PROFILE: 茂住昌子/CEO

富山県に本社を構えるエイペックスコマースは、オーストラリア発の自然派スキンケアブランド「スノー フォックス スキンケア」の日本総代理店を務め、公式サイト立ち上げからわずか3年で売上高は初年度比750%増と驚異的な成長を遂げた。同社を率いる茂住昌子CEOは、ブランド創業者であるフィービー・ソング氏との二人三脚で、日本市場での地位を急速に拡大している。
“カッサブラシ”とともに
スキンケア認知拡大へ

WWD:2024年は大躍進を遂げたが、未来への可能性をどう感じている?
茂住昌子CEO(以下、茂住):すでに成熟している日本のスキンケア市場に海外ブランドで新規参入することは非常にチャレンジングだったが、短期間で並外れた成長率とリピーター率を実現することができ、全てにおいて可能性を感じた1年だった。これほど急速にブランドが成長するとは予想していなかったが、この勢いそのままにさらなる成長を確信している。
WWD:急成長できた理由は?
茂住:「スノー フォックス スキンケア」を日本で立ち上げたのは21年のコロナ禍だった。消費者がオンラインで買い物することが多かったからこそEC販売で勝負したことで不利な状況を追い風に変えることができた。現在の売り上げは自社EC、アマゾン、楽天を含むECサイトが9割を占める。市場に参入した当初はSNSマーケティングは一切せず、製品を本当に気に入ってくれた美容家やロイヤルカスタマーの口コミだけで認知が急速に拡大していったのは、創業者のフィービーが酒さ(慢性的な皮膚疾患)に長年悩まされてきた実体験から植物療法と先端の植物由来原料をハイブリットに取り入れて開発した製品力が本物であるからに他ならない。フィービーは自身が出産を経たことで、産後の肌荒れやメンタルの不調など複雑に絡んだ女性の深い悩みにも寄り添ったモノ作りを徹底している。そんなブランドの信念と肌変化が多くのお客さまの心に響いていると実感している。
WWD:“カッサブラシ”がゲームチェンジャーとなった。
茂住:1万円以上と高価格帯であるにもかかわらず大変な反響をいただいている。特にウッドバージョンが登場してからはその勢いが増し、常に300個ほど予約待ちをいただいている状況。台湾の職人が一つ一つ手作りしているため現在供給が追いついていないが、2月には製造体制が整い、安定供給できるようになる。“カッサブラシ”は全体売り上げの6割を占め、事業の柱となっている。今後もブラッシュアップとシリーズの多角化を繰り返しながら骨太に育てていく。
WWD:スキンケアカテゴリーのポテンシャルは。
茂住:“カッサブラシ”を入り口にスキンケアに移行されるお客さまが増えてきた。そして実際にスキンケアアイテムを使用いただいたお客さまはリピート率60%と非常に高い。特に好評な高濃度のセラミドと植物性EGFをフリーズドライした“ブースター ボール”はセラムと併用すると、とろとろに溶ける画期的な製品で、2月にはシカエクソソームやリコリスを配合したバージョンも登場する。日本にはあまり浸透していないこうしたスペシャルケアの重要性をさらに啓蒙していけば、まだまだ伸びる余地がある。ブラシブランドだと認識されることも多いが、スキンケアブランドであるという認知を拡大していくことが課題。5年以内にはブラシが3割、スキンケアが7割となる売り上げ構成比を目指す。
WWD:立ち上げ初期から3年間はアウトソーシングせず、カスタマー対応から各社ECサイトへの商品登録、広告運用、梱包まで全ての業務を1人でこなしていた。
茂住:だからこそ物流の流れ、一人一人の顧客データまで全てを把握することができ、ブランドを急成長させる上で強みとなった。通常輸入ブランドは日本市場での認知向上やローカライズが必要で、その回収に数年を要するものだが、当社のように適切なマーケティングと経営判断ができれば投資家を入れず3年未満で初期投資を回収、利益を生むことができることを実証できた。現在16カ国で展開する中、日本はアメリカ、香港に次ぐ3位まで売上高が一気に浮上しており、成熟した市場への参入にもかかわらず香港を凌ぐ勢いで成長していることは自分自身とブランドの自信になった。
WWD:25年に注力することは?
茂住:スキンケアの認知獲得に向け、お客さまとの接点をより増やしていく。23年冬に伊勢丹新宿本店地下2階のビューティアポセカリーで常設展開をスタートし、フェイシャルトリートメントサービスの提供も開始した。また第3フェーズとして今年中に直営店もオープンし、サロン展開とサプリメント販売を手掛けたい。私自身、北米で15年間暮らしていた間にサロン経営をしていたこと、そして薬の製造で知られる地元・富山に戻ってきた背景があり、メディカル事業が自分のルーツへの恩返しだと感じている。本国ではすでに完成しているサプリメントを日本で展開するためにも、まずは直営店を設け、薬剤師が常駐するサロン兼ドラッグストアでの展開にも取り組んでいく。
実現の可能性はゼロじゃない私の夢
ブランド立ち上げ時に学んだ国内外の物流やロジスティックスのノウハウを生かし、日本の中小企業が導入できる低コストで無駄のない物流システムを構築したい。日本の製品の輸出を支援し、再び“世界に誇れる日本”にするのが私の夢。
2019年に設立。富山県に本社を構え、化粧品の製造・販売を手掛ける。肌悩みに寄り添い、肌の変化を追求するブランド「スノー フォックス スキンケア」の総代理店を務め、子育てをしながら女性が美しく活躍できる企業を目指す。徹底した内製化でコスト削減を図り、輸入、物流、広告運用、ECサイト運営、営業全てを最小限のスタッフで対応する。社内の英語化を推進し、輸出業や国内の医薬品製造業の取り扱いにも挑戦する
エイペックスコマース
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