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特集 CEO2024 ファッション編

【ビームス 設楽洋社長】BtoB事業と海外を拡大し コミュニティーを世界へ

PROFILE: 設楽洋/ビームス社長

設楽洋/ビームス社長
PROFILE: (したら・よう)1951年4月13日生まれ、東京都新宿区出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、75年に電通入社。76年2月に家業の新光の新規事業として「ビームス」1号店を原宿に出店。83年電通を退社し、ビームスと新光の専務に。88年ビームス、新光、ビームスクリエイティブの代表取締役を兼任。2011年に持株会社化し、ビームスホールディングス社長に PHOTO:YOW TAKAHASHI

コミュニティーブランド化を図るビームスは2023年、その柱となる人施策を強化し、「一人一人が光る」をスローガンにスタッフのスター化を推進した。24年はこのコミュニティーの輪を広げ、BtoB事業、さらにはグローバル事業も巻き込んでいく。新物流センターにも注目だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

人施策が絶大な効果に

WWDJAPAN(以下、WWD):23年を振り返ると?

設楽洋社長(以下、設楽):コロナ禍から行ってきた創意工夫が今、非常に効果を発揮し、売り上げ、客数共に伸び、過去最高益に近い数字が出ている。さらに、アジア圏のみならず欧米を含むインバウンドの売り上げが全体の1割に達し、海外進出への可能性も感じた。上期は売上高が前年同期比10%増で、EC化率は30%台に落ち着いた。

WWD:注力した施策と収穫は?

設楽:一つは「人施策」だ。店舗を中心としたスタッフの活躍で、オンライン、オフライン問わず絶大な効果を上げた。もう一つは「セール時期の変更・短縮」だ。業界を上げて取り組みたかったが調整の難しさもあり、自社単独で22年から行ってきたところ、昨年夏のセールでもプロパー販売が増え、微減収だが粗利は増えた。懐疑的だった幹部らにも、売り上げより利益、粗利を重視する意識が浸透したことは大きな収穫だ。三つ目が「BtoB事業」だ。年間400〜500案件ほどオファーがあり、小売りビジネスの粗利を超える収益性も含め、次の時代の布石になった。

WWD:コミュニティーブランド化への動きも活発化した。

設楽:各セクションで濃いファンのオフ会のような催しをしたり、人施策においては、コミュニティーを持っているスター社員の本を出版したり、出雲や日光に出店した「ビームス ジャパン(BEAMS JAPAN)」のゲートストアや地方店舗などで地域コミュニティーを作ったり。「フェルメリスト ビームス(VERMEERIST BEAMS)」20周年イベントには200人が来場。「ビームス エフ(BEAMS F)」45周年イベントではこんなにもスーツやジャケットをビシッと着こなす男性が集まるものなのかと驚きつつ、お客さま同士のつながりもできていた。「ビームス ボーイ(BEAMS BOY)」では企画会議に参加してもらったお客さまの声を反映した商品作りも実践。若手バイヤー主導の「フューチャー アーカイブ(FUTURE ARCHIVE)」も新世代のコミュニティーを生み出すなど、理想の形に近づいてきている。

WWD:24年のスローガンは?

設楽:「自ら熱源になれ!」だ。一人一人が進化し、お客さまにも取引先にも、スタッフ同士も経営陣も熱い思いを持った集団になりたい。店舗のスタッフは「ルミネスト認定会」で最上位のルミネストゴールドを獲得し、「スタッフオブザイヤー」で上位になるなどロープレにも前向きだし、SNS時代に入っても成果を出している。ビームスの自由かったつな社風が若手の熱量と相まっていい効果が出ている。

WWD:24年の大きなトピックスは?

設楽:次の時代のビームスのために、近代的なロジスティクスにすべく、物流センターを深川に移転する。面積は約1万坪で、世界初のロボティクス技術を使ったマテハン機器も導入する計画だ。色別、サイズ別で10万アイテム超、しかも、ファッションだけでなく家具やアートのような1点ものまで扱う難しさもあるが、自社物流で培ってきたノウハウに磨きをかける。

WWD:課題は海外事業とBtoB事業のさらなるブランディングだ。

設楽:海外は現地法人が8店舗を運営する台湾が先行している。ビームスは業界内では欧米、アジアで有名だが、一般の方にはアジア以外は認知度が高くないのでブランディングが必要だ。店を持つのが一番だが、セレクト業態は難しいので、海外バイヤーから評価の高い「ビームス プラス(BEAMS PLUS)」と「ビームス ボーイ」を欧米の展示会に出して、ブランドとして育てたい。また、台湾で現地企業とBtoBで協業するなど有機的につながる海外進出のビジョンが見えてきた。ビームスはとんがった面白いことをやる集団で、スポーツやマンガ、アートに強いスタッフも多い。それらをグローバル事業やBtoB事業に活用したい。人材育成の面でも、長い経験のあるスタッフに次の挑戦を促すいい流れができている。27校ある制服デザインのような、恒常的ビジネスのパートナー作りも重要だ。

WWD:基幹のtoC事業での課題は?

設楽:持続的なビジネスのためにも商品と価格のバランスは考えていきたい。極端な例だが、コラボ商品が発売日にメルカリで倍の値段で出品されているケースを考えると、その価値があるなら最初からその値段を付ければいいとも言える。お客さまの満足度を高めるこだわりがあり利益も出る、ビームスなりのリーズナブルのあり方を模索したい。

WWD:最後に、ファッション業界で働く人々にエールを。

設楽:日本を背負っているという思いで、一緒に日本を元気にしましょう!日本は歴史の中で培われた素晴らしいものがある。それを世界に送り届けるのはわれわれの役目だ。経済的な豊かさよりも文化やスピリチュアリティが重要になる時代の中で、日本自体がスーパーブランドになれる可能性がある。社内では「日本=ビームスになる」と言っている。48年前、たった6.5坪で「日本の若者の文化・風俗を変えるぞ」と言ってここまで来たのだから、それくらい言ってもいいでしょ(笑)。

会社概要

ビームス
BEAMS

1976年、段ボールを中心に扱う家業のパッケージ会社、新光紙器(現新光)がオイルショック直後に新事業「ビームス」を立ち上げる。82年ビームス設立。87年ビームスクリエイティブを設立。2011年にビームスホールディングス設立。売上高は23年2月期で831億円。30以上レーベルを展開し、期末店舗数は162店舗(うち、海外12店舗)。台湾と英国に現地法人を構える。従業員は2233人

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ビームス
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INTERVIEW : KUMI MATSUSHITA

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