ファッション

京都が眼鏡で激アツ!? 30周年の「オブジェ」は開業以来ハートで売る

 京都が眼鏡で一躍、活性化している。2020年6月に、東京・渋谷と代官山に店舗を構えるグローブスペックス(東京、岡田哲哉社長)がエースホテルの上陸で話題となった商業施設、新風館にオープンし、21年5月には全国に28店舗を運営するアイヴァン(東京、山本典之社長)が新業態の「ジ・アイヴァン」を祇園に出店した。一方で、京都には30年眼鏡ビジネスを続け、「オブジェ」を東京や大阪でも展開するイアラ マーケティング スペシャリティズ(京都、柳島邦門社長)や、京都・東京・大阪・神戸で「G.B.ガファス」や「デコラ」を運営するグラッシーズ(京都、竹中太一社長)の存在がある。ローカル組と進出組、それぞれがウィン-ウィンとなる化学反応を期待するのだが実情は?各社社長に話を聞く。まずは柳島邦門イアラ マーケティング スペシャリティズ社長だ。

WWD:進出組について受け止めを聞きたい。

柳島邦門イアラ マーケティング スペシャリティズ社長(以下、柳島):京都市の人口は世間一般の方が感じるより少なく、政令指定都市では川崎や神戸に次ぐ8番手だ。その意味では、眼鏡店は過剰傾向と言える。進出は眼鏡に限らずアパレルでも飲食でもあるが、それなりの数が撤退していることも事実だ。家賃も高く、続けるうちに「ビジネス的においしくない」と気付くのでは?とはいえ今後はインバウンドも回復し、状況は一変するかもしれない。

WWD:コロナショックによるインバウンドの消滅は、どんな影響を与えた?

柳島:オブジェ 京都本店は、北白川という地元の方も車で来店するエリアにある。もともとインバウンド比率は数パーセント程度で、影響はほぼない。

WWD:東京、大阪にも店舗を持つが、品ぞろえや戦略などで京都との違いはある?

柳島:地域によって環境は異なり、それによって当然セレクトする商品も変わる。京都には、こだわり派のお客さまが多い。そのため、カラフルだったりデザインの凝った個性的なものが人気だ。視力矯正の道具として、これらが選ばれている。“とっつきにくい”と形容される京都人だが、一度認めてもらえればリピーター化できる。30年の間に学生だったお客さまが結婚して子どもを授かり、今では家族で来店されるケースも多い。ちなみに京都本店は、オブジェ3店舗の中でももっとも販売価格帯が高く5万~10万円だ。

WWD:ECについても聞きたい。医療器具である眼鏡は扱いが難しい。

柳島:おっしゃる通り、眼鏡には測定および調整が必要だ。それゆえ100パーセントのEC化というのは、現状では不可能だと思う。

WWD:サングラスの場合は?

柳島:可能ではあるが、オブジェは推奨しない。サングラスにもフィッティングがあるからだ。人間の目は位置も左右の距離も異なり、アイウエアを掛ける耳の位置も同様だ。フィットしない装着は時に痛みを伴うし、きつめ・ゆるめなどフィッティングにも好みがある。眼鏡はバランス、塩梅が大事なアイテムで、それは料理の“加減”や“少々”に似ている。疲れているときは塩辛い方がよく、このあたりはとても人間的な感覚と言える。バーチャルでは、重さ・軽さやフレームの質感などは再現できていない。われわれはお客さまをハッピーにする方程式を持つが、現状としては来店いただくことがベストな選択だと考えている。

WWD:京都という街で、次の30年をどう迎える?

柳島:京都は、創造と破壊を繰り返しながら1200年の歴史を重ねてきた。その中にあって、30年という当社の歩みはほんの一瞬のことだろうし、三重県出身の私はついこないだまで“よそ者”扱いだった。そのため、軸をぶらさないことが重要だ。オブジェが大事にしてきたのは、おもてなしの心。心地良い店内で、ゆっくりと眼鏡を選んでいただく。このスタイルは開業以来変わらない。お客さま1人ひとりに生き方があり、それにリンクした好みがある。それらをきちんと把握し、自信を持って商品を薦めるのがオブジェのモットーだ。京都には、“空気感を読んで察する”という文化がある。“京都らしさ”のもとと言えるだろう。京都でビジネスを続けるうえでも、とても大切なことだ。

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