「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」は、若い世代の支持を獲得し、韓国やアメリカでもストリートカルチャーと結びついている。一見すると、「若返り」や「ストリートドリブン」などと評されるかもしれない。しかしスタイルの変化や新たなアイコン、そして世界進出はいずれもブランドのトップであり企業の経営者でもある三原康裕の右脳的&芸術的な思考と、左脳的&論理的な戦略が高次元で融合したものだ。彼の秘めた思いに迫る。(この記事は「WWDJAPAN」2026年5月25日号からの抜粋です)

三原康裕
「流行りすぎないようにしたいが、
無理に流行らせないようにもしない」
WWD:率直に今の人気、ブームについてはどう思っている?
三原康裕ソスウ社長兼「メゾン ミハラヤスヒロ」デザイナー(以下、三原):予想できていたことと、予想していなかったことが同時に起こっている。流行ると廃れるので、ファッションの世界では“流行らせるために頑張っちゃいけない”と思っている。特にこの世界はスピードが早いので、コントロールが難しい。PRも、情報だけが先走ると、実体が置き去りになってしまう。今もメディアのスニーカー特集などは極力断り、フォーカスが当たりすぎないようにしている。いかにゆっくり、長く成長していくか?僕はSNSはもちろん、ネットも発達していない時代に生まれ育った。情報の伝達手段は、口コミ。「行ってみた?」「面白かった?」と聞いて、「行ってみた!」「面白かった!」と教えてくれたら体験してみるくらいがいい。「買ってみた」「売り切れていた」「行列ができていた」という段階移行はゆっくりでいい。緩やかな成長曲線を描いた方が、数学的にも(積分したときの)面積は大きくなる。成長は、線ではなく、面で捉えるのがいい。①
① Growth Rate
画像2枚目が経営者としての三原が望む理想の成長の軌跡。少しずつ着実に成長すると、それまで培ってきた総売上高は、流行りによる爆発的成長とは比べ物にならないほど大きくなる。
WWD:ただ、今は「流行っている」。
三原:だから「とにかく静かにさせてくれ」という気持ち。供給過多になると廃れるのが早くなってしまうので、最近靴の生産は年間25万足から16万、17万足に減らしたところ。その分洋服を増やしている。当初はシューズが7割、洋服が3割と見積もっていたが、今は半々に近づきつつある。売上高は、2018年度に比べると7倍くらいになった。
一方で、自然に身を任せるのも摂理。流行ってしまったものを流行らせなくするのではなく、継続していくことも大事だ。今注力しているのは、「流行っていることが“ぼやける”ほど、いろんなことにチャレンジする」こと。さまざまなパズルのピースを集め、スニーカーはあくまで一つのピースという全体を作りたい。いっぱいあるパズルのピースが合わさるまで多くのことを語るつもりはないけれど、それが次の成長期を作ると思っている。イメージは、ある種の喜劇。喜劇って、視点を変えると実は残酷な話も多い。本当はネガティブなことを面白く描くことに本質があると思う。だから流行っていることを短所と捉えず、ある種いろんなチャレンジをして、より大きな世界を描くパズルのピースを一つずつ集めたい。
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