
ニッチなトレンドではあるけれど、最近のメイクシーンでどうにも気になるのが「バター色」だ。適度な白みを含む、まろやかな質感のイエローたちである。ネーミングや発色も含め、若年層の心を絶妙に捉える、その理由を紐解きたい。
春夏のトレンドカラーの1つ「イエロー」の存在感
2026年春夏トレンドカラーの1つが「イエロー」である。ファッション分野もビューティ分野も、原色からパステルまで様々なイエローが登場する中で、メイクシーンで目を引いたのが、「バター」と名づけられたイエローのコスメだ。ズバリ、名前が「バターイエロー」というカラーもあれば、「バター」に着想を得たコレクションもある。
「われわれは今期、トーンアップ下地の限定色として“バターイエロー”を発売しました。2月の発売以来好評で、現在当初計画3倍の進度で出荷しています」と話すのは、「マキアージュ(MAQUILLAGE)」の榊原萌々ブランドマネージャーだ。
このカラーを開発していた2025年当時、メイク市場はピンクベージュが席巻していたという。「そんな中、資生堂のメイクアップアーティスト集団から“イエローに流行の兆しがある”と聞いたんです。確かにランウェイでもイエローを少しずつ見かけるようになり、26年にはトレンドとして、より浸透しているだろうと予想しました」。
榊原ブランドマネージャーがイエローに注目したもう1つの理由は、ここ数年続く「白肌ブーム」に変化の兆しがあったこと。韓国カルチャーの影響で、若年層の間ではここのところ不自然なまでに「肌を明るくする」傾向があった。
「最近は同じ白肌を目指すにしても、よりナチュラルな質感が好まれています。ドラッグストアのバイヤーの方も同じ傾向をキャッチしており、マキアージュでは“自然なトーンアップ効果”と“肌色補正効果”を合わせ持つカラーを開発したいと考えました。その結果、たどり着いたのが“バターイエロー”なのです」。
日本人と相性の良いイエローに
「白み」をプラスするのが今年流
今シーズンの「バターイエロー」の特長は、ほんのり白みを帯びていること。まさに、バターが溶けたような、まろやかな質感を表現している。
「もともとイエローは日本人の肌と相性の良いカラーです。しかし、ことベースメイクに関しては、“黄みが強い色”は好まれない傾向がありました。いわゆる“ブルベ肌”への憧れが強く、ラベンダーやブルーなどの寒色系のトーンアップ下地が支持されています」。
そこで資生堂は、「白のニュアンス」を加えた肌を明るく見せるイエローの開発に着手する。ごくわずかに色調が異なる数十種類のサンプルを作成し、自然なトーンアップ効果を叶えるイエローを追求した。
「完成したバターイエローは、日本人の肌トーンの延長線上にあり、パーソナルカラーを問わずに使えます。グリーンのように“反対色”で赤みや色ムラを消すのではなく、あくまで自然に肌悩みを解消しながら、明るく整えるんですね。温かみがある色調で、親しみやすさや、優しい印象を演出できる点も魅力です」
マキアージュの下地に限らず、今シーズンのバター色は、いずれもほんのり白みを帯びているのが特長だ。肌にしっくりなじみ、やわらかな印象を与えてくれるだろう。
レモンでも、バナナでもなく、なぜ「バター」なのか?
ところで素朴な疑問として、なぜ「バター」なのだろう。イエローを表現するなら、レモンでもバナナでも、玉子だっていいはずだ。
「カラーのネーミングは、美容プラットフォーム「リップス(LIPS)」との協業で誕生しました。事前にリップスに所属するインフルエンサーに製品を試していただき、想起するイメージをあげてもらったんです。さまざまな案がある中で“バターイエロー”が、語感や中味の色の表現として、最もふさわしいと感じました」。
バターイエローという“音の響き”や“字面”も含め、榊原ブランドマネージャーは「なんともいえない可愛らしさがあり、SNSを通じて広がっていく可能性を感じた」という。その背景には、Z世代のし好品も関係していそうだ。
バターやチーズなどを用いた高カロリー・高脂肪の「背徳フード」ブームは、若い世代を中心に今も続いている。
「韓国のハニーバターナッツなど、バターを用いたスイーツは広く浸透しています。最初から“バタースイーツの想起”を狙ったわけではありませんが、若年層のし好品としてすでに親しみがあり、無意識にそそられるネーミングだったのかもしれません」。
色合いも名前も含め「“攻めているけど、攻めすぎない”、絶妙な製品に着地したのではないか」と、榊原ブランドマネージャーは分析する。そんな心そそられる、今シーズンのバターイエローを紹介する。
最強の崩れ防止下地から誕生した、絶妙な「バターイエロー」
「マキアージュ」がマツキヨ&ココカラカンパニーと共同で企画し、限定発売中の“ドラマティックスキンセンサーベース NEO イエロー”。「バターイエロー」という愛称の通り、絶妙な白みを含んだ、パーソナルカラーに関係なく自然に肌をトーンアップする1色だ。同ベースならではの「温度センサー機能」により、テカリと乾燥の両方をブロック。気温も湿度も上昇するこれからの季節、快適な肌状態をキープしてくれる。
バターを添えた焼きたてパンのようなブラウン系マルチパレット
ソウル発のメイクアップブランド「3CE」から限定発売中の「ベーカリーコレクション」。韓国でトレンドの“ベーカリーカフェ”をイメージして、バターたっぷりのパンのような、芳ばしいブラウン系が充実している。中でも“マルチアイカラーパレット #ベージュレシピ”は、「食パンパレット」という愛称の通り、やわらかなベージュ系グラデーションの中央に、バターのようなイエローを配置。クリーミーなパステルイエローは、可憐な印象の目元へと導く。
バター✕ビスケット。指先を甘く彩るパステルカラー
「ネイルズインク(NAILS INC)」から限定発売中の“バター クレーム ネイルポリッシュ デュオ キット”は、名前の通り甘いパステルカラーの組み合わせ。とろけるバターのようなミルキーイエローの「ハイディ」と、ほんのり香ばしいビスケットベージュの「マディソン」は、いずれも指先になじむニュートラルな発色。ベースコートもトップコートも不要のワンステップで、つややかな発色を叶え、甘い印象の指先が手に入る。
個人的にバタースイーツ好きなこともあり、最初はネーミングの字面に惹かれたバターイエロー。実際に使ってみると、絶妙な白のニュアンスによって、明るく可愛らしく仕上がるカラーでもある。遊び心と肌なじみを両立した色として、挑戦してみてはいかがだろう?