ファッション

テックでビューティとファッションが融合すれば、人はもっと幸せになれる アイスタイル新社長&「WWDJAPAN」編集長の想い

 アイスタイルと「WWDJAPAN」は共同で、ファッションとビューティをイノベーションの面からリードした企業・プロジェクトを表彰する「ジャパン ビューティ&ファッションテックアワード 2022(Japan Beauty and Fashion Tech Awards 2022)」を開催する。これは、アイスタイルが開催してきた「ジャパン ビューティテックアワード」に、「WWDJAPAN」も参画することで対象領域をファッションにも拡大する取り組みだ。アイスタイルの遠藤宗新社長と、「WWDJAPAN」編集長の村上要が、ビューティテックの隆盛や、テクノロジーから融合するファッション×ビューティの可能性、そして、アワードに自薦・他薦で応募する企業への期待を語り合った。

ファッションテックへの期待

遠藤宗アイスタイル社長(以下、遠藤):ビューティでもファッションでも、消費者は「自分に合ったものを探したい、似合っているのか・そうでないのかを知りたい」と思っている。その欲求は、同じ。ビューティやヘルスケア、ファッションという広い領域のデータから、生活者をより深く総合的に理解できる時代がきている。だからこそ、それぞれのノウハウや技術がさらに融合すれば、それこそ「人を幸せにするイノベーション」が生まれるのではないか?

村上要「WWDJAPAN」編集長:アイスタイルが開催した「ジャパン ビューティテックアワード」には前回、審査員として参加した。例えば特別賞に輝いたオルビスの「通販向け出荷ラインに無人搬送ロボットを導入し、自動化促進」は、物流の迅速化で消費者を幸せにするのみならず、あえて手作業を残すことで、働く人のやりがいや、そこから伝わる温もりにもフォーカスしている。「ビューティ産業らしい」「誰も傷つけず、みんなを幸せにできる」と感動した。同じようなエモーションへの配慮は、むしろファッションの方がまさっているかもしれない。このアワードにファッションが加わり、双方がインスパイアし合うことで、テクノロジーとの融合のみならず、ファッションとビューティの融合さえ進んだら嬉しい。

遠藤:メタバースの世界になれば、アバターをメイクアップからファッションまで自在に創造できる。その意味でも、テクノロジーは2つの領域をつなげる。またビューティの世界では、たとえば花王はすごいテクノロジーでユーザーの利便性を一気に向上する研究開発に取り組んでいるが、みんながその存在や努力を知っているわけではない。そういった取り組みは、ファッションにも数多くあるのではないか?そこにスポットライトをあてたい。

村上:メタバースは、ファッション業界でもホットなキーワード。すでにラグジュアリーはマネタイズにも挑戦しているし、新たなコミュニティとしての利用を見据えているアパレル企業は数多い。そんなアパレル企業のメタバース・プロジェクトにビューティ企業が参画できれば、ユーザーのアバターがもっと可愛くなるのみならず、百貨店で言うところの「アパレルとビューティの買い周り」みたいな購買行動が生まれるかもしれない。

そもそもビューティとファッションは、
もっと融合すべき?できると思う?

遠藤:僕自身が化粧品業界に長くいるからかもしれないが、化粧品は、特にメイクにおいては製品選びもさることながら、使いこなす技術も必要。その意味で、化粧品は少しハードルが高く、ファッションのほうが多くの人たちが気軽にコーディネートを楽しめる世界なんじゃないかと思っている。また、服は毎日着替えても、メイクを毎日変える人はそこまで多くない。そういった違いをしっかり理解しながらファッションとビューティがどこでつながり融合するのか考えると、また楽しくて新しい世界が開くのではないか。ファッションもコスメも持つ「ブランド」という視点で考えてみると、メゾンの化粧品は「服は買えないけれど、化粧品なら買える」という存在だった。どちらも手に届く価格で、両方楽しめるブランドは少ない。「スナイデル(SNIDEL)」や、先日ローンチイベントをやらせていただいた「リエンダ(RIENDA)」などは、新しい例だろう。

村上:ファッションとビューティのニュースメディアを標榜し、双方の融合を説いているからこそ、「まだまだ近くて遠い存在だなぁ」という忸怩たる思いを抱くこともある。でも、消費者にとって「シャネル(CHANEL)」のバッグと「シャネル」のリップは、同じ「シャネル」。「ディオール(DIOR)」のドレスと「ディオール」のスキンケアは、同じ「ディオール」。そこに「ファッションだから」「ビューティだから」という線引きは存在せず、消費者は双方を自己実現や自己肯定、自己高揚のツールと捉えている。だからこそ、融合できるハズ。

遠藤:これからは、ブランドのアイデンティティがより大事になる。たとえば「パタゴニア(PATAGONIA)」が化粧品を出したら、「パタゴニア」というブランドを信頼している人たちが欲しいものをつくるはずで、ヒットするのではないか?

村上:すでに「グッチ(GUCCI)」がそんなカンジ。だから、このアワードにはファッション企業も挑戦して、ビューティの最前線を体感してほしい。実際、昨年の「ジャパン ビューティテックアワード」で殿堂入りしたパーフェクトのAR(拡張現実)技術やAI(人工知能)技術を活用した美容業界におけるソリューションサービス「YouCamメイク」は、メイクのみならずアイウエアやジュエリー、ヘアアクセサリーなどもバーチャル試着できる機能を搭載した。アパレル業界でも実装できるかもしれないテックが、ビューティの世界には詰まっている。

遠藤:今後、ファッションもビューティも持つブランドの融合においては、プロセス・エコノミー(商品を生み出すまでのプロセスを発信し、収益につなげる考え方)がすごく大事になってくるだろう。アイデンティティがしっかりしているブランドの化粧品への参入のポテンシャルは、とても大きい。逆に、しっかりした世界観をもつコスメブランドがアパレルをスタートするのも新鮮かもしれない。テクノロジーの発達でデータが可視化され、ビジネスが効率的になれば、本来のこういったアイデンティティやクリエイティブに集中する時間が生まれる。

村上:前回大賞を受賞したメナードの「刺激に敏感な肌を再現した新たな皮膚モデルの開発」は、もはやバイオテクノロジーのレベルだが、ファッションの世界にもスパイバーを筆頭に、川上にはバイオテクノロジーを応用・活用したテックが存在する。こういった企業やブランドは、もはや生活や地球環境を根本的に変えちゃうかもしれない存在。だからこそ、サイエンスな企業にも応募してほしい。

遠藤:アイスタイルも、人を幸せにするテックばかり考えてきた(笑)。生活者側からすれば「こんな化粧品と出合えてよかった」、ブランド側からすれば「こんなユーザーさんと出会えた」「使って喜んでもらえた」という世界をつくりたくて、クチコミプラットフォームやEC、リアル店舗を運営している。テクノロジーは、それをドライブするための大事な要素。だが最終的に大事なのは、ビューティやファッションでいかに多くの人たちを幸せにできるのか?それが原点と考えている。


 エントリーは現在絶賛受付中で、12月13日に受賞者を発表する。ファッションとビューティ、それぞれの分野で大賞と準大賞を選出し、大賞には賞金25万円、準大賞には15万円を授与する。

 対象となるのは、ファッション関連(衣服、雑貨、シューズなど)と美容(コスメ、ヘアケアなど)、ヘルスケア分野の、日本国内で企業活動を行っている外資も含む企業やプロジェクト。複数の団体や企業が参加する、業界横断型のジョイントプロジェクトなども含む。

 審査委員長には、梅澤高明A.T.カーニー日本法人会長兼CIC JAPAN会長が就任。審査員には七丈直弘・一橋大学ソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター・副センター長/教授、「ヌメロ・トウキョウ(NUNERO TOKYO)」の田中杏子編集長、渡邉康太郎Takram コンテクストデザイナー/慶應義塾大学SFC特別招聘教授、皆川朋子一般社団法人フェムテック・コミュニティジャパン代表理事の就任が決まっている。

 審査基準やスケジュールなどの応募要項は以下の通り。


【ジャパン ビューティ&ファッションテックアワード 2022】
 審査基準・応募要項

【審査基準】
革新性:新しい体験や価値をもたらすコンセプトの革新性があるか
事業性:収益性のある事業として成立させるビジネスモデルがあるか
技術性:研究開発や技術面において優位性はあるか
社会性:事業を通じた社会への貢献が十分か

【開催スケジュール】
応募期間:2022年9月30日~10月21日23:59
一次審査通過者結果通知:2022年11月11日まで
二次審査実施・プレゼンテーション開催:2022年11月22日
発表・授賞式:2022年12月13日

【応募条件】
・自薦他薦を問いません
・指定の様式に必要事項をご記入の上、指定の方法でご提出ください
・期日までに事務局が受信したものが審査対象となります

応募規約はこちら

【主催】
株式会社アイスタイル 
株式会社INFASパブリケーションズ
Japan Beauty and Fashion Tech Awards 2022事務局

問い合わせ先
Japan Beauty and Fashion Tech Awards 2022事務局
jbfta@istyle.co.jp

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