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コロネット新社長 「インポーターでなく“ナビゲーター”」と語るビジネスの展望

 伊藤忠商事子会社で海外ブランド輸入卸大手のコロネットの新社長に、七宮信幸氏(51)が7月1日付で就任した。同社は1947年創業の老舗インポーターで、2003年から伊藤忠商事傘下に入っている。七宮新社長も同社で長年ブランド畑を歩んできた商社マンだ。新型コロナウイルス感染症という未曾有の事態でトップについた七宮社長は、この時代をどう切り抜けるのか。またインポートビジネスをどう展望し、社員を導くのか。それらについて話を聞いた。

WWD:新社長としての抱負は?

七宮信幸社長(以下、七宮):コロネットという伝統ある会社の企業価値を継承し、かつ進化させながら基盤を作っていく。創業者の桃田(有造)さんの言葉にある「最高級の商品と最新のブランドを消費者に届けていく」という姿勢は貫きつつ、ブランドのナビゲーターとしてキラりとひかる会社にしたい。そのためには社員一人一人に輝いてもらわないといけない。私を含む経営陣は、その土台をつくることが最大のミッションだ。

WWD:ブランドの“ナビゲーター”とは?

七宮:われわれはインポーターと呼ばれているが、本質としてはナビゲーターという表現の方が適切だと思っている。最高級のブランドをただ引っ張ってくるだけじゃなく、新たなエリアでどんなビジネスを行うかーーその指南役として、ブランド成長の一翼を担っているからだ。これまでのビジネスエリアは日本市場だけだったが、これからはアジアを中心とした海外市場にも裾野を広げていきたい。会社を成長させるためだけでなく、日本のデザイナーズの海外での継続的なビジネス展開という積年の課題のソリューションとしても提案できるだろう。そのカギとなるのは、伊藤忠商事が業務提携を結んだ「ジョア(JOOR)」だ。世界最大規模のBtoBマーケットプレイスである「ジョア」を用いて、われわれがショールーム機能をもちつつ、海外で売ることもできる。

WWD:いわゆるインポーターの役割も変化している。

七宮:その通り。そもそもインポーターが成長してきた理由は、洋服に知りたい情報がたくさん詰まっていたからだ。ネットがない時代は、雑誌を読んだりテレビを見たりすることに加え、洋服が新しい情報の発信源だった。ところが、今は状況が大きく変わってきている。SNSによって洋服の情報は瞬時に伝わってしまうし、だれでも理解できる。そして、情報自体がお金になる。その一方、手軽に情報が享受できる分、本当に面白いものが少なくなったのも事実だ。ではそんな時、どんな情報を伝えていくのか。服だけじゃなく、美と健康の商材が大きな価値を持ち始めている。この新たな分野を積極的に開拓したい。もちろんそれらの商材の伝え方も、オンラインとオフラインを超えたやり方になる。

WWD:つまり、ビューティの扱いを増やしてECも強化する?

七宮:そうだ。ビューティはこれまでも「フィンギー(THE FINGGY)」というブランドを扱っていたが、もっと拡大したい。もちろん何でもいいわけではなく、最高級の品質を保つブランドに限定していく。ECについても、まだ発表はできないがいろいろと考えていることがある。その他、洋服のインポートも人気のテイストは強化していく。メンズは「ヤコブ コーエン(JACOB COHEN)」「ムーレー(MOORER)」など強い特徴を持つ上品なブランドが人気だ。このカテゴリーでいくつか交渉しているブランドがある。ウィメンズは本来コロネットが得意とするゾーン。ラグジュアリーなデザイナーズという会社の新たな顔となるブランドと、サステナビリティという新たな価値観を持つブランドの話を進めている。

WWD:この状況でも、かなりの攻めの姿勢だ。

七宮:これらはあくまでセカンドステップだ。この危機を乗り越えるために、まずは“削る”“防ぐ”をとにかく進める。秋は新商品の仕入れを若干抑制し、身軽にする。減らすという意識ではなく、過剰な供給はすべきでないという判断だ。そして、厳選したものを着実に売っていく。6月は、セールを前倒したから悪くなかった。次の焦点は秋の売り場の鮮度をいかに保つかにある。

WWD:コロナを機にビジネスの考え方は変わったか?

七宮:一時は海外ブランドがジャパン社を作り、自分たちで運営する流れがあった。しかし、ローカルのパートナーやリスク分散のためのラインが必要だという考えが再浮上し、インポートビジネスのチャンスが拡大しているように感じる。そのほか、卸が主軸のビジネス構造が、われわれにとっては適当なのではと考えるようになった。これまで、ブランドのアライアンスを高めるためのフィジカルストアをどんどんつくる時代が続いていた。しかし、コロナによってそれが一気にリスクとして表面化した。リテールの比率を高めれば高めるほどリスクが高まり、アメリカではこのブランディングがすでに崩壊している。われわれの現在の売上比率は卸が60%、直営で40%。アフターコロナでもこれをキープしていきたい。

WWD:とはいえ、卸もなかなか厳しいご時世だ。

七宮:もちろん商売自体は厳しい。しかし、特に地方の専門店には、コンセプトや志を貫き、「ウチはこうだから、これを扱うんだ」という熱量があるお客さまも多い。そんなお店と一緒に新たなブランドを育て、ホールセールを盛り上げていくことは可能だと思っている。

WWD:ところで、ご自身がファッションに目覚めたきっかけは?

七宮:子どものころからずっと洋服が好きだった。小学6年〜中学1年のころは、原宿の「ラフォーレ(LAFORET)」の裏に復活した「ヴァン(VAN)」という店に電車で通い、ボタンダウンやチノパンといったアイビースタイルに触れた。中学から高校まではDCブーム全盛期。「メンズビギ(MEN’S BIGI)」のスタジャンを目指してマルイに並んだし、渋谷の「バックドロップ(BACK DROP)」でアメカジやメジャーリーグ、NBA関連のウエアに親しんだ。大学では「バナナ リパブリック(BANANA REPUBLIC)」や「リーバイス(LEVI'S)」「ハンティングワールド(HUNTING WORLD)」などが支持され、インポートブランドへの熱がどんどん高くなった。特に好きだったのは「アルマーニ(ARMANI)」。「このブランドってどんな会社がやっているんだろう」と興味を持ったのが、伊藤忠商事入社のきっかけだった。

WWD:改めてファッションビジネスの面白さは?

七宮:ミーハーであることが仕事につながることだ。ミーハーということは、世の中の流れに敏感であること。服もコスメも音楽もカルチャーも、最先端のものを知っていたいという気持ちがある。全社員総会でも「究極のミーハーになり、半歩先を見て欲しい」と伝えた。「こんな面白いブランドがあるんだ」「こんなアイテムがあるんだ」という発見が、ファッションビジネスの第一歩となる。そのミーハー心を忘れず、会社一丸となって成長していきたい。