
毎日新聞社は2026年「第44回 毎日ファッション大賞」の大賞に、「シーエフシーエル(CFCL)」の高橋悠介代表兼クリエイティブ・ディレクターを選出した。新人賞・資生堂奨励賞には、「テルマ(TELMA)」の中島輝道デザイナーを選んだ。長年ファッション業界に貢献した人物や団体に贈る鯨岡阿美子賞は、ビームスの設楽洋社長と、三宅デザイン事務所を設立した故・小室知子が受賞。話題賞にはデサントの「新水沢工場」が選ばれた。
大賞と新人賞受賞の二人ともにイッセイ ミヤケ出身
大賞を受賞した高橋代表兼クリエイティブ・ディレクターは1985年生まれ。文化ファッション大学院大学を修了後、2010年に三宅デザイン事務所に入社し、13年から6年間「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」のデザイナーを務めた。20年に同社を退社し、CFCLを設立。21年には「毎日ファッション大賞」の新人賞・資生堂奨励賞と「ファッション プライズ オブ トウキョウ 2022(FASHION PRIZE OF TOKYO 2022)」を受賞した。22年からパリ・ファッション・ウイークに参加している。
今回の選考では、ニットの可能性を広げ、機能性と高いデザイン性を兼ね備えた独自のクリエイションを確立した点を評価。また、製造から販売、循環までを一体的に捉える取り組みや、パリ進出後も事業を拡大しながら現代社会に求められる服作りを実践してきたことも評価された。9月8日には、初のブランドブック「CFCL: Clothing for Contemporary Life」を米ニューヨークのアートブック出版社リッツォーリから刊行する予定だ。
新人賞・資生堂奨励賞を受賞した中島は1981年生まれ。2010年にアントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、卒業コレクションでChristine Mathys賞とLouis賞を日本人として初めてダブル受賞した。同年「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」に入社し、ウィメンズデザインを担当。その後帰国し、14年にイッセイミヤケへ入社した。独立後の22年に「テルマ」を立ち上げ、「JFW ネクスト ブランド アワード(JFW NEXT BRAND AWARD)2025」を受賞している。
中島デザイナーについては、国内の産地に自ら足を運び、糸作りや生地開発、職人技を取り入れるモノ作りを評価。ドレスを中心とする表現力に加え、最新のプリント技術も活用し、日本の伝統や産地への敬意と現代性を融合した独自の世界観を築いている点が受賞につながった。
鯨岡阿美子賞を受賞した設楽社長は、1951年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業し、75年に電通に入社。プロモーションディレクターやイベントプロデューサーとして数々のヒットを飛ばし、76年にビームス創業に参画。その後83年に電通を退社する。その後、長年にわたり同社を率い、日本のセレクトショップ文化やカジュアルファッション文化の発展に寄与してきた。若手デザイナーの支援やさまざまなコラボレーションを通じた業界への貢献も評価された。
同賞を受賞した故・小室知子は、編集者やスタイリストを経て三宅一生と出会い、1970年に三宅デザイン事務所を設立。副社長として約40年にわたり「イッセイ ミヤケ」のモノ作りと組織運営を支え、多くの人材の成長を後押しした。退職後は「チーム。ソルトン・セサミ」を結成し、15年にわたりチャリティー活動に尽力した。26年4月13日に死去。
話題賞のデサント「新水沢工場」は、「水沢ダウン」の生産拠点。前身である水沢工場は1970年に岩手県水沢市(現・奥州市)で操業を開始。複雑で高機能な商品の生産を通じて培った職人を技を生かし、2008年に「水沢ダウン」が誕生した。その後25年に、デサントが約30億円を投じて建て替え、25年に稼働した。生産数量の拡大ではなく一着当たりの価値向上を重視し、高度なモノ作りを支える環境整備に加え、環境への配慮や地域との共生、従業員満足度の向上にも取り組む。海外生産が主流となる中、日本国内で品質や技術、人材を次世代につなぐ生産拠点として評価された。
「毎日ファッション大賞」は、毎日新聞創刊110年を記念して1982年に創設。ファッションに携わる人々の業績をたたえるとともに、新たな才能の発掘などを目的としている。受賞者のインタビューを含む特集記事は10月上旬の毎日新聞朝刊に掲載予定だ。