
2025年秋冬のメイクアップシーンには、国産のデパコスブランドから、豊富なカラー展開を誇るシングルシャドウが登場している。これまで主流だった4色パレットから、トレンドはシングルカラーに移りつつあるのだろうか。社会的背景や生活者のニーズをもとに考えたい。
誰にでも簡単、手に取りやすい
ユーザーフレンドリーなシングルシャドウ
「アディクション(ADDICTON)」からは全60色、「スック(SUQQU)」からは限定色含め全20色、「エレガンス(ELEGANCE)」からは全18色と、この秋登場したシングルシャドウを眺めているとそのカラー展開に圧倒されてしまう。昨年までは4色パレットが目立った印象だが、なぜ今期シングルカラーが台頭したのか。エレガンス コスメティックスの大鷲ひとみPRマネージャーに、昨今のアイシャドウ事情を聞いた。
「4色パレットは、カラーやケースに各社の個性が反映されやすく、ブランドの世界観を象徴します。アイメイクのバリエーションが豊富な点も魅力でしょう。一方、シングルカラーの利点は“1品でアイメイクが完結すること”。単色で目元の立体感を際立たせたり、ニュアンスチェンジをもたらすカラーも充実しています。手持ちの製品と組み合わせるなど、使い方の自由度が高い点も魅力です」。
確かに、メイクがあまり得意でない私は、4色パレットを前にすると、「難しそう」「使いこなせるかしら」と感じてしまう。このような感情を抱く人は、きっと少なくないはずだ。
「パレット全色を使い切る方は少なく、“使い方が分からない”という方のほうが多いかもしれません。その点シングルシャドウは、難しいテクニックはいりません。さらに、昨今の物価高の影響を考えると、価格的にも手に取りやすい面があります」。
デパコスにおける4色パレットの価格帯は、約7000~1万2000円。パレットの場合、頻繁に使う色とそうでない色が生じやすく、コスパがいいとは言い切れない。その点、気に入った色を選べるシングルシャドウは、コスメのギフト需要においてもコスパ優秀なアイテムとして認識されているという。
単色でグラデーションが叶う
粉体技術とパール剤の進化
加えて、現在は粉体技術やパール剤の進化により、肌なじみのいいカラーが充実している点も見逃せない。特に注目したいのは「単色でもグラデーションが叶う」カラーだ。
「例えば、プレジール アイズ 10は、透明感があるベースに、ゴールドやピンクなど複数のパールを組み合わせています。軽くなじませると、まぶたに輝きと立体感を与え、重ね塗りすると色の深みが増す。単色でもグラデーションのような奥行きを演出できます」
実際に試してみると、確かに指でまぶたの上にさっとぼかすだけで、目元の立体感を際立たせてくれる。付属のチップでも簡単にぼかせて、重ねるごとに陰影が増し「つけるとつけないとでは、立体感が全然違う」と思える仕上がりだった。
結局リピートされるのは
「品格のあるパールカラー」
「アディクション」やスック」から登場したシングルシャドウには、「マット」「サテン」など4~5種類の質感が存在し、ユーザーが選べる形を採用している。そんな中、エレガンスは全色にパールを配合したのが特長だ。
「トレンドが続くツヤ肌との相性や、肌なじみを考慮すると、パールを配合しているカラーは使いやすいんです。結局のところ、実際に売れるのは“品格のあるパールカラー”。上品な華やかさがあり、他にはない絶妙な輝きを放ち、粉飛びせずにフィットする……。このような質感をお客様は敏感に感じ取り、気に入るとリピートして下さいます」
この「リピートしやすい」という点も、シングルシャドウの利点といえるだろう。繰り返し購入されるアイテムは、ブランドにとっても大切な存在だ。ここから先は、今シーズン登場した珠玉の名品を紹介したい。
ツールにまでこだわった、繊細な輝きの18色
「エレガンス」から登場した全18色の“プレジール アイズ”。透明感の高いパウダーに、フィット感に優れたオイルを含ませた「ウェットスムースベース」を採用し、指先でぼかしてもチップを使っても、溶け込むようにまぶたと一体化する。全色に様々なパールを配合し、光のニュアンスのみを添えるカラーから、鮮やかな発色のカラーまで充実。シングルシャドウにしては珍しく、ケースに鏡と付属のチップがついている点にも注目を。極小サイズのチップは首の部分がやわらかくしなり、誰にでも簡単に美しくぼかせる。
5つの質感で展開する圧巻の全60色
「アディクション」からこの秋登場したのは、撮影現場におけるメイクアップアーティストの感覚を生かした全60色だ。「マット」「パール」「スパークル」「ネイキッドシアー」「クリーム」という5つの質感に分かれ、いずれも高密着オイルによる粉飛びしにくい処方と、重ねても濁らないクリアな発色が印象的。中でも「ネイキッドシアー」は、ありそうでないシームレスなフィルターカラー。薄膜でまぶたに密着し、単色でも重ね色としても美しいニュアンスを添える。
卓越した粉体技術とカラーで
四季折々の情景を表現
「スック」の秋コレクションからは、日本の四季折々の情景を表現する全20色(うち限定2色)のシングルアイシャドウが登場。「プリズムタッチ」「ラスター」「サテン」「マット」という4つの質感を展開し、それぞれの質感に最適な量でベースオイルを配合することで、発色と質感をバランスをく両立している。単色でも目元の立体感を際立たせ、重ねても色濁りしないのが特長だ。スックが誇る繊細な粉体技術で、なめらかにまぶたと一体化する。
誰でも簡単に使えて、目元の印象が変わるユーザーフレンドリーなシングルシャドウは、アイメイクが苦手な人にも心からおすすめしたい1品だ。豊富な色の中からお気に入りを見つけて、ぜひ繊細なニュアンスを楽しんでほしい。