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新型コロナで悲観はやめよう、自信を持とう

 悲観するのはやめよう。こんな状況でも、ファッションとビューティは終わっていない。あるイタリアンブランドは3月20日からの3連休「トラフィックはまだまだ少ないが、顧客の来店は多かった」という。伊勢丹新宿本店は、世の中が自粛ムードまっただ中の3月上旬にビューティの催事を開催。感染拡大予防への配慮も欠かさなかったイベントは、予算比6%増で終了した。担当バイヤーは数字に安堵しつつ、「お客さまのビューティへの熱意を感じた」と消えていなかった購買意欲に喜んでいる。私たちが提供する商品やサービスは、こんなときでも幸せを提供できる宝物なのだ。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

 知らないからと言って、恐れるのはやめよう。新型コロナウイルスについては、知らなくて当たり前。だから世界は苦しみ、戦っているのだ。未知だから、正解はウェブの世界にだって存在しない。ウェブだけに依存せず、情報源を選びながら、話し、考えよう。デジタルの編集長ではあるが、今回ばかりはSNSから離れたくなっている。私には、ウイルスの感染以上にネガティブムードのまん延が恐ろしい。私事だが3月上旬、感染者と同じ日に同じジムに通ったがために、メディアが「濃厚接触者1406人」と報じた1人に属してしまった。幸い健康観察期間は無事に終了したが、期間中に時々ジムと、そのジムが入店する商業施設の名前でSNSを検索すると、全くの誤報とネガティブツイートがあふれ出る。「横浜オワタ……」「(営業を続けた商業施設と、2週間後に再開したジムに対して)これ以上コロナをバラ巻かないで」。感染症とSNSは、相性が良すぎるからこそタチが悪い。

 気を強く持とう。多くの死者はもちろん、工場閉鎖や外出禁止など最も過酷な犠牲を強いられているイタリアの「ヴァレクストラ」や「セルジオ ロッシ」のCEOから、御年83歳のコシノヒロコ先生まで、この1週間で話を聞いた人々は、状況が好転する“いつか”を信じ、今できることを着実にこなすことで歩みを止めない意味を説く。私たちが後ろ向きでどうするのだ?今週号で特集した東京のデザイナー、春にイベントやポップアップを計画していたビューティブランドは、メガプランの中止や延期に落胆せず「じゃあ、今できることはなんだろう?」と考えている。取材して知る限りでは、4月中旬は、リアルの代替手段であるデジタルイベントがラッシュの予感だ。秋には早くも例年以上のイベントが計画され、すでに会場の争奪戦が始まっている。ちなみに「WWDジャパン」も4月17日には、秋に延期したトレンドセミナーの代替手段であり、発表の機会を失ったデザイナーやビューティブランドが新作を見せる場であり、せっかくならエンドユーザーさえファッションやビューティの楽しさを感じ取ってくれるかもしれないデジタル番組の配信を検討している。

 将来を妄想しよう。未知の病が既知の存在となってコントロールできるようになったとき、私たちの社会、そして産業は、きっと大きく変わっているハズだ。今を見つめ、未来を予想し、私たちの将来をワクワク妄想・空想しよう。当たろうが、外れようが構わない。妄想した人間こそ、新たな未来を好意的に迎え、スタートダッシュできるハズだ。私は、鎖国さながらに国境を封鎖する一国主義的抑え込みの反動からインクルージョン(包摂・包括性)とダイバーシティー(多様性)の流れはますます加速すると思っている。危機を乗り越えた暁のイタリアは、復活するだろう。“同情票”じゃない。こんなときだからこそ世界の人々が価値を再認識した家族愛、地縁、互助、そして自然への感謝。それらの全ては、イタリアの礎だ。一方でランウエイショーを頂点としてきたリアルイベントは、過渡期を迎える。テレワークで加速するデジタル・トランスフォーメーションが新たなテクノロジーを生み出した暁には、存在意義すら問われるようになるかもしれない。情報を選別できずに右往左往する人と、取捨選択しながら自分らしく生きる人の違いは、この一件で一層明らかになった。残念ではあるが、あらゆるディバイドは拡大する。そのどちらを、どう狙うか?そんな思考回路は、ビジネスの成否を分ける。間違いないのは、いよいよ「生活を豊かにするブランド」だけが生き残ることだ。世界の76億人が、程度の差こそあれ、一斉にストレスを感じた出来事は前代未聞、もしくは第2次世界大戦以来だろう。戦後「ディオール」は、到来する豊かな生活の片鱗をニュールックで示したからこそ、今なお君臨している。同様に新たな時代の新しい豊かな生活を夢見せられるブランド・産業だけが勝ち残る。

 最後に、ちゃんと言おう。感染拡大を防ぐことは大事だが、ビジネスを続けることも同じように大事だ。だから私たちは、自信を持って言うべきだ。「ファッションとビューティを売っています。不要不急の商材かもしれません。それでも、待っている人が大勢います。価値があるのです」と。


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