PROFILE: 福永敬弘/社長

ブランド誕生から15周年を迎えた2024年、モノ作りと店舗作りの両軸で、全ての資源の価値を見つめ直す「15年目の宣言」を表明した。廃棄物ゼロを目指し、化粧品の枠にとらわれない取り組みを実行する。
“廃棄ゼロ”を実現
モノ作りの未来を描く

WWD:24年をどのように振り返るか。
福永敬弘社長(以下、福永):売上高は前年比26%増を記録し、店舗が同32%増、ECが同8%増とどちらも前年並みの成長率を維持している。中でもスキンケアが同81%増となり、数量限定の“旬”シリーズが成長を支える大きな柱となった。あらためて社員教育に力を注ぎ、スキンケアに対する熱量を上げたことも成果を生んだ。まずはアイテムを使うことを徹底し、実体験に基づいた感想を自身の言葉でお客さまに伝えることを重視している。
WWD:“旬”シリーズを続けるのは大変ではないか?
福永:“旬”シリーズは、旬の素材を肌や髪にも届けたいという想いから誕生した。原料となる植物を最適な状態で収穫して製品化するため、発売日や販売本数があらかじめ決まらないという特殊な形態を取っている。自社工場だからできることだが、スケジュールも極めてタイトだ。最短で発売日の6日前に工場から出荷し、4日前に倉庫に到着するというスピーディーかつ緻密な流通計画が必要となる。現場にとっては常に緊張感を伴う取り組みでもあるが、そこを上回るシロらしい価値を創造する製品であり、お客さまも楽しみに待っていてくださる。
WWD:循環型の未来を描く「廃棄物ゼロ」に向けたアクションの成果は。
福永:24年8月にスタートした「シロ リユースプロジェクト」のPoC(概念実証)を行い、店頭でシロの使用済みガラス容器約1万本を回収できた。その容器を洗浄してリユースできる状態にし、リニューアル前に余剰となった香料や手元にある資材を活用した限定フレグランス“ゼロ コレクション フレグランス”として新たな命を吹き込んだ。同製品は24年11月に渋谷パルコで開催したポップアップイベント「シロ ウィズ パスト」で2400本を販売した。今回の取り組みで、ガラス容器の回収、洗浄、充填、製品化といった一連のプロセスを内製化するおよその見通しが立った。一方で衣類は4カ月間で回収したのが3000着、販売は150着で課題が残った。今後の展開についてはより慎重に検討していく。
WWD:廃棄物ゼロに向けた次のアクションは?
福永:弊社は製品だけでなく、香料も含め資材の棚卸しも精緻に行っている。次のマーケティングカレンダーに反映させ活用するのが“ゼロ コレクション フレグランス”だ。他社も巻き込み、廃棄せざるを得ない資材を譲り受けて製品化していくというのが、25年のフェーズ。自分たちだけがゴミを出さなければそれでいいというわけではない。
WWD:利益の追求と廃棄物ゼロは両立できるか。
福永:両立するには自社工場は必須だ。OEMだけに依存していたら資材まで管理できないし、単価を下げるために量を作らざるを得ない。欠品は避けなければならないが、資材を有効活用して小ロットで作れば、利益を大きく損なうことはない。ただ、ガラス容器の再利用も余った資材の活用も、09年からエシカルなモノ作りにこだわってきた「シロ」というブランドの根っこがあるから理解していただけるのだと感じている。
WWD:海外での拡販も順調に進行している。
福永:海外での売り上げは3倍に伸びたが、シェアは2%程度。春には韓国の聖水(ソンス)に路面店のオープンを計画している。顧客体験も品ぞろえも現地に寄り添った内容にし、ゆくゆくは限定のスキンケア製品も作っていきたい。また、4月には昨今の為替レートに合わせて海外価格の値下げを行う予定だ。
WWD:昨年11月に北海道栗山町と協定を結び、森林作り活動にも着手している。
福永:森林を守りながら資源を活用することに取り組むが、今はそのために森の中の道を整備している。栗山町に自生するふきのとうを、23年に発売したフェイスミスト“ふき2023”で使わせていただいたこともある。ゆくゆくは、そういった栗山町の資源を使用した製品を栗山町のふるさと納税の返礼品とし、税収につなげていただき、森が良くなる循環を作っていきたい。われわれが目指すのは町が自走すること。現在は砂川市、栗山町、足寄町で行っているが、シロはさまざまな地域の産物を利用している。このような市や町との連携は今後も拡大し継続していきたい。
WWD:シロが未来に見据える「可能性」とは?
福永:日本人の価値基準を寛容にしたい。日本のモノ作りはすごく繊細かつ正確で安全・安心。それによって国際競争力を上げてきたが、裏を返せば、その厳しい基準がゴミを出しているという現実がある。そのスイッチをどこかのタイミングで切り替えないと、地球環境は改善していかない。パッケージのキズや容器の再利用などはもっと寛容になれる未来を作りたい。影響力を持つにはわれわれのビジネスをもっと拡大する必要があるが、既に原料調達にも影響が出るほど地球環境は悪化しており、待っている時間はない。
実現の可能性はゼロじゃない私の夢
幼少の頃から夢は小説家。大好きな白石一文さんのような文章を書ける人になりたかった。書きたいテーマは自伝でもビジネス書でもなくヒューマンストーリー。まだ書き始めてもいないが構想は常に頭の片隅にある。いつか上梓したい。
国内外で見つけた素材の力を最大限に引き出す、スキンケア、メイク、フレグランスを提案。自社内に製品の開発から販売まで全ての機能を持ち、創業当初からエシカルな信念に基づくモノ作りを続ける。日本全国に直営店舗を展開するほか、ロンドンや台湾に実店舗を構え、米国では自社EC、中国では越境ECでの販売を行う。23年創業の地である北海道砂川市に新工場と付帯施設を含む「みんなの工場」をオープン。食のセレクト「シロ ライフ」や宿泊施設「メゾン シロ」なども手掛ける
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