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連載 ファッション&ビューティパトロール 第94回

「この家、ヤバい」とカメラマンが戦慄 「ミキオサカべ」コラボのお化け屋敷イベントをレポ

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「この家、ヤバい」とカメラマンが戦慄 「ミキオサカべ」コラボのお化け屋敷イベントをレポ

「『ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)』が2日間限定でお化け屋敷を開く」。そう知ったのは、小雨が降る5月初旬の頃でした。ホラーイベントの企画集団・オバケンとのコラボ。2012年に設立し、東京・方南町の古民家を丸ごと使用した常設の謎解きお化け屋敷で知名度を上げた企業です。取材を決めたのは軽い気持ちからでした。どうせ、“それっぽい”イベントだろう。私はその程度に考えていたのです。(この記事は「WWDJAPAN」2025年6月16日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)

いざ参らん、まがまがしい世界へ

5月31日。東京・港区のとある古民家に、「WWDJAPAN」と同様の知らせを受けたファッション媒体の記者らが集まった。方南町の常設展と異なり、今回は場所が非公開のため詳細は書けないが、閑静な住宅街にたたずむ何の変哲もない一軒家であり、それがむしろ異様な雰囲気を倍増させている。お婆ちゃんの家に上がるように、カラカラと引き戸式の玄関を開けて奥の待合室に進み、物語が始まるのを待つ。すると突然、暗転してアナウンスが流れ出した。

——“獣の森”には双子の女猟師が住む不気味な家がある。彼女らは狩りをして豪華三昧の生活をしていたのだが、それが獣たちの怒りを買い、狩りができないように呪われて目を潰されてしまう。しかし、双子も黙っていない。二人は昔の勘を頼りに森に住む姫を捕まえて、家に閉じ込めた。姫を助けるために、森の小ネズミたちが立ち上がり、恐怖に怯えながら猟師の家に向かった。

つまりここが猟師の家で、記者一団は小ネズミ役。姫を救出するミッションに挑む。ギシギシときしむ階段で2階に上がる。上がった先にあったのは張り紙。待合室で事前に受け取った“mikioからの手紙”を読んで、2つの部屋に隠された2本の鍵を手に入れ、姫が幽閉される一室へ向かえとの指令だ。

双子に感づかれるな!
緊張のひととき

記者チームは二手に分かれ、恐ろしい盲目の双子が巡回する中で鍵を探す。部屋は薄暗く捜査は難航する上、下手に動くと銃を携帯した双子から怪しまれかねない。その性質を利用して、わざとオルゴールを鳴らして彼女らの注意を引くなどしながら、物語を進めていく。オカルト嫌いの参加者らはビクビクしつつも、「何も役立たないのは申し訳ない」とばかりに謎の日本人的な気遣いを発揮して、静かに一致団結。

遂にフィナーレか!?
囚われの姫すら不気味

遂にフィナーレか!? 囚われの姫すら不気味

ようやく2本の鍵をゲットし、姫の部屋の錠を解く。現れたのはサテン調のドレスをまとった黒髪の女性(ちょっと怖い)。幽閉期間が長すぎて髪が伸びきってしまったのか、顔はよく見えないが「助けてくれてありがとう」と語りかけてくるきれいなウィスパーボイスに、美女であることを確信。双子に見つからないうちに、全員で逃げようと廊下に出ると、記者チームの努力もむなしく、姫は双子の片割れに羽交い締めされたのち、「あなたたちだけでも逃げて……!」との声を残してまたもや連れて行かれてしまった。ここで物語終了のアナウンスが鳴り響く。「反響があれば第2弾も開催するかも」と坂部三樹郎「ミキオサカベ」デザイナーから聞いていたが、次章への余韻を持たせたようなフィナーレだった。こうして、「早くこの家から出たいけどまだまだミッションをやりたい」というアンビバレントな感情に囚われながら、潜入取材を終えた。

なぜ急にお化け屋敷を?
坂部三樹郎デザイナーを直撃!

全30分の謎解き体験を終えてホッとしたのもつかの間、「そもそもなぜ『ミキオサカベ』が急にお化け屋敷企画を?」という疑問が湧いてきた。恐怖の館を脱出した記者を余裕そうにほほえんで待っていた坂部三樹郎デザイナーに理由を聞いた。

坂部三樹郎デザイナー

僕は1年ほど前から(方南町にあるオバケンの常設展)「畏怖 咽び家」に激ハマりしている、オバケンの大ファンなんです。「畏怖〜〜」は全4章構成で、各章の難解なミッションをクリアしないと次に進めない仕掛けのため、「ミキオサカベ」の社員を全員連れて毎週通っていた時期があるほど。どうしても衣装や内装を通してコラボしたいと思い、オバケンの問い合わせフォームに連絡しました。本家本元は章によってR15指定もされるホラー度合いですが、本企画はブランドのファン感謝祭という位置付けでもあるので、初心者でも楽しめるように「そんなに怖くしないで」とオバケンにリクエスト。ファッションと同様に、ホラーは日常の中で自然に没入できるファンタジーだからこそ、われわれとのコラボを通して新鮮なファッション体験が生まれるのでは?と思いました。

オバケン企画担当・牧野司穂さんの話
普段、私たちが協業依頼をもらう時は、「とある施設を取り壊す前にお化け屋敷にしないか」や「こんな不気味なロケーションがあるのでイベントを開かないか」という内容が多いです。が、今回の依頼主はまさかのファッションブランド。社内でも話題になりました。ホラーには、「幽霊なら白い着物を着る」「ゾンビはボロボロの服」などの型がありますが、「ミキオサカベ」は独自の衣装提案を通して新しい表現を加えてくれました。

写真家・武田が証言
私は見た、ヤバい現場

武田大典/写真家

武田大典/写真家

PROFILE:(たけだ・だいすけ)1992年生まれ、東京都出身。写真家。代表作は写真集「祖父と孫」(2022年、愛育出版)
Instagram:@daisuketakeda513

「この家、ヤバい」。現場に到着して真っ先に感じたことです。実は昔から“感じる”体質なので、何かがいる時は鳥肌が立ちます。特に、双子が待ち受ける一方の部屋を撮影している際には、吐き気が止まりませんでした。しかも、電源ボタンを押してもいないのにカメラが起動したり、はたまた急に動きが悪くなったりと不可解なことが連続。早く撮影を済ませたい気持ちでいっぱいでした。帰宅後、編集作業中の部屋は異様な空気で満ち、胸が苦しくなりました。家族中が騒然としたため、思わず塩を持って線香をたいたほど。写真にも恐ろしい念がこもっていたのだと思います。

コラボアイテムも登場

イベント開催は2日間のみではあるが、坂部デザイナー念願のコラボを祝して6月30日まで「ミキオサカベ」公式ECでは、記念グッズを販売中だ。今回のイベントで用いた古民家をポラロイド写真風にデザインしている。レトロなグラフィックが、不気味なムードを醸し出す……。

PHOTO : DAISUKE TAKEDA

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