ファッション

高感度層に支持広がる「アモーメント」 熾烈な価格競争で磨かれた“韓国発アフォーダブル・ラグジュアリー”

韓国ファッションの勢いが衰えない日本市場にまた一つ、注目ブランドが本格上陸した。このほど、東京・表参道にひっそりと店を構えた「アモーメント(AMOMENTO)」。同ブランドは、いわゆる「韓国好きの若者」向けというよりも、成熟した「洋服好き」にこそ刺さるブランドとして、高感度層の間でコアな支持を集めている。

「アモーメント」は2016年にソウルで設立。カジュアルやストリートに強い韓国ブランドの中では珍しく、北欧的なタイムレスでクラシックなスタイルが特徴だ。黒や茶、ベージュを基調に、テーラードベースのアイテムを豊富に揃える。その服作りは至極ベーシックであり、アウターで4万円〜18万円、ニットで3万〜5万円、パンツで2万5千円〜5万円と、安価なブランドが多い韓国市場においては比較的高価格帯に位置する。韓国ブランドとしては「異質」なポジショニングでありながら支持を広める理由は、価格以上に感じられる「作りの良さ」にあるだろう。そのアプローチは、近年勢いを増す北欧系のアフォーダブル・ラグジュアリー・ブランドとも共鳴する。

日本では大手セレクトから「1LDK」「シボネ(CIBONE)」といった個店まで取り扱いが広がっているが、表参道の新店は本国以外で初となる直営店。神宮前5丁目のビル「ARISTO表参道Ⅱ」の2・3階で、2階にはフルラインアップを揃え、3階はブランドの美学を発信するカルチャースペースとして機能させる。来日したクリエイティブ・ディレクターのMK・リー、CEOのイ・ミョンス(Myeongsoo Lee)に「アモーメント」の哲学、直営店の役割、ブランドの展望を聞いた。

WWD:まず「アモーメント」というブランドについて教えてほしい。

MK・リー=「アモーメント」クリエイティブ・ディレクター(以下、MK):私たちは「服は着ることでこそ、その価値が真につながる」と考え、直接着て体験することを何よりも大切にしています。デザインにおいては、着用感やシルエットはもちろん重要ですが、私は「服とは、人に最も近い空間である」と捉えています。造形的に美しいだけでなく、優れた建築物のように、心地よく快適でありながら、美しい。その両立を最優先しています。

また「ミニマル」であることも、私たちが追求する重要なキーワードです。私は削ぎ落とされたデザインの建築やアートが好きで、いつ見ても良い作品、いつ行っても良い空間に惹かれます。この概念は「アモーメント」にも通じており、「いつ着ても快適で、かつ美しくありえる」という服作りを目指しています。これが、私たちなりの「クラシック」の解釈です。

WWD:元々、建築への造詣があった?

MK:大学での専攻はインテリアアーキテクチャ(室内建築)でした。ファッション業界での最初のキャリアはファッションリテールのVMD(ビジュアルマーチャンダイザー)で、店舗の空間デザインやディスプレイを手掛けていました。そこから、自然な流れで服作りを始めました。

WWD:ブランド名の由来は?

MK:ブランドを立ち上げる際、少し深く、シリアスな問いからスタートしました。「もし人が死んだら、何が残るだろうか?」と考えたのです。想像してみると、やはり「幸せな記憶」「幸せな瞬間」だけが心に残るのではないかと思いました。

スペイン語で「瞬間」を意味する「Momento」に英語の不定冠詞「A」を付け、「ある一つの瞬間(A Momento)」という意味を持たせました。服作りを通じて、人が幸せになる瞬間を作っていきたいという願いを込めています。同時に、「よりよい服とは何か」を考えながら服を作り続け、その一瞬一瞬を積み重ねることでブランドを紡いでいきたいと考えています。

WWD:「アモーメント」は日本でも人気が高まっている。その理由の一つが価格と品質のバランスにありそうだ。

イ・ミョンス「アモーメント」CEO(以下、イ):「アモーメント」が生まれた韓国は、価格競争が極めて激しいファッション市場です。より安価に、よりトレンドをスピーディーに反映することが求められます。その中で、タイムレスで高付加価値な服作りで生き残るためには、上質な素材を使うだけでなく、高いクオリティの商品を適正価格で作る必要がありました。

そのために生産工程やシステム面で徹底した合理化の努力を重ねてきました。必ずしもコストパフォーマンスだけを意識したわけではなく、クオリティーを最優先に考えてきましたが、韓国の激しい競争環境の中で経験を積んできた結果として、現在の価格設定が実現できたのだと思っています。

WWD:日本でのビジネスの沿革は?

イ:日本での卸売(ホールセール)は2016〜17年頃からスタートしました。約10年間取引を続け、ポップアップストアも3回開催しています。韓国で最初に出した店は本当に小さな店舗でしたが、その頃から日本のお客様がたくさん来てくださっていました。そうした経緯もあり、日本は私たちにとって非常に親しみのある場所です。東京への出店は自然な流れでした。2022年の夏頃から神宮前5丁目での物件の話が出ており、ようやく実現に漕ぎ着けました。

WWD:表参道の直営店ではどんなことを伝えたいのか。

イ:まず、3階のインスタレーション(展示)をご覧いただきたいです。これまでお話しした「アモーメント」の表現、アートや建築に通じるエッセンスについては、なるべく言葉で説明したくありません。「定義すること」よりも、直感的に「感じ取ってもらうこと」のほうが重要だと考えています。だからこそ、まず3階でその感覚を味わっていただき、その後に2階のショップへ降りて服に触れる、という空間構成にしています。「スタイル」「ムード」で他のブランドと共にカテゴライズされるよりも、「これはアモーメントらしい」「まさにアモーメントそのものだ」と言われるのが理想です。

WWD:今後の展望は。

イ:私たちは真の“グローバル・ブランド”を志向しています。現在、卸売先は世界で28社ほど。国別の売上規模では韓国がトップですが、日本、中国、北米が続きます。ニューヨークでのショールームビジネスは6〜7年目になり、現在はパリでも展示会を行っています。

ただ、やはりまず東京に店を構えたことは、グローバルブランドとして成長するための足掛かりとして、素晴らしい選択だったはずです。この東京のストアを起点に、さらなる成長を目指して最善を尽くしていきます。さらに、日本には各地に素晴らしいセレクトショップがあり、ファッションに対する審美眼や視点が非常に鋭い消費者がいます。そういった環境で揉まれることは、ブランドのさらなるレベルアップにつながります。今後、表参道に限らず他のエリアでも、店舗を構える可能性を検討していきたいと考えています。

■ AMOMENTO TOKYO FLAGSHIP STORE
営業時間:12:00〜20:00
所在地:東京都渋谷区神宮前 5-49-9 2〜3階

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