ファッション

NYから日本人が発信するブランド「タナカ」 “サステナビリティはかっこよく”100年先も廃れない服作り

 世界中でサステナビリティに取り組む企業が増えている中、デザインとサステナビリティの両立を困難に感じているブランドも多い。「サステナブルと言えても商品自体が魅力的であることが大事。そのかっこよさを伝える努力をブランド側がしなければならない」と話すのはニューヨーク発のファッションブランド「タナカ(TANAKA)」のタナカサヨリだ。

 タナカはヨウジヤマモト社を経て、「ユニクロ」のウィメンズデザインのチームリーダーを務めたのち、海外生活でインスピレーションを得ながら、遠隔で日本と中国で生産している。ブランドコンセプトに“今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服”を掲げ、長く愛される服を目指しながらサステナビリティにも取り組んでいる。

 海外が40アカウント、日本国内が10アカウントで、卸先は8割が海外。カナダ発のラグジュアリーECのエッセンス(SSENSE)やロシアの有力店ツム(tsum)をはじめ、日本ではビショップ(Bshop)、シティショップ(CITYSHOP)、シップス(SHIPS)などで取り扱いがある。現在は仕事の関係で、ヨーロッパに滞在するタナカに、ブランドのサステナビリティに関する考えや、遠隔でのモノ作りについて話を聞いた。

WWD:まずはバックグランドを教えて欲しい。どのような環境で育ったのか?

タナカサヨリ(以下、タナカ):自然が豊かな新潟県に生まれ、祖父が庭師、父が洋画家で着物のテキスタイルデザイナーという家系に育ち、幼い頃からアートが身近にありました。家には面白い写真や図案、世界のアーティストの作品が掲載されている本がたくさんあって。祖父や父の働く姿を見て、人に喜んでもらえたり、感動を与えられたりするようなモノ作りに憧れを持つようにもなりました。小学3年生頃にはファッションデザイナーを志していて、作文の将来の夢として書いていたようです(笑)。そうして、東京の服飾専門学校へ進学し、卒業後にヨウジヤマモトに入社しました。

WWD:前職ではどのような経験を?

タナカ:ヨウジヤマモトでは入社1〜2年目でデザインをするチャンスをいただき、在籍中に「ヨウジヤマモト ファム(YOHJI YAMAMOTO FEMME)」「ヨウジヤマモト プールオム(YOHJI YAMAMOTO POUR HOMME)」「ワイズ フォー メン(Y’S FOR MEN)」を担当しました。4年間働いて退職。その後、お声がけをいただきユニクロで業務委託の形で働き始めて入社することに。ウィメンズのデザインリーダーとして東京のほか、上海に2年間、ニューヨークに3年間、それぞれのデザインオフィスで働くことになりました。若い頃から海外で働くことができ、本当にいい経験をさせてもらいました。

“気持ちが高揚する服を、
国籍や人種の異なる人々に届けたい”

WWD:「タナカ」をスタートしたきっかけは?

タナカ:このキャリアを突っ走ってきて、上海とニューヨークでの生活でふと我に帰るタイミングがありました。世界中の人たちとコミュニケーションを取ることで、可能性は無限大に広がり、何かワクワクすることを海外を拠点にやっていきたいと感じたんです。特にニューヨークでの暮らしからインスピレーションを受けることが多く、気持ちが高揚するような特別感がある服を、国籍や人種の異なるさまざまな人に届けたいと。また、これまでの経験を生かしてアジアの生地や生産背景を世界に発信できるのではないかと思いました。

WWD:ブランド名はなぜ「タナカ」にしたのか?

タナカ:いろいろ考えたんですが、自分の家族にリスペクトがあり、私のフルネームよりも家族として続くものを表現したいと思ったからです。また「タナカ」は日本でも多い名字の一つ。世界を視野に入れたときに、日本を代表するブランドになるようにとあえて分かりやすい名前にしました。

WWD:モノ作りでは素材にもこだわっている。

タナカ:生地は日本製が多く、ニットや布帛は中国で生産しています。ブランドでも好評アイテムである岡山デニムは、世界でどこを探してもできない表情の加工ができるんです。中国も技術が高く、勤勉で前向きに一緒にモノ作りができる。私は小さな違いが、着る人の1日を変えると思うので、細かいところまでこだわってしまいますね(笑)。最近はヨーロッパでの仕事もあるので、アイテムによってベストなモノ作りができるよ生産地を広げていきたいと思っています。

次の100年のスタンダードになるような服

WWD:サステナビリティへの考えは?

タナカ:ブランドコンセプトに「今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服」を掲げています。私はビンテージ、昔からあるユニフォームや作業着が好きで、それらはその時の生活や用途に合わせて作られた服で、よくできているものが多いんです。これまでの100年に敬意を払い、「タナカ」では次の100年のスタンダードになるような服を作っていきたいと考えています。クリエイターとしてゴミを作らず、モノ作りではなるべくリサイクルの生地や環境に優しいものを選びたい。サステナブルやエコって一見、ほっこりしたイメージがあると思うんですが、かっこいいものを発信するためには努力が必要に感じます。「タナカ」では2020-21年秋冬のルックを写真家の小浪次郎さんにニューヨークで撮り下ろしてもらい、色気があってエッジの効いたイメージを打ち出すことができました。

WWD:具合的にどのようなアイテムが環境に配慮して作られている?

タナカ:デニムでは従来捨てられてしまう落ち綿を一緒に混ぜて作っていたり、洗いや加工で使用した水を再利用できるまて綺麗にできる工場でお願いをしています。また、奄美大島の伝統的な泥染めで美しく、環境にも優しい染色を取り入れているほか、無染色の白を定番色のローホワイトとして提案し、染めずともそのままで生地の風合いと色の美しさを表現しています。これらの商品は北米、ヨーロッパでも評価が高く、手に取っていただける方が多いです。やれる範囲でやっていますが、まだサステナブルなモノ作りはコストがかかってしまうのが事実。その部分をお客さまにも理解をしてもらうことも大切だと思います。

WWD:日本でもサステナビリティに取り組む企業は増えているが、欧米とはまだ環境問題への意識に差がありそうだ。海外にいることで違いを感じることは?

タナカ:アメリカ、特にニューヨークではサステナビリティへの意識は強いと思います。買い物では、モノが溢れている中で、どういう企業から、どのような商品を買いたいのか?というような思考があり、どうせだったら、環境問題に取り組む姿勢のある企業から商品を購入したいと思っている人は多いです。その先駆けが「エバーレーン(EVERLANE)」で、モノ作りの透明性を開示したアプローチに共感する人が増えています。ヨーロッパの店舗でも「サステナブルだったら商品を買い付ける」という店も出てきています。人それぞれ意見は異なると思いますが、私はモノ作りは責任だと思うので、サステナビリティへの取り組みはやれるんだったら、やったほうがいいと感じます。

“お客さまにエキサイトメントを届けたい”

WWD:海外からの遠隔作業は難しくないのか?

タナカ:日本にもサポートしてくれるメンバーがいて、助けられています。コロナ前は、数カ月に1回のペースで日本や中国に行って直接コミュニケーションを取ってきていたので、信頼関係を築くことができています。その信頼関係がある上で、LINEやZoom、ワッツアップ(WhatsApp)、フェイスタイムなどを駆使しながら話しています。それぞれの取引先にキーマンがいて、伝えたいことをわかっていただけて、私も職人さんの腕を信頼しています。特にデニムの加工を担当していただいている、西江デニムの柞磨さんは10年以上の付き合いがあり、私の感覚を電話やメールなどですぐに理解してくださっています。コロナが落ち着き、また自由に動けるようになったら、すぐに商品を作ってくださっている現場に行きたいと思っています。

WWD:海外でコロナ禍を経験して変化を感じることは?

タナカ:ビジネス面では、ロックダウンにより店舗が閉まったことでオーダーがキャンセルになることもありました。ただ、現在所属しているミラノのショールームではデジタルショールームとして直接見れないバイヤーにも営業をしているので、ありがたいことに取り扱いの店舗数は毎シーズン増えいます。作り手として感じるのは、このような状態でも、一緒にモノ作りを続けてくれている人々への感謝。こういう時だからと遠慮せずに、しっかりクリエーションに反映して、お客さまに喜んでもらえるものを作っていかなければならいないと思っています。

WWD:今後の目標は?

タナカ:お客さまにどうやってワクワクすることを届けられるかということを考えています。私個人的には家の時間が長いので、レコードを集めたり、アコースティックギターを買ったりと、改めて音楽の素晴らしさを認識しました。そのエキサイトメントを表現すべく、みんなが楽しめられる場所やイベントのようなことも考えていきたいと思っています。またモノ作りでは100年廃れない服を作り続けること。今後、廃棄されるような、倉庫で埋もれている生地などを使って1点モノを作ることにもチャレンジしたいですね。

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