ファッション

米国老舗カメラ「コダック」が、アジアで100店舗のアパレルブランドとして“復活”したワケ

1888年、ニューヨーク州ロチェスターで誕生したカメラブランド「コダック(KODAK)」。130年以上の歴史を持つこの老舗ブランドに、いま再び夢中になる若者が増えている。とはいえ、彼らが惹かれているのはフィルムカメラではなく、“服”だ。

2020年に韓国で始動した「コダック アパレル(KODAK APPAREL)」が、11月6日から18日まで渋谷パルコでポップアップを開催している。テーマは「Back to the 90s」。空間はブランドを象徴するイエローを基調に、フィルムボックスを積み上げたインスタレーションやカーブミラー、レシート写真機などを設置。まるで一枚のフィルムの中に入り込んだような没入感を演出する。フィルムカメラやプリクラが若者文化を象徴していた1990年代のムードをリバイバルし、アパレルを中心に展開。韓国発でプレミア化しているキーチェーン型デジタルカメラ「コダック・チャーメラ(CHARMERA)」も毎日先着10台限定で販売し、整理券を求めて若者が連日列をなしている。

「コダック」はフィルムからIPへ

「コダック」で知られるイーストマン・コダック社(以下、コダック社)は、世界で初めてロールフィルムとカラーフィルムを発売し、さらに世界初のデジタルカメラを開発した写真業界のパイオニアだ。しかし、デジタル化の進展によりフィルム市場が急速に縮小し、2012年には経営破綻。その後は企業規模を大幅に縮小し、「コダック」ブランドを知的財産(IP)として展開するビジネスに注力。近年は若者の間でのコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)ブームで「コダック」製商品がリバイバルしている。

韓国では明洞、聖水に旗艦店 売り上げの8〜9割は訪韓観光客

アパレル・雑貨のライセンス事業として「コダック アパレル」を手がけるのは、韓国のハイライト ブランズ(Hilight Brands)社。同社は「フルーツ オブ ザ ルーム(FRUIT OF THE LOOM)」「ディアドラ(DIADORA)」「マルボン ゴルフ(MALBON GOLF)」「シエラ デザインズ(SIERRA DESIGNS)」などのライセンスビジネスを手がけているが、アジア圏でのレトロブームを追い風に「コダック アパレル」が急成長。いまや同社の主力ブランドへと成長している。

韓国ではソウルの明洞と聖水に旗艦店を構え、「ザ・ヒュンダイ ソウル(THE HYUNDAI SEOUL)」や「新世界百貨店」など主要百貨店・モールにも多数出店。現在は中国、台湾、マカオにも進出し、国内外で約100店舗を展開する。聖水店は年間4億〜5億円、明洞店は7億〜8億円規模の売り上げを誇り、そのうち80〜90%が外国人観光客による購入だという。

ハイライト ブランズは、コダック社とのライセンス契約のもと、デザイン・商品開発・VMD・マーケティングを一貫して手がける。ブランドを象徴するイエローとレッドのカラーリングやロゴが印象的で、主力はスウェットやTシャツ、バッグなどのカジュアルウェア。価格帯はスウェットが1万5000〜2万円前後、Tシャツが5000〜1万円前後。秋冬にはブルゾンやデニムジャケットなど軽めのアウターも展開する。中でもシーズンを問わず人気のレインボーロゴTシャツは、1シーズンで5万〜6万枚を売り上げるヒット商品だ。

130年のアーカイブを再編集 カルチャー層にも波及

渋谷パルコのポップアップに合わせて、「コダック アパレル」グローバル事業統括のゴ・サンヒョン氏が来日。氏は「『コダック アパレル』は、単にロゴを貼り付けただけのライセンスブランドではない」と語る。

「コダック アパレル」は、米国本社が保有する130年に及ぶ膨大なアーカイブ写真を自由に使用できる契約を締結している。これらの写真を商品デザインや店舗演出に落とし込み、ブランドの哲学や歴史、理念を表現しているという。ゴ氏は「『コダック』を知らない20代には新鮮なレトロカルチャーとして、30〜40代には懐かしさとして受け入れられている。そして世代を超え、アートやカルチャー層にも広がっている」と説明。「『コダック アパレル』は、130年にわたり人々の記憶と感情に寄り添ってきた『コダック』というブランドの思想、そしてフィルム写真というカルチャーを、もう一度ファッションの文脈で蘇らせるプロジェクトだ」と話した。

日本でも原宿に常設店 コラボ展開で認知拡大を狙う

今年5月には東京・原宿に路面店をオープンし、すでに日本展開を本格化している。運営は日本法人ハイライト ブランズ ジャパンが担う。ゴ氏は「原宿店を拠点に、限定ラインやクリエイターとのコラボレーションも視野に入れ、さらなる認知拡大を狙いたい」と展望する。

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