億8800万円)で販売した。「ガゴシアン」は、タデウス・ロパックの作品を100万ドル(約1億5700万円)以上で販売するなど、大型取り引きが多数成立し、アジア各地の美術館や財団に作品が収蔵されたという。一方で、若手アーティストやギャラリーの販売も堅調だった。ソウルの「ジェイソン・ハーム」は、若手韓国人作家モカ・リーの作品を20万ドル(約3100万円)で販売。また、初参加となった日本の「マキギャラリー」の多田圭介のブースは、作品が完売した。 注目すべきは、買い手の新しい顔ぶれだ。「ジ・アート・ニュースペーパー」によると、「フリーズ・ソウル」と同時開催される韓国最大級のアートフェア「キアフ・フリーズ」の直近3年間の会員は、最も多いのが40代、次いで30代だという。彼らは価格帯を問わず幅広く作品を購入する新コレクターとして台頭しており、アートを「一部の富裕層の趣味」ではなく「カルチャーやライフスタイルの一部」として捉えている。

街で広がるアートとラグジュアリーの接点

こうしてアートマネーが活発に動く場所には、ラグジュアリーブランドも集まる。可処分所得が高く、文化への関心も高いアートコレクターは、ラグジュアリーブランドにとっても重要な顧客だからだ。「フリーズ・ソウル」会期中は、ソウル市内各所で顧客を招いたパーティーが開かれた。「ネイバーフッド・ナイト」というプログラムが深夜まで繰り広げられ、ギャラリーやブランドが趣向を凝らしたレセプションで、コレクターやキュレーター、アーティストを迎えた。ラグジュアリーメゾンによる一部関係者を招いたパーティーも開催され、フェアの熱気は会場の外へと広がっていた。会場では作品を売り、街では人との接点をつくる。コレクター、アーティスト、キュレーター、そしてラグジュアリーブランドの顧客が同じ場に集い、交流することで、新たな関係が生まれる。「フリーズ・ソウル」は単なるアートフェアにとどまらず、ラグジュアリー産業にとって重要なマーケティングの舞台だ。

ブランドの間で活発化するメセナ活動

ラグジュアリーブランドと「フリーズ・ソウル」の関わりは、華やかなパーティーだけではない。ブランドによるメセナ支援は以前から積極的に行われているが、「フリーズ・ソウル」でもその動きが見られる。例えば、「ブルガリ(BVLGARI)」は、フェア発足当初から4年連続で「フリーズ・ソウル・アーティスト・アワード」を支援している。今年はソウル拠点のアーティストコレクティブ、ヤグァンの新作「ファサード・ゾーン」をサポートし、韓国の中堅アーティストを長期的に支援するプラットフォームを支えている。また、顧客を招いてヤグァンのアーティストトークを開催し、作品を介して顧客とアーティストが交流する場を設けた。「シャネル(CHANEL)」は、アートや文化を支援する「シャネル カルチャー ファンド」の一環として、リウム美術館が3年間にわたり展開してきたパブリックプログラム「イデア・ミュージアム」の集大成となる展覧会「イデア・ミュージアム アフター トゥモロー」を開催。11月29日まで、リウム美術館のオーディトリアム・ラウンジで無料公開する。また、韓国の伝統工芸を支援するイェオル基金と協業し、伝統工芸の発信も行っており、10月16日まで「ザ プロジェクト:イェオルxシャネル-アーティザン. オブ ザ イヤー ヤング クラフツマンシップ オブ ザ イヤー」で、ソモクジャン(木工芸)職人のチョ・ボクレと陶芸家のペク・ギョンウォンの作品を展示する。「ロエベ(LOEWE)」は、9月20日までカサロエべ ソウルで展示やトークイベントを開催。中心となったのは、「ロエベ基金クラフトプライズ 2026」で大賞を受賞した陶芸家ジョンジン・パクの個展「ストラータ オブ タイム」。磁器のスリップ(泥漿)を塗った紙を何層にも重ねて焼成する独自の技法を用いた作品22点を展示した。

「フリーズ・ソウル」を起点に、ラグジュアリーブランドは顧客との交流だけでなく、展覧会や作家支援、伝統工芸の継承にも関わっている。アートとの接点を一過性のイベントで終わらせず、文化との関係を長期的に築いていくことも、アート・マーケティングの形といえそうだ。

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