
中⾼⽣のためのファッション育プロジェクト「フューチャー・ファッション・インスティテュート」(FUTURE FASHION INSTITUTE 以下、FFi)」は、 「ファッション育」を通じて⼦どもたちの感性を磨き、未来の業界を担う⼈材や、センスを活かして働く⼒の育成を⽀援する。所属する中⾼⽣メンバーは、展⽰会訪問や業界⼈へのインタビューを重ね、⾃らの体験を発信。こうしたポジティブな循環を通じて、⼦どもたちが「未来の⾃分」を思い描き、夢に近づくことを⽬指す。
今回は、これまでにFFiと10回以上のプレ・インターンシップを共催してきたLVMH傘下の、パルファム ジバンシイ(PARFUMS GIVENCHY)と 「FFi」による、独⾃のプレ・インターンシップを開催。普段は一般の立ち入りが認められていない LVMHジャパン本社内の「LVMH HOUSE」を会場に、LVMH グループおよびパルファム ジバンシイの企業概要や理念の共有、メイクアップデモ・実践、キャリアに関するパネルディスカッションが行われた。 その様子をFFi大学生メンターの川嶋洵⽣がリポートする。

まず、今回のプレ・インターンシップでファシリテーターを務める⼭内彩LVMH ラーニング&カルチャー シニアマネジャーの挨拶後、LVMH グループ公式の動画を視聴した。LVMHは75のメゾンを擁し、81カ国以上で事業を展開。また、ファッション&レザーグッズ、パフューム&コスメティクス、ウオッチ&ジュエリーなど計6つのビジネスセクターで構成される。
季節を感じさせる自然や風景を背景に、商品やモデルの魅力が印象的に描かれた動画では、LVMH グループが美を表現する上で、「四季」を重要なモチーフとして扱っていることを感じさせられた。美しさの感じ⽅は⼈それぞれ異なり、ひとり⼀⼈が感じる美しさそのものを尊重することが、LVMH グループの考える「ビューティ」なのだろう。
続いて、パルファム ジバンシイについて、佐藤⾹恵PR&CSR コミュニケーション マネジャーから説明を受けた。「ジバンシイ(GIVENCHY)」は時代の流⾏を追いかけるだけではなく、創業以来受け継がれてきたオートクチュールメゾンとしての伝統を⼤切にしながら、ビューティビジネスを展開しているという。また、ブランドを語る上で⽋かせない存在として、⼥優のオードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)との深い関わりについて紹介。創業者のユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)が数々の作品で彼⼥の⾐装を⼿掛けたことをきっかけに、「ジバンシィ」は世界中にその名を広め、ブランドとしての地位を確⽴した。そして、「エレガンスの秘訣は、あなたがあなた⾃⾝であること」という、ジバンシィの⾔葉であり、ブランドの理念を挙げた。「全員に共通する美しさが存在する」という考え⽅ではなく、「その⼈本来の魅⼒や個性を引き出すことこそがエレガンスの秘訣である」という価値観を、現代においても⼤切にするーー「⾃分らしさを尊重すること」が「ジバンシイ」の⽂化の核であることを学んだ。

その後、ブランドの日本市場を統括するブレンダ ドゥ(Brenda Do)ゼネラルマネジャーから話を聞いた。女性がリーダーを務めることについて、ブレンダゼネラルマネジャーが大切にするのは「自分自身を信じる(Believe yourself)」という言葉。性別に関係なく、誰もがリーダーになることができ、そのためには自分自身を信じ、好奇心を持って挑戦する姿勢が重要であると語る。この言葉は、彼女のキャリア経験に裏付けされたものであったからこそ、強い説得力を感じられた。また「FFi」のメンバーやメンターに対して、「若さという強みを生かし、今しかできないチャレンジをしてほしい」とエールを送り、「今の自分にしかできないこととは何か?」と自問するきっかけになった。
インターンシップ後半、「FFi」メンバーは「ジバンシイ」社員の指導のもと、メイクアップデモンストレーションと実践を体験。壇上にはメイク担当として嵯峨華瑠ギンザ シックス ブティックマネジャー、モデルとして「FFi」メンターの新関桜⼦が登壇し、メイクアップの指導が行われた。「FFi」メンバーそれぞれにメイクアップをサポートする社員がつき、サポートを受けながら実践。実際に商品を使⽤しながら、⾊や質感だけでなく、参加者⼀⼈⼀⼈に合わせたメイク提案を受け、「ジバンシイ」の「⾃分らしさ・個性を引き出すメイクを提供する」という企業の意識を間近で実感することができた。中にはメンズメイクを体験し、新しい⾃分に出会う楽しさを発見した「FFi」メンターも見られた。


次に行われた 「CAREER IN GIVENCHY」のパネルディスカッション企画では、チョン ジュワン プロダクト マネジャー、鈴⽊彩⼦リテール スーパーバイザー、中⾥⾒⿇⾐⼦VMD スペシャリスト、キョ ハナ デジタルコミュニケーション スペシャリストが登壇。
キャリアに関する3つの問いに対し、登壇した4人にそれぞれ回答をもらった。それぞれのテーマに対する回答は、4人それぞれ異なる考えが反映されている⼀⽅で、共通する価値観も見受けられた。特に印象的なディスカッションテーマは、「“好き“を仕事にすることのメリットとデメリット」。中⾥見VMD スペシャリストは、「好きを仕事にする楽しさは⼤きいが、その分学ぶ姿勢が⼤切」と語る。ただ好きだからというだけではなく、学び続ける姿勢と覚悟こそが好きなことを仕事にするために必要なのだと感じた。

最後に、鈴⽊祐⼦マーケティング & コミュニケーション ディレクターが中⾼⽣に「何をしている⾃分が⼀番かっこいい自分なのか、今一度考えてみてほしい」と問いかけ、インターンシップを締めくくった。鈴⽊ディレクター⾃⾝のキャリアにおける葛藤や、後悔をした局⾯という実体験に基づいた言葉だ。今回協力してくれた社員全員から、「ジバンシイ」の文化である「自分らしさを尊重すること」が感じられた。等身大の自分を尊重することを理念に掲げる企業の魅力は、多様性が尊重され始めた現代社会にとてもフィットしていると感じる。今後のキャリアについて考えるきっかけとなる、⾮常に学びの多いインターンシップだった。

参加した学生のリポートから

「日常で正しいメイクの方法を学ぶ機会はなく、SNSなどで自分で方法を見つけてきたが、今回プロに教えてもらうことで、新しいテクニックを身につけられたり、今までの自分のやり方が正しかったと再確認できたりと、とても有意義な時間を過ごすことができた。キャリア座談会では、自分が好きなことを仕事にすることの大変さや、そこに行き着くまでには大きな努力が必要で、諦めずに夢を追うことが大事ということも学ぶことができた」(hana/高校3年)
「私自身、将来学びたいことややりたいことがない一方、メイクやファッションに興味があったため、今回初めて参加した。これまで知らなかった『ジバンシイ』の仕事を知ることができ、これからの将来の選択肢が増えたとともに、『好きを仕事にできるのはとても楽しく、毎日がハッピーになれそうだ』と感じた。外資系企業では英語ができた方が良いと聞き、自分の将来のためにもしっかりと勉強しようと思えた。今後もプレ・インターンシップに参加し、自分の将来の選択肢を広げていきたい」(りりー/高校1年)
「元々美容関係の仕事に就きたいという気持ちがあり、今回参加した。美容業界の細かい部分は知る機会がなかったため、今回の体験を通して沢山の発見があり、視野が広がった。とても大変な仕事で、簡単に成し遂げられるものではないことも学ぶことができた」(Niii/高校2年)
「自分に合ったメイクを見つけるプログラムを通じ、美容の楽しさや自分らしさを表現することの大切さを学ぶことができた。私は現在、学校の科目選択について悩んでいましたが、社員に相談したとき「今学んでいることや経験は、最終的にどこかでつながる」という話をしてくれ、気持ちが楽になった。今回の経験から、自分の将来について前向きに考えるきっかけを得ることができた」(I.O/高校1年)
「もともとファッションに興味があった一方、メイクについては知らないことがたくさんあったため、今回初めてメイクブランドや、メイクの基本を知ることができ、貴重な体験となった。現場でで働く社員の話の中で『好きなものは好きでいい』という言葉がとても印象的で、自分のやりたいことが明確にわかった」(Sao /中学2年)
「パルファム ジバンシイの理念に強く感銘を受けた。メイクアップ講座では、自己流ではなくポイントを意識しながら、自分の魅力をどのように表現するかを考えてメイクを行った。その結果、普段以上に自信を持つことができ、メイクや香水には自分自身を好きになるきっかけや前向きな気持ちを与える力があると実感することができた。キャリアに関する話も非常に印象的で、特に『好きなことを仕事にすることはすてきなことだが、それだけでは壁にぶつかることもある』という言葉が心に残っている。就職活動を進める中で、好きなことと得意なことのどちらを選ぶべきか悩んでいたが、好きなことを追求することで大きな成長や可能性につながる一方、そのために基礎を学び続ける姿勢や幅広い経験を積むことが大切だと学ぶことができた。今後も多くの人との出会いを大切にしながら、自分の可能性を広げていきたい」(「FFi」大学生メンター/るな)
「私にとって、コスメと香水を扱っている企業へのプレ・インターンシップは今回が初めてだった。世界中から愛されているラグジュアリーブランドが集まっているLVMHが、どのようにコスメと香水を作り出しているのか興味があったので、開催前からとても楽しみにしていた。プログラムではプロからメイクを学ぶ講座を受けたり、LVMHの理念を聞いたりなど、初めて知ることばかりで、私含め中高生も興味津々だったと思う。その中でも私が心に残ったのは社員の方のさまざまなキャリアです。それぞれ、言語力、前職で培った経験、考え方、自身の性格など、個人の能力を活かしながら今のお仕事をされているのが印象的だった。私自身、最近就職活動を始めたばかりで、将来について不安を感じていたが、社員の話を聞いて、自分の『好き』な気持ちを大切にしながら、さまざまなことを経験し、力をつけていける大人になりたいと思った」(FFi大学生メンター/YURA)
「ビューティ業界の仕事の詳細についてただ話を聞くのではなく、実践的なアクティビティーによってパーソナライズされた体験を全員が経験できたことが、中高生たちにはもちろん、私たち大学生にも非常に響いたと思う。自分の良さを引き出すメイクの仕方は日常生活ではなかなか習う機会がなく、試行錯誤を繰り返す中で大人になってからやっと自分に合ったメイク方法を見つけられるという人が多い中、中高生のうちからプロに教えてもらえたのはとても貴重な機会だったと感じる。このような機会を得られる学生が増えれば、自分磨きで苦労することもなく、また男子はメイクをしないという固定観念も崩される機会になるのではないか」(「FFi」大学生メンター/なお)
「メイクアップだけではなく、これからの人生で大切にしたい考え方を学ぶことができた。特に心に残ったのは、登壇者の『一瞬一瞬を大切にして、受け入れる。その積み重ねが経験となり、あなたを作っていく』『あなたを1つの言葉で定義しなくていい。それぞれの場所で、それぞれ違うあなたがいて、そのすべてを合わせたときに“あなた“になる』という言葉。 就職活動を終えるまで、自分自身について何度も考え、振り返ってきた。すべての自分を受け入れることは簡単ではないが、今の自分があるのは、これまでのすべての経験があったからだと思うと、どの瞬間もかけがえのないものに感じられる。だからこそ、『一瞬一瞬を大切にする』という言葉の意味が、これまで以上に深く心に響いた。また、普段あまりメイクをしない私にとって憧れだった『ジバンシイ』のアイテムを実際に使いながら、プロの方に教えてもらう時間はとても新鮮で、多くの学びがあった。メイクを通じて自分の新たな一面を知ることができたことも、今回のインターンならではの貴重な経験だったと感じる」(「FFi」大学生メンター/大野和可)
「今回のプログラムにおける一番の学びは、キャリアに正解はなく、自ら選び取った道を正解にしていくことの大切さ。パルファム ジバンシイは、プロダクトを重ねて新しい自分を作り出すのではなく、その人本来の美しさを引き出すことを美学としている。この考え方は、ビューティの枠組みを超え、人生やキャリアにも通ずると感じた。同じ商品でも使う人によってその魅力が異なるように、キャリア選択にも共通の正解はない。実際、座談会に登壇した4人のキャリアパスや価値観は非常に多様だったが、常に自分自身に矢印を向け、興味関心に真摯に向き合いながら歩んできたという点は共通していた。私自身、将来の道を選ぶ中で『これで合っているのだろうか』と、つい外部に正解を求めたくなる瞬間があるが、自分らしいと胸を張って歩むためには、他者ではなく自分の心の声に耳を傾けることが不可欠だと学んだ」(「FFi」大学生メンター/岸珠希)
「一番心に残ったことは、『ジバンシイ』は美の基準を決めて商品を売り出すのではなく、人それぞれの個性を輝かせるツールとして商品を売り出しているということ。近年では美の基準が固定されることも多い中、『自分自身の美を追求するのを助ける』ということに深く感銘を受けた。実際に『ジバンシイ』の商品を使ったメイク体験では、あまりメイクに詳しくない私でも『楽しいな』『この使い方でここをきれいに見せられるんだ』と沢山のことを学べた。特に、普段使わないハイライトを使ってみて、つや感が生まれて感動した。 実際に働く人の話を聞き、国ごとに働き方が違うこと、そこから新たな視点で物事を見られるようになったことなど、海外で働きたいという夢がある私にとって、とても糧になる話を聞けた貴重なインターンシップだった」(「FFi」大学生メンター/寺門璃子)
「普段知る機会がないコスメティック業界について、最先端を行く人たちから貴重な話を伺うことができた。また、実際にメイクを体験することができ『メイクは女性がするもの』『女性にしかできないもの』という固定観念をなくす機会にもなったと思う。後半には、長く業界に携わり、それぞれ違ったキャリアを歩んだ登壇者から、自分たちのような中高生、大学生の世代と現在を結びつけた話を聞き、学びと発見の場になった。私自身も大学生メンターとして、今後自分の目指す将来を実現させるために、今だからこそできることや、どのようにして日々を過ごすべきかを問い直す良いきっかけを得ることができた」(「FFi」大学生メンター/K.U)
「今回のプレインターンシップでは、仕事の内容だけではなく、働くことに対しての姿勢や自分の好きなことと向き合う大切さを感じた。 海外出身の人が日本語を使って働く姿は、日本では当たり前なのかもしれないが、とても輝いて見えた。『好きなことを続けた先に、自分よりもそれを得意とする人がいて、つらい経験をした』という話があった。好きなことを仕事にしたとしても楽しいことばかりではないということは感じていたが、このようなつらさがあるということは考えてもいなかった。実際の経験談を聞くことができ、とても貴重な学びになった。そして初めてメイクを体験することができ、その奥深さや変化を実感し、面白さを知ることができた。自分の好きなことを仕事にする楽しさだけでなく、その難しさも知ることができ、とても貴重な経験になった」(「FFi」大学生メンター/秋山寿)
「『FFi』に学生として参加しているころからずっと、美容系の企画に参加したいと考えていて、やっと今回企画から携わることができた。『ジバンシイ』で働く人々を近くで見ることができ、実際に商品を使い、モデルとしてメイクをしてもらえたのも凄くためになる時間だった」(「FFi」大学生メンター/新関桜子)
今回のリポーターについて
川嶋洵⽣(かわしま・しゅんき):上智⼤学外国語学部1年⽣。⾼校3年時に「FFi」主催の「ビームス」プレ・インターンシップに初参加し、2026年度からは⼤学⽣メンターとして活動。学外では、マイノリティーの⼈権問題に関⼼を持ち、関連するボランティア活動に取り組んでいる。フランス語や異文化理解、ダイバーシティ&インクルージョンに関心を持ち、将来の道については模索中。音楽活動も開始予定
PHOTOS:RYOTARO TANI