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特集 CEO2025 ビューティ編

【エスヴィータ 篠﨑祥子代表取締役】再生医療着想のメーカー事業で外商ブランドとしての地位確立へ

PROFILE: 篠﨑祥子/代表取締役

篠﨑祥子/代表取締役
PROFILE: (しのざき・しょうこ)2006年に大手外資系化粧品メーカーでキャリアをスタートし、国内化粧品メーカーなどで約16年にわたり広報やマーケティングを担当。16年7月から現職。単純なPR代行で終わらず、ブランド力アップにつながる戦略的なPRから製品作り、ブランド立ち上げ、販路拡大までサポート。リレーションにもしっかり時間をかけ結果につなげる手腕は業界内で高い評価を得ている PHOTO : TOYOTA KAZUSHI

エスヴィータはメーカーとコンサル・PR業務、美容医療クリニック経営の3つの顔を持つ。昨年ローンチした完全オーダーメードスキンケアや、プレミアムスキンケアブランドを発展させ、3事業のワンストップ型ビジネスモデルの確立を目指す。

3事業のワンストップ型ビジネスモデルを確立

WWD:2024年は、長年思い描いていた化粧品メーカーとしての夢が実現した。

篠﨑祥子代表取締役(以下、篠﨑):世界初となるiPS細胞を用いた完全オーダーメードスキンケア「イプシア(IPSYA)」とプレミアムスキンケアブランド「テウズ(TEUDU)」を展開した。24年11月発売の「テウズ」は高価格帯であることを踏まえ、製品特性やバックグラウンドをしっかり伝えるために、プレ販売会やお披露目会、メディア発表会、インフルエンサー向けのイベント、一般のお客さま向けのイベントなど、発売日まで毎月のように戦略的に施策を重ねた。富裕層向けのメディアを中心に数多く取り上げていただけたほか、三越日本橋本店では1週間のポップアップイベントを開催できた。「売り上げと新たな客層を獲得できた」とバイヤーからも高評価を得ることができ、順調な滑り出しだった。

WWD:ターゲット層にリーチできたか?

篠﨑:美容感度の高い人や、日常的に上質なものに触れている外商のお客さまからの反響が高く安堵した。外商ビジネスに長けた三越日本橋本店との相性がよかったことも勝因だったと考えている。

WWD:「イプシア」は完全オーダーメードスキンケアのため、一般的なスキンケアと比べ価格帯のケタも違う。購買層は限られるが、現段階での動きは?

篠﨑:7月に受注販売で提供を開始したが、すでに7人のお客さまからお申し込みをいただいている。単純にオーダーメードコスメに興味を持っているというよりは、根本から美や健やかさを目指したいというように先端医療への関心が高い人が多い印象だ。

WWD:両ブランドの店舗展開は?

篠﨑:まずは「外商ブランド」という位置付けに持っていきたい。9月から施策を重ねているが、徐々に広がりを見せてきている。外商部からの反応も上々だ。現状は三越日本橋本店と東急百貨店で展開しており、伊勢丹新宿本店でも5月から展開予定だ。関西も視野に入れている。価格帯的にECで大きな収益を上げるようなブランドではないため、情報発信基地のような機能を持つ場所の必要性も感じている。実際に製品に触れ、われわれの思いやストーリーを体験していただけるような旗艦店を2〜3年以内に作りたい。

WWD:海外での展開は?

篠﨑:「イプシア」は、海外のお客さまが見込めるサービスだと思っている。現状は日本でしか厳重な管理体制でiPS細胞を作成できないため、運営する椿クリニックを活用し医療ツーリズムという形での展開を考えている。

WWD:これまではコンサル・PR業務とクリニック運営を主軸にしてきた。このタイミングでメーカーとしての機能を持つようになった経緯は?

篠﨑:化粧品メーカーでキャリアをスタートしたが、肌にとってよいものを追求していくとプロモーションやトレンド成分の処方だけでは限界があると感じていた。そこに向き合い、真の美と健康を伝えたいという思いがずっとあり、水面下で研究や構想を重ねてきた。「これだ!」という確信と、それを実現するための技術と特許がクリアになり、ようやく動き出すことができた。クライアントには意思表明をした上でご理解があり、契約を継続していただいている。自社工場を持つクライアントからは「『テウズ』をうちで作らないか」と声をかけていただくなど、よい関係を保っている。

WWD:売り上げの構成比は?

篠﨑:コンサル事業の割合が最も大きく、PR事業と合わせて6割程度。ここでプールした収益を「イプシア」や「テウズ」の開発などに充てている。ブランド事業は市場としてはまだ小さい。今は投資段階だが、「テウズ」を入り口に「イプシア」につなげられるようなビジネスモデルを徐々に確立し、ブランド事業の割合が最大になるように注力する。また「イプシア」のお客さまは、共同経営している椿クリニックでの審査を通しているため、クリニックも巻き込んだワンストップ型のビジネスモデルも見据えている。

WWD:コンサル事業とPR事業の展望は?

篠﨑:積極的に新規の案件を取ったり、営業をかけたりすることはあまり考えていない。既存のクライアントとの関係性を深掘りし、より発展性のあるプランを提案していくことが重要だ。

WWD:未来に見据える可能性は?

篠﨑:これからさらに医療と美容の垣根がなくなっていくと感じており、「イプシア」はこうした潮流を受けて、ますます需要が増すのではないか。加えて、弊社が積み上げてきた地産地消のモノ作り、本当の意味での循環型という可能性が、ブランドをより発展させていくだろうと期待している。地元の岩手県一関市への地域貢献や雇用の創出、化粧品の量り売りなども実現に向けて考えていきたい。

実現の可能性はゼロじゃない私の夢

『猫と自給自足生活』

自然豊かな田園風景が広がる岩手県出身で、自給自足が珍しくない環境で育った。「いつか自分で食べるものを全て自分で作れたら」という思いがずっとある。猫と一緒にのんびりと、お米や野菜を育てながら暮らしてみたい!

COMPANY DATA
エスヴィータ

化粧品の戦略PR企画やEC事業、美容医療クリニック運営などを手掛けるワンストップ型の美容・健康コンサルティング会社。社名は「サステナビリティ・ファースト」と「サーキュラーエコノミー」の頭文字であるS、命や生き方という意味を持つVITAに由来し、サステナビリティや地域貢献にも力を注ぐ。昨年は完全オーダーメードスキンケア「イプシア」と、プレミアムスキンケアブランド「テウズ」を立ち上げ、化粧品メーカーとして事業を拡大

TEXT : NAOMI SAKAI
問い合わせ先
エスヴィータ
0120-623-722