ビューティ
特集 CEO2025 ビューティ編

【リノビューティー 田中誠太朗社長】美容領域から地方創生をハイブリッドに実現

PROFILE: 田中誠太朗/社長

田中誠太朗/社長
PROFILE: (たなか・せいたろう)原宿・青山・六本木のトップヘアサロンで経験を積み、俳優ら多くの著名人を担当する。サロンワークのほか、雑誌・CM・広告のヘアメイク、メディア出演や、大手化粧品メーカーでのセミナーなど多岐に渡って活動。2015年にリノビューティーを設立し、17年に会員制ビューティサロン「リノ801」を広尾にオープン。19年に「クロノシャルム」を発売し、ラグジュアリーホテルでのアメニティーにも採用。故郷である北海道を中心に地方創生に取り組む PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

リノビューティーは、ライフスタイルブランド「クロノシャルム」を通じて地方創生に正面から取り組む注目の会社だ。宿泊施設との連携など化粧品にとらわれない新発想でさまざまなプロジェクトを仕掛ける。

将来的には海外外資系の
ホテルへの導入を目指す

WWD:まず会員制ビューティサロンの経緯は?

田中誠太朗社長(以下、田中):美容師として都内のトップサロンに勤務していた時は、多くの芸能人や経営者ら富裕層を担当させて頂いた。そこで感じたのが、そういったゲストは時間を無駄にしたくない、プライベートな空間が欲しいということ。それを受け2017年に完全個室でマンツーマンの会員制サロン「Reno 801(リノ801)」をオープンした。最高金額が「年間契約100万円」となっているが、ヘアサロンメニューだけでなくプロのメイクアップやスパも受けられ、プランによってはヘアスタイルに合わせてホームケア製品も提供する。「ゲストの時間を大切に守る」というのがサロンのコンセプトで、ゲストにはまるで自分の家にいるかのように使ってもらっている。ゲストの時間を大切に守るというのは、弊社の製品・サービス全てに通じる思想だ。

WWD:19年には「クロノシャルム」を発売した。

田中:サロンを立ち上げる時点でオリジナルブランドを作る構想はあり、製品開発に注力する計画だった。「Reno 801」のお客さまに自宅でもサロンのクオリティーを提供したい、来られない人にもそれを感じてほしいとの思いで作ったのが「クロノシャルム」。そのためサロンクオリティーとラグジュアリー感にこだわった。クロノ(chrono)は時間、シャルム(charme)は魅力を意味し、その人の時間に魅力を与えるというのがブランドメッセージだ。

WWD:原料には北海道余市町のブドウを採用している。

田中:「クロノシャルム」には「サステナビリティ」「地方創生」というコンセプトもある。僕の出身は北海道で、ラベンダー、ハッカ、昆布など良い原料があるにもかかわらず、お土産化粧品でしか使われていないことが多い。それをアップデートしたかった。同ブランドには余市町のワイナリーで醸造の際に廃棄されてしまう白ブドウの皮から抽出したクロノシャルディをコンセプト成分として採用している。人間には体内時計を動かす時計遺伝子が存在し、頭皮にも存在する。クロノシャルディはその時計遺伝子に表皮レベルで働きかけ、正常な状態へとサポートする働きがあることが期待されている。富裕層をターゲットにした製品としてワインは共通言語になり得るし、時間というコンセプトにもつながる。現在はその協力ワイナリーが生産する白ワインをブランドオリジナルの“クロシャルム ユメワイン”としてふるさと納税の返礼品にも出品している。

WWD:ホテルのアメニティーとしての採用も活発だ。

田中:ビューティ製品として販路を広げたりラインアップを拡大したりするのが成長のセオリーかもしれないが、われわれはライフスタイルブランドとしてラグジュアリーホテルのアメニティーを目標の一つとした。ブランドデビューから3カ月後にはニセコのラグジュアリーな宿泊施設「シグチ」でのアメニティー採用が決まった。また、23年には北海道日本ハムファイターズの本拠地となる北海道ボールパークFビレッジ内の「ヴィラ ブラマーレ」にも採用された。この2つはそれぞれ独自のフレグランスを「シグチコレクション」「ブラマーレコレクション」というホテルコレクションとして販売もしている。他にも全国8施設でオリジナルラインが採用されており(24年12月現在)、将来的には海外外資系ホテルへの導入を目指したい。

WWD:ブランドデビューから5年。売り上げの推移は?

田中:規模は大きくないが、毎年1.5倍のペースで伸びている。ただ、広告を打ったりインフルエンサーを起用したりして垂直立ち上げ型のビジネスモデルを作るつもりは全くなく、20年30年と続いていくブランドとなるよう価値を上げていきたい。もちろん製品の売り上げは伸ばしたいが、今後はブランドを体現するサービスにより注力したい。

WWD:ブランドを体現するサービスとは?

田中:第一歩として23年10月に「クロノシャルム リトリート ツーリズム」を開始した。弊社は宿泊施設に製品を卸して終わりではなく、そこに人を送り出すところまでが、美容領域からの地方創生への取り組みだと思っている。そのため、「クロノシャルム」のサイトから取引先のホテルの予約サイトにアクセスできる導線を設けている。また、宿泊施設とコラボレーションし、応募者の中から抽選で宿泊体験をプレゼントするキャンペーンを実施している。

WWD:25年の抱負は?

田中:「クロノシャルム リトリート ツーリズム」は単発のプレゼントキャンペーンではなく、それ自体で機能するべきだと考えている。今よりもさらに地域、宿泊施設との連携を強固なものとしていき、「クロノシャルム」というブランドを通じて旅に行きたいと思ってもらえるような仕組みを構築していきたい。僕の故郷は北海道ではあるが、地方創生は日本全国の話。“美容領域から地方創生”は弊社のミッションの一つなので、ブランドに関わっていただく全ての人たちに還元していくことを目指したい。

実現の可能性はゼロじゃない私の夢

『自社プロデュースのホテル開業』

サービスやインテリアの勉強も兼ねラグジュアリーホテルに宿泊することが増えた。その過程で、いつか「自分が理想とするホテルを開業したい」と夢を持つように。ビル一棟を、日本の自然や文化を感じられる場所として打ち出したい。

COMPANY DATA
リノビューティー

「だからあなたは美しい/so you’re beautiful」をコンセプトに掲げ、美容にまつわる事業を幅広い視野で考えるトータルビューティカンパニーとして2015年に設立。会員制ビューティサロン「リノ801」の運営をはじめ、ヘアメイクサービスの提供、オリジナルブランド「クロノシャルム」の製品開発や製品プロデュースを行う。地方自治体との取り組みに力を入れており、アップサイクルされた成分の使用や、宿泊施設やワイナリーとのコラボレーション、各自治体のふるさと納税への参加などを展開する


問い合わせ先
リノビューティー
info@renobeauty.jp