ファッション

伊藤忠がエドウインの全株式取得企業価値を再建できるか

 伊藤忠商事は、経営再建中のジーンズ国内最大手エドウイングループの全株式を取得する。3月10日付で同社とスポンサー契約を結んだ。伊藤忠による経営支援のもと、本業のジーンズ事業では東北を中心にした13の自社工場による生産体制などこれまでの独自性を尊重しながら、既存の取引先との関係を強化する。また伊藤忠の素材から製品、ブランドビジネスに至るサプライチェーンとグローバルネットワークを活用し、トップスなどジーンズ以外の衣料品の拡充や海外市場の開拓を加速する。

 持株会社エドウインホールディングスは国内29社、海外5社を有し、「エドウイン(EDWIN)」「サムシング(SOMETHING)」「リー(LEE)」「ラングラー(WRANLER)」などのブランドを製造・販売しており、年商は約500億円(2013年5月期)に達する。ジーンズ専業メーカーとしては2位のリーバイ・ストラウス ジャパンの93億円に大差をつけ、圧倒的な存在感を誇る。だが同社は12年8月に為替デリバティブによる数百億円の巨額損失が発覚。13年11月に私的整理の一つである事業再生ADRを申請し、スポンサー候補として伊藤忠、ワールド・豊田通商連合、豊和の3組が名乗りを挙げていた。伊藤忠は素材・商品開発、ブランド導入などを通じてエドウインとの関係が深く、また巨額損失発覚後も同社の資金繰りを支えるなど、当初からスポンサーの大本命とされてきた。

 伊藤忠は5月をメドに創業家一族などから全株式を取得し、完全子会社にする。創業家の常見修二・社長は経営責任をとって退任。伊藤忠から社長、取締役、監査役の3人が送りこまれ、内部統制の強化や不祥事再発の防止に取り組む。同社の本業であるジーンズ事業自体は、業界全体が低迷する中、堅調を維持しているといわれている。エドウインの商品を販売する大手ジーンズ専門店の担当者は「(スポンサーが伊藤忠に決まり)ひとまずは安心した。店頭のエドウイン製品のシェアは圧倒的なので、経営体制が変わっても今の商品企画力を維持してほしい」とコメントした。伊藤忠による具体的な再建計画は5月以降に策定されるもようだが、岡本均・常務執行役員繊維カンパニープレジデントもかねがね「エドウインが持っている国内生産工場は日本の繊維産業にとって財産。守っていく必要がある」と強調しており、この生産背景を武器に海外市場に打って出ることになりそうだ。

 伊藤忠は近年、服飾資材最大手の三景、婦人服・子ども服のジャヴァホールディングス、婦人服のレリアンをM&Aするなど、アパレルを中心にしたグループ化を積極的に進めてきた。消費者との接点を持つ事業会社を通じ、「バリューチェーン(素材調達から製造、販売に至るモノの流れ)を長くすることで、儲けるチャンスを増やす」(岡本プレジデント)ことが同社の基本戦略である。エドウインの素材調達に伊藤忠が全面的に関与することでコスト競争力を高めたり、国内外を含めて手薄だったリテール事業に本腰を入れたりすることが予想される。

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