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特集 CEO2024 ファッション編

【コロネット 七宮信幸社長】高度な専門性を持つ“ナビゲーター集団“の強み

PROFILE: 七宮信幸/コロネット社長

七宮信幸/コロネット社長
PROFILE: (ななみや・のぶゆき)1968年、東京生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、93年4月に伊藤忠商事入社。ロンドン駐在や伊藤忠のブランドマーケティング第五課長などを経て、2020年4月からコロネットに出向。同年7月から現職。趣味は、筋トレ、ファッション、読書、ゴルフ等 PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA

七宮信幸社長は、コロナ禍を「ロケットスタートを切るための準備期間」と位置づけ、2023年を完全復活と変革の年として振り返る。前身のコロネット商会の創業70周年を迎える今年、改めて創業精神に立ち返るとともに、“高度な専門性を持つナビゲーター集団”として、世界の最高級品を消費者に届けることに努めている。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

70年前に立ち返り
「世界の最高級品を消費者に」

WWD JAPAN(以下、WWD):2023年はどんな年だったか。

七宮信幸社長(以下、七宮):ほぼ全ての事業が再開した1年だった。私が現職に就任した20年はまさにコロナ禍による混乱の真っ只中で、全てが止まっていたからこそ、収束のタイミングでロケットスタートを切るための準備期間を作ることができた。おかげで順調なスタートを切ることができ、さまざまな変革が進んだ。社内的には、本部機能を大阪から東京に集約することで人的資本を集中させた。また、人材確保や育成に注力し、新規プロジェクトにも着手した。

WWD:優秀な人材獲得のために何をしたか。

七宮:これからは、あらゆる働き手がプロ人材を目指してスキルを磨き、そんな人材に活躍の場を提供し続けられる会社だけが生き残る。私は就任当初から社員に「専門性の向上」を求めており、その道に長けた人材を積極採用している。社員の強みを最大限に発揮できるポジション作りを意識してきた。仮に適任が社内で見つからなければ、社外との協業から人材獲得まで柔軟に対応できている。多彩な専門家が集まり、私の現職就任以降にコロネットに入社した社員は、全体の4割に迫っている(販売員を除く)。今後も積極的な人材施策を取っていきたい。

WWD:23年に着手したプロジェクトは?

七宮:1つ目は、「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」のリージョナルパートナーとしてビジネスを開始したこと。今年から旗艦店の出店と、スモールレザーグッズやバッグといったアクセサリーの強化を進める。われわれは唯一無二でニッチ、きらりと光るブランドとのビジネスを得意としているので、今後も個性的なブランドと協業したい。また、広報部をマーケティング部として、自分たちで収益を創出するチームに作り替えた。広報部も専門性を高めれば、営業部経由で獲得したブランドのプレス業務だけでなく、セールスエージェントやアタッシュドプレス業務で自らブランドとの接点を作り、営業部がディストリビューションをサポートするという流れの創出が可能なはず。双方向の流れを生み出すことで間口を広げたい。

WWD:業績と好調だったブランドは?

七宮:23年3月期の売上高は、コロナ後のリベンジ消費やインバウンドの回復を受け、前期比31%増、税引後利益率は過去10年で最高だった。好調要因の1つは、取り扱うブランドを集約して提案する百貨店のメンズセレクトスペース。セレクトショップ並みのコーディネートの提案力が求められるため、当社の多様なメンズブランドが力を発揮している。また「ハンティング・ワールド(HUNTING WORLD)」は、店頭が非常に堅調だ。昨年は、「ビームス(BEAMS)」「ブルックス・ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」とコラボレーションした。デサントとの本格的なアウトドアアウターの協業プロジェクトも進んでいる。今年は、トロリーバッグなどのトラベル関連グッズに挑戦する予定だ。一方24年3月期の上半期については、売り上げは前年同期と比べて微減だった。理由は単価の上昇。原材料や為替も含めて20~30%、価格を上げざるを得なかった。しかし客単価は増えたため、売上総利益はプラス。下期の出だしは、気温が高かったことで重衣料の売れ行きがスロースタートだったが、巻き返して期末の予算達成を目指す。

WWD:価格の値上げについてどう考えるか。

七宮:日本経済全体として言えることだが、価格は基本的には上がっていかないと経済成長は見込めない。経済成長が見込めなければ、イノベーションやチャレンジは生まれない。価格が上がる背景、付加価値をお客さまに「説明」するだけでなく、「共有」できるかが重要だ。

WWD:24年の動きは?

七宮:今年は、前身のコロネット商会が大阪で創業してから70周年に当たるため、コロネット商会の「世界の最高級品を消費者に」という創業精神に立ち返る。この「消費者」は、もはや日本人あるいは日本に住む人に限らず、海外の消費者も含む。ジャパンブランドを海外に“ナビゲート”したり、ブランドのインキュベーション強化に取り組みたい。21年ごろから模索してきた動きは今年、形になるだろう。

WWD:昨今頻発するデザイナーの早期交代はどう考えるか。

七宮:メゾンブランドは、デザイナーの交代でビジネス自体が大きく変わるリスクをはらんでいる。しかし変革こそ、新たなパートナーシップや商圏が生まれるチャンスだ。他方「変革」には、過去を踏まえて「進化」させるものと、過去をゼロベースにして作り変える「革命」の2種類がある。前者に関しては、過去を知っていたり、経験していることが非常に重要だ。われわれの知見や経験を生かすことができる。後者の場合は、ゼロ地点からのスタートになるため、パートナー双方の最初の立ち位置が重要だ。その上で、どこを目的地としてナビゲートするかを決め、共有することも大切。ブランドが「どこに行きたいのか」を常に定性面と定量面の双方ですり合わせ、ナビゲートしていきたい。

会社概要

コロネット
CORONET

1954年に輸入販売代理店として創業。2003年に伊藤忠商事の子会社に。繊維製品の製造・輸入・卸売・販売を行う。「ランバン」「ペラフィネ」「ヤコブ コーエン」「ムーレー」「ミラ・ショーン」「フォルテフォルテ」「ハンティング・ワールド」「イザベル マラン」などラグジュアリーからデザイナーズまで幅広いブランドを取り揃えている。23年には「チカ キサダ」の幾左田千佳デザイナーをクリエイティブ・ディレクターに迎えて「ミラ・ショーン」の新ライン“ミラ ショーン バイ チカ キサダ”を始動。「エミリオ・プッチ」と日本国内における独占輸入販売代理店契約を締結するなど、ビジネスを拡充している

問い合わせ先
コロネット
03-5216-6511

TEXT:YU HIRAKAWA

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