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ファッション業界のコロナ禍での求人減 転職・副業事情をプロに聞く

 2020年はファッション業界にとって波乱の1年だった。コロナ禍での緊急事態宣言の休業や、外出自粛によって実店舗を主軸にしたビジネスが苦戦。ブランド事業の休止や縮小が見られることもあった。ポジティブな面に目を向けるとオンライン販売でのEC事業が急成長し、都心よりも地元でのショッピングが見直され、売り上げを伸ばした企業もあった。また、働き方も多様化し、リモートワークや副業解禁も進んでいる。

 アパレル・ファッション業界専門の転職支援サービス「クリーデンス(CREDENCE)」が発表した2020年9〜11月のアパレル・ファッション業界の求人数は、前年同期比で全体約16%減、正社員求人は約8%減、契約社員求人約44%減と、前年割れが目立った。都心の販売職の求人は減っているものの、EC事業の好調により、IT関連の求人は増加傾向にあるという。

 ここでは「クリーデンス」の河崎達哉・事業責任者に、ファッション企業のコロナ禍における求人の状況や2021年度の見込みについて聞いた。

ラグジュアリー、リユース、スポーツの採用は堅調

WWD:この1年の求人状況は?

河崎達哉(以下、河崎):コロナによって、パンドラの箱が開いたようにアパレル・ファッション業界の構造問題が溢れ出し、求人にも反映されたという印象だ。各社の人事担当者は採用よりも、今いる人員の最適化を重要視していた。採用エリアでは都心が厳しいなか、郊外や地方は相対的によく、消費者が車で行ける場所で買い物をするというアフターコロナのニーズが現れていた。また、ラグジュアリーの採用熱は高く、感度の高いコアなファンを掴んでいるブランドはコロナ禍であろうと、強さを感じた。またリユース系の販売職、スポーツアパレル系の採用も比較的好調。ファッションでも領域によって差が出た一年だった。

WWD:去年に比べて、求職者も増えているのか? 

河崎:今年は当社のマーケティング費(広告出稿)を抑えたにも関わらず、昨年と同等の登録者数があった。求職者は2極化しており、現在の会社の状況を見て動かざるを得ない人と、様子を見ている人に分かれる。

WWD:採用される人の傾向は?

河崎:採用する際に「スキル」「人物」「志向性」という基準がある中で、「人物」では企業の目線が高くなってきている。コロナ禍によってこれまでの売り手市場から一気に買い手市場になったことを背景に、採用見送りの理由を見ていると今まで以上に「本当にそのブランドが好きか?」「意志や思いがあるか?」というとこを問う企業が増えている。レジリエンス(困難を乗り越える力)という捉え方では、ブランド愛があれば頑張ることができたり、結果的に長く続けられたりということもあるため、その踏ん張る力を今まで以上に重視しているのだと感じる。しかし、採用見送りの理由で一番多いのは「経験スキルが足りていない」ということ。これまでならチャレンジでも採用できていた人材が、コロナ禍でコストが厳しくなり本当の即戦力を必要とする企業もある。

WWD:今、転職する際に求められているスキルとは?

河崎:販売職ではSNS運用ができるかどうかは重視されているが、ラグジュアリーブランドでは販売力と顧客化力を今まで以上に見ている傾向にある。その人ならでは強みを持っている人は求人マーケットでもニーズが高い。

副業で従業員のキャリアが充実

WWD:フリーランスに転身し業務委託として仕事をする人も増えている。企業も正社員以外での採用が増えているのか?

河崎:増えている。業務委託契約は経営の観点から正社員よりも人件費を抑えられるというコスト削減の面もあるが、チャレンジ採用ができるという点でも注目されている。中堅中小企業では、急にITやECを本格的に着手することになっても正社員で数人採用することはハードルが高い。それよりは週2、3日で出勤できる人と業務委託契約を結んだり、またはあえて他業界のエンジニアを副業で採用したりすることで社内に新たな価値観や刺激を入れることができるというメリットもある。「クリーデンス」で運営するフリーランスのファッション人材と企業をつなぐマッチングプラットフォーム「フレクション(FLEXSHION)」では、登録者が顕著に増えている。

WWD:副業者の数は増えている?副業を解禁する企業の傾向は?

河崎:副業を許可している企業はまだまだ少なく、これから制度を整えようとしている段階にある。副業を解禁する企業の傾向は、デジタル施策への着手も早く、変化をいとわないような印象。職種ではデザイナー、パタンナー、EC・ITエンジニアなどの募集が多く、販売職の副業の事例は当社ではまだない。

WWD:副業を解禁する企業側のメリットとは?

河崎:従業員のキャリアが充実し、その恩恵が企業に戻ってくるということ。閉ざされた環境で働くよりもいろんな刺激があった方が、新しい欲求が生まれるケースもある。従業員が新たなスキルを得られることに加え、前向きに仕事に取り組む姿勢が見られる効能を狙っていると考える。

WWD:2021年の求人の見通しは?

河崎:一定数は回復すると思うが、コロナ前の件数に戻るには数年はかかると思う。引き続きIT・EC系の求人は増えていき、販売の求人増は大きくは見込めないと予測する。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の傾向から、マーケティング、EC、生産管理などのポジションのニーズが高まり、採用の動きは活発化しそうだ。DX担当者と一括りにする中でも、事業の問題点を見つけて経営者を動かす力があるタイプ、ITを導入して運用のPDCAサイクルを回す実行部隊のタイプなど種類は分かれそうだ。