サステナビリティ

ベルリンの日常に溶け込むサステナブルな取り組み

 サステナブル先進国の一つと言われているドイツでは、環境のことを考えたシステムや活動が暮らしの中にごく当たり前に溶け込んでいるように感じます。実際、ベルリンに住み始めてからサステナブルな取り組みをより身近に感じるようになり、関心も高まりました。「サステナビリティ」や「SDGs」と言う言葉だけを聞くと、難しく考えてしまったり自分事化しづらかったりしますよね。僕自身もそうでしたし、今でも環境に配慮した暮らしを“完璧”に実践しているわけではありません。でも大事なのは、自分の身の回りでできることをやってみること。そして何よりも継続することではないでしょうか。ドイツや北欧諸国などでは特に目新しいことがあるというわけではないのですが、今日は日常に根付いているサステナブルな取り組みを紹介します。
   

飲み物は購入時にはデポジットが必要

 ドイツではペットボトルや瓶、缶入りの飲み物を購入するときに、 “プファンド(Pfand)”と呼ばれるデポジットを商品代金と一緒に支払う必要があります。これは容器の再利用やリサイクルを促すために始まったシステムなのですが、1本につき瓶は8~15セント、ペットボトルなどのプラスチックボトルは15〜25セント、缶は25セントとなっていて、まとめ買いすると意外と高額になるのです。さすがにもう慣れましたが、ベルリンに住み始めた頃はレジで合計金額を見てびっくりすることもありました。

 そしてスーパーマーケット各店には回収専用の機械が設置されているので、飲んだ後はどこのお店でも返却可能。その都度返すというよりは、家に溜めておいてまとめて持っていく人が多いです。返却すると合計金額とバーコードが記載されたレシートが発行されるので、それをレジで換金してもらうか新たに購入する商品の合計から割り引いてもらうという仕組みになっています。

 ちなみに“プファンド”システムの対象となっているのは、「Mehrweg(再利用可能)」と書かれたボトルと「Einweg(使い捨て)」マークのついた商品のみ。瓶でもワインボトルなどは対象外なので、ゴミ置き場や街中に設置された色別の回収ボックスに入れます(透明、緑、茶色と分ける必要があります)。また輸入品やフルーツジュースの一部なども対象外なので、分別して捨てます。
 

自分がいらなくなっても、捨てずに欲しい人を探す

 日本では断捨離したら、捨てる、もしくはフリーマーケットやメルカリで売ったりするというのが一般的ではないでしょうか?ベルリンでも週末の蚤の市は人気で、家でいらなくなったものを売りに来ている感じの人もいます。ただ、それよりも僕が驚いたのは、普段からアパートのエントランスや家の前に「zu verschenken(差し上げます)」と書いて、家庭でいらなくなったものを置く人が非常に多いこと。10分ほど住宅街を歩いていたら、必ずと言っていいほど目にします。

 置いてあるものは、割と大きな家具や家電から、服や靴、本、食器、植物までさまざま。正直、どう見ても“がらくた”じゃないか!!と思うようなものもありますが、中にはアンティークの素敵なグラスや雑貨なんかが置かれていることもあるので捨てたもんじゃありません。日本だとちょっと人目が気になったりして物色するのは勇気がいるかもしれませんが、こちらでは皆、普通に立ち止まって見ているので気にする必要は一切なし。僕自身もまだまだ使える立派な穴あけパンチを拾ったことがあり、今でも使っています。そして、最近引っ越しのために断捨離をしたので、“ご自由にどうぞ!”ボックスを試してみたのですが、夜遅くに段ボールに10点ほど入れて家の前の通りに出しておいたら、翌朝にはすっからかんに!自分には必要なくなったものでも欲しい人がいるというのは、本当でした。

 最近のリサイクル事情でいうと、8月にベルリン郊外に“捨てる代わりに再利用”をモットーに掲げ、中古品のみを集めたデパート「ノッホ・モール(NOCH MALL)」がオープンしました。母体はベルリンのゴミ収集やリサイクルセンターの運営を行っているBSR(BERLINER STADTREINIGUNG、ベルリン市清掃局)で、2000平方メートルの店内に状態の良い家具や電化製品から洋服、おもちゃ、本、スポーツ用品まで約1万5000点が並んでいます。このお店の特徴は、街中にたくさんあるリサイクルショップやビンテージショップとは違って営利目的ではなく、持続可能な消費を啓蒙するプラットフォームとしての役割を担っているということ。そのため、修理やアップサイクルのワークショップなども企画しています。まだ実際に足を運んだことはないのですが、近所にあるデパートの1フロアで現在ポップアップストアもやっているそうなので、今度行ってみようと思います。

フードロス削減に取り組む“廃棄食品”のスーパーマーケット

 ベルリンはスタートアップ企業が多いことでも知られている街ですが、フードロス削減に取り組むスーパーマーケット「サープラス(SIRPLUS)」もその一つです。2017年に1号店をオープンして以来、着実に成長を続け、現在はベルリン市内に6店舗とオンラインショップ、そして2つの自動販売機を構えています。

 取り扱っているのは、全て廃棄食品。賞味期限が切れたものや近いものが多いですが、それだけではなく過剰生産された商品やイースターなど季節限定商品の売れ残り、規格外の野菜や果物などもあり、生鮮食品やパンから缶詰めや瓶入りの食品、お菓子、調味料、飲料、アルコールまでがそろっています。商品は主に理念に賛同したメーカーや卸業者から仕入れていて、オーガニックやエシカルな商品も多いのも特徴です。行く時期によって品ぞろえは随分変わるのですが、それもまた楽しみの一つ。普段スーパーで普通に買っている商品があったり、ビックリするようなお買い得品を見つけたりすることもあります。

 また「サープラス」のオンラインショップでは、「パッケージにプラスチック不使用もしくは削減」や「ビーガン」「オーガニック」といった項目で商品を絞り込むことが可能。それぞれのライフスタイルに合った商品を見つけやすいというのも好印象です。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

最新号紹介

WWD JAPAN

バーチャル空間に商機あり ファッションビジネスの可能性を探る

1月18日号は「バーチャル空間」特集です。世界最大級のストリートの祭典「コンプレックスコン」のデジタル版「コンプレックスランド」と世界最大級のバーチャルイベント「バーチャルマーケット5」を徹底取材。出展者や参加者が “体験”したことで分かった可能性や課題をまとめました。大型連載、サステナブル特集はステップ5として「認証」がテーマ。国際的な認証機関のお墨付きを得ることの重要性を説きます。ミニ特集では…

詳細/購入はこちら