ファッション

ゴミからインテリア!?渋谷パルコで廃材×アートの椅子やテーブルがズラリ

 廃棄された家具を再構築して椅子やテーブル、花瓶などを創造する「GMKR(ゴミカラ)」が、初めて実販売するポップアップストアが渋谷パルコの1階The window(ザ・ウィンドウ)で、9月28日~10月5日まで開催中だ。

 ブランドの正式名称は「GMKR-Uneven Structure Furniture-」。手掛けるのは、唐十郎さん率いる唐組に所属していたこともある、元役者で舞台製作をバックグラウンドに持つ大橋秀吉氏だ。影響を受けた小説や古典、神話、ダンスを学んだNYの留学生活、チベットまで旅をした体験などをもとに創作活動を行っている。

 「廃棄された家具を分解し、文学や音楽などの『芸術』と、偶然性や神秘などの『神様』の力により再構築するブランドだ。大量生産・マスプロダクションの対極であり、分類・カテゴライズできない不均一(uneven)なものであることを意味して名付けた。人間は、よりよく生きるために有形無形様々なモノ・コトを世界中のあらゆる場所・時代で生み出してきた。『ゴミカラ』は、儀式のように、人間の歴史と創造力に敬意を、そして芸術と神様の力により再構築をする未完のプロダクトとして、一点一点ハンドメイドでモノづくりをしていく」と大橋氏。

 かなりスピリチュアルな雰囲気だが、劇団員や一人芝居などを経て、6年間サラリーマン生活を過ごした後、自ら表現することを再度模索したいと起業。社員の健康やコミュニケーションの向上を支援する法人向けドリンクバーなども手がけていた。そんな中、出合ったのがサーキュラーエコノミーの概念だった。農林水産省の若手を中心に、世界で進むサーキュラーエコノミーをどうやったら日本の政治・経済に落とし込めるかを有志で語り合う座談会があり、ファシリテーターをしていた友人に誘われて参加。「サステナビリティの重要性や廃棄物への課題などは認識していたが、人類が産業革命以来発展したことによって、物理的にゴミが増え、環境が悪くなるというのは必然であり、サーキュラーエコノミーを実現することが不可欠だと気付いた。それって子どものころにドラえもんが描いていた未来のあり方だよね、と思うととても納得感もあった。それで、僕も取り組もうと思い、『ゴミカラ』をスタートした」。

 ロゴデザインを手がけたのは、テクノポップバンド「プラスチックス」のギターでグラフィックデザイナーでもある立花ハジメ氏だ。

 衣食住の廃棄物のプラットフォームとして、クリエイターと廃棄物をつなぐ仕事を構想していたが、まずは自社でその流れを可視化しようと考えた。メンターとして頼ったのが、古着店の先駆け「デプト(DEPT)」の創業者で、現在はアーティストとして活動し、現在は世田谷区代沢でPREFAB gallery&thingsも手がける永井誠治氏だ。米国でデッドストックストアを起こした後、1981年に原宿にオープンした古着店「デプト」はコンセプチュアルな品ぞろえや空間などで話題を呼んだ。

 「永井さんの作られた椅子やアート作品などが好きで。以前は『かっこいいな』『欲しいな』という感覚だったが、廃材を使ったプロダクトでありアートである半工業製品を作ることは、課題解決と問題提起ができる、時勢に合った素晴らしい活動だと感じた。そこで誠治さんに相談させてもらい、コンセプトやアートの捉え方、椅子の作り方など、いろいろと自分の考えをぶつけさせてもらい、意見をもらいながら、椅子作りに対する想いを温めていった。特にインスピレーションやマインドのサポート面での存在感は大きく、誠治さんがいなければ『ゴミカラ』は生まれていなかったと思う」と感謝の念を語る。

 材料となる廃材は、インターネットサービスや廃棄物処理などを手がけるトライシクル(品川区)や、モノづくり支援やディスプレイや屋外広告などの企画・制作・施工などを手がける光伸プランニング(渋谷区)から提供を受けたり、ホテルやオフィスから出た廃品、リサイクルショップのジャンク品などを活用している。時には一流ブランドのディスプレイなどが手に入ることもあるという。

 渋谷パルコでのポップアップストアが実現したのは、パルコからのアプローチによるもの。「今年2月にモノづくりを始め、並行して売り先をリサーチしていたけれど、ピンとくるところがなくて。まずは妥協せずにモノ作りに集中し、少し量がたまったのでイベントスペースを併設している友人のカフェで内々で展示会を行った。SNSやクチコミで友人の友人ぐらいまでが来てくれたのだが、その情報をパルコがキャッチして、実績もなにもない僕にチャンスをくれた。その情報収集力もすごいと思うし、表現するものやその方法などまでも任せてくれる思い切りの良さや、ブランドやアーティストを育てようとしてくれる姿勢に感動している」と大橋氏。

 ポップアップストアのテーマは、「架空の世界『0』。近未来、化石のように掘り出された文明の遺産が、様々な形に再構築され新しい意味を持つ世界をイメージ。「昨年から今年にかけてあらゆる問題が表出したように見える今はまさに、新たな世界を作るスタート地点だ。ゴミも0にしようと、椅子を中心とした売り物だけを潔く飾ることにした」。

 座椅子と廃棄椅子の脚を組み合わせたり、花やミケランジェロをモチーフにした樹脂プリントを張ったり、「罪と罰」のロシア語реступление и наказаниеや「テスラ」のロゴをステンシルで施したり、ジョン・レノンとオノヨーコをオマージュしたりと、かなり自由でインパクトのあるものが多い。開店当日は朝から映像監督やアート集団の代表などが来店し、3日目には完売目前の状況になっているという。価格は税抜きで3万8000~8万8000円だ。

 好調な滑り出しを切ったが、「作ったものが認められ、人に喜んでもらえて嬉しい。ただ、分解して、アートを施して、廃棄物に付加価値をつけることはすごく大変なこと。今の状況では月間20脚を作るのが限界だし、量を広げるのは難しい。それに、食べていけるだけのものがあれば、必要以上に大きくならなくてもいい。それよりも、安定的に廃材などを調達できるようになったら、ファクトリーを広くして、年に数人クリエイターを預かって無償で場を提供し、技術を教えるようなことをしたい。若い世代を育てることが、お世話になった永井誠治さんたちへの恩返しだと思っている。家具だけでなく、別の廃材などにも挑戦してみたい」。

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