PROFILE: 磯崎順信/社長

2025年に創業10周年を迎えたパーフェクトは、ARビューティアプリ「ユーカム メイク」を筆頭に、累計10億ダウンロードを超える「ユーカム」アプリシリーズを展開する。昨年からスローガンに「Beautiful AI」を掲げ、世界60カ国以上・700超えのブランドパートナーと共にユーザーがストレスなく快適な購買体験を提供できる環境作りをサポートしている。
25年はBtoB領域において
AIサービスを強化
WWD:パーフェクトが一般ユーザー向けに配信している主力の「ユーカム」アプリシリーズは、全世界で10億ダウンロードを超えている。バーチャル試着サービスを提供するまでの経緯は。
磯崎順信社長(以下、磯崎):当社は台湾に本社を置くサイバーリンクを母体としている。サイバーリンクはマルチメディアソフトウエアとAI顔識別技術の世界トップクラスで、日本市場では動画再生ソフト「PowerDVD」や動画編集ソフト「PowerDirector」が多くのユーザーから支持されるなどPC向けの製品やサービスの提供を続けていたが、11年ごろからPCに代わり携帯電話が台頭するようになり、モバイル領域で何かできないかと模索していた。当時は写真にさまざまなデコレーションができるプリントシールアプリが出始めたタイミング。「AI顔識別技術を得意とするサイバーリンクならクオリティーの高いアプリが開発できる」と考え、14年夏にバーチャルメイクアプリ「ユーカム メイク」をローンチした。すぐに爆発的人気となり、これを新事業にしていこうと会社をスピンオフ。15年にパーフェクトを設立した。現在は事業がスタートして10年経ち、技術は目覚ましい発展を遂げている。
WWD:事業の成長はコロナ禍で非接触になった20年が大きかったのか。
磯崎:コロナ禍で急激にビジネスが増えたかというと実はそうではない。確かに20年4〜6月は通常の10倍以上の問い合わせがあった。しかし、17年からBtoB領域でSaaS型(インターネット経由でサービスを利用できるビジネスモデル)で提供し、さらに19年からブラウザ上でバーチャル試着ができるようにして収益化し、2ケタ成長が続いていた。また、コロナ禍が明けてバーチャル試着の必要がなくなったかというとそうではない。顧客との強く質の良いエンゲージメントを多く獲得でき、ECだけでなくリアル店舗の売り上げにも十分貢献できていることから、成長はスローダウンしていない。
WWD:ビューティ・ファッションメーカーから支持され続けるパーフェクトの強みとは。
磯崎:技術面では、リアルタイムで自然なバーチャル試着がかなうこと。テクスチャーやメイクパターンなどの表現力はどこにも負けない自信がある。そしてそのサービスのパッケージング方法としてSaaS化したことが大きい。製品の登録作業をブランド側が自由に納得いくまで調整できるシステムを構築。これにより、各ブランドがバーチャル試着を導入するインフラの立ち位置を確立。「ユーカム」は現在世界700ブランド以上が利用し、扱う製品数も80万SKU以上に拡大。これまで数多くの賞も受賞している。この領域では独占的にビジネスできている。
WWD:24年に特に注力したことは。
磯崎:「Beautiful AI」をスローガンに掲げ、AI肌解析アプリ「スキンケア プロ」やAI画像生成アプリ「ユーカム AI Pro」などをローンチした。「スキンケア プロ」は美容クリニックやエステサロンに向けた、サブスクリプション型iOS向け業務用アプリ。弊社のAI肌解析を月額3万円程度から利用いただけることから問い合わせが増えており、展開サービスの裾野を広げることにつながった。そして生成AIの中でけん引してきたものが“生成AIのバーチャルトライオン”だ。生成AIのみは簡単だが、バーチャルトライオンという点が非常に難しい。生成AIを使いながら、毎回同じヘアスタイルを生成させることができるのはわれわれのサービスの大きな特長だ。さらにロングヘアの人がショートヘアにしたときの背景も生成AIで作り、そのナチュラルな技術は一目瞭然だ。また24年12月には、靴やバッグなどのファッションアイテムのバーチャル試着サービスを提供する「Wannaby」をファーフェッチから買収。今後は、AR・AI 技術を駆使したバーチャル試着サービスにおいて、ラグジュアリーファッション分野での新たな展開を推し進めていく。
WWD:今年も引き続き「Beautiful AI」のもと、AR・AI 技術を活用したサービスを提供していくのか。
磯崎:25年は大手のBtoB領域においてLLM(人工知能の一種)を活用したAIサービスを強化していく。これはトップ美容部員や販売員の“デジタルツイン”を創造すること。そのブランドの製品や理念、セールストーク、言葉使いなどノウハウを全て学び、LLMを活用してブランドのウェブサイトにチャットボットのように配置する。ユーザーの顔の特徴や肌状態などを解析し最適な製品を提案したり、メイクレッスンを行ったりと“自分専用のデジタルコンシェルジュ”が可能になる。これら「Beautiful AI」の技術をもって、裾野を広げていくことに注力していく。
実現の可能性はゼロじゃない私の夢
ワインが好きで、特にカリフォルニア州・ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンを好んでいる。カリフォルニアの大学でワインメイキング講座を履修して自分好みのワインを作り、ナパに自身のブドウ畑を作りたい。
台湾に本社を置く日本法人として2015年に創業。ARビューティアプリ「ユーカム メイク」を筆頭に累計10億ダウンロードを超える一般ユーザー向けアプリシリーズを展開するほか、ビューティ・ファッションブランドおよび小売店などに向けてAI・AR技術を活用したバーチャル試着サービスや肌解析ツールなどを提供。台湾、日本、北米、欧州、中国、インドに拠点を構え、サービスを60カ国以上で展開している
パーフェクト
03-6809-1135