集英社は2012年にウェブ施策として女性誌ポータルサイト「ハッピー プラス(HAPPY PLUS)」をローンチするなど、ウェブ事業に注力してきた。今年、同社が持つ各媒体ウェブサイトのプラットフォームとして、新たに「ハッピー プラス」を確立すべく、次のステップへ動き出した。まずはシステムの内製化と各ウェブサイトの大幅な改装をスタート。今後、同社のウェブ事業が目指す未来について、ウェブ事業を統括する川島敦子ブランド事業部部長に聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):ウェブ事業が大きく変わろうとしているが、具体的なプランは?
川島敦子ブランド事業部部長(以下、川島):「ハッピー プラス」を各媒体ウェブサイト、ECサイトのプラットフォームとして確立し、利便性を向上させます。そのためにはまずウェブ環境の整備が必要。システムを全て内製化すべく、1月にウェブ専門の子会社プロジェクト8を設立しました。内製化によりシステム施策や改修が格段にスピードアップし、コストダウンも可能に。これまでにウェブサイトを更新するためのコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)を自社製作するとともに、すでに「デイリー モア」「マキア オンライン」のリニューアルを行いました。3月にリニューアルした「デイリー モア」では、本誌編集者自らがコンテンツアップする初めてのチャレンジにより、PV(ページ閲覧数)前月比130%、UU(ユニークユーザー)数180%と大きく伸張しました。現在は「バイラ」のリニューアルを検討中です。全ての媒体が異なるコンテンツを持ち、しっかりすみ分けを意識しつつ、16年中に全サイトのリニューアルをし、まずは月間500万UU、1億PVを目指します。
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コラム1 増えるソリューション事業
左:「グラムールセールス MAG」/ 右:資生堂「きらめきMs.NEWS」
集英社は自社媒体に加え、ソリューション事業が手厚い。「SPUR.JP」がアライアンスを組む「グラムールセールス」の購入者用冊子や日本郵便の社員用冊子、資生堂シニア顧客向けタブロイド「きらめきMs.NEWS」など、幅広い企業冊子の制作をしている。8月からは書店販売していた「ディズニースタイル」を「フラッグショップ」最優良顧客6万人に配布するためのフリーマガジンに変更し、部数保証による広告収益を確保する。
WWD:「フラッグショップ」「ミラベラ」などEC事業も好調だが、その理由は?
川島:15年5月期決算では、EC事業の受注額が約50億円、前年比125%を見込んでいます。雑誌はもともと、掲載商品を見た読者を買いたい気持ちにさせ、店に足を運ばせ、洋服やコスメを買ってもらうことが得意なツール。集英社もそのサイクル作りが得意なので、送客先が自社EC店舗に変わっただけのこと。「通勤時間でも利用ができる」「実店舗にない色・サイズがある」「ポイントがたまる」などのメリットに魅力を感じ、ECを利用する人は多い。そこで、雑誌のブランド力やコラボ商品などここでしか買えないアイテムの希少性、企業としての信頼感などを強みにEC店舗への送客がうまくいったのだと思います。ちなみに今日着ているドレスも「ミラベラ」で購入した「ザ ロウ」なんです。
WWD:ウェブコンテンツをマネタイズするにあたって重要なことは?
川島:UU数やSNSフォロワー数など、多くのオーディエンスを獲得することです。例えばLINEとコラボアカウントを出したのも、「セブンティーン」「ノンノ」が出版業界公式アカウントの友だち数で1、2位(それぞれ約114万人、107万人、15年4月末現在)だったことに広告主が注目し、何らかの広告施策が打てないかとLINEに打診したことがきっかけでした。最近は「アンテナ」などのキュレーションメディア全盛期で、コンテンツを渡すだけの出版社が多いですが、フォロワー数を多く有する自社コンテンツのプラットフォームを確立することこそが、さらなるマネタイズにつながるはずです。今後は米ABC協会が公表している「ユニバース(発行部数にアプリのダウンロード数やウェブのPV数、SNS総リーチなどの数を合算した指標)」が雑誌のブランド価値を測るものさしになるはず。紙媒体の販売部数だけでなく、ウェブも含めたトータルでの価値を上げることが必須です。
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コラム2 ウェブに特化した新会社プロジェクト8を設立
新会社プロジェクト8のウェブサイト
集英社は1月、ウェブに特化した人材を確保するため、100%出資の関連子会社プロジェクト8を設立した。すでに外部から集まったエンジニアを中心として、システムの内製化に着手。各ウェブサイトのリニューアルや根幹となる基盤システムの制作に注力している。今後は同社の技術を強みに、外注のウェブ制作なども請け負っていきたいという。なお、今後のウェブ事業のさらなる発展に向けて、ウェブ・プロデューサーやシステム・エンジニア、MD、バイヤーなど、随時募集中だ。(
www.project8.co.jp )
WWD:ここ1年間で反響の大きかった企画・コンテンツは?
川島:「SPUR.JP」と「セリーヌ」のスペシャルコンテンツ「Incroyable Histoire de CELINE」は好評でした。世界中を探してもここでしか見られない写真や海外の「セリーヌ」オフィススタッフのスナップ、集英社の編集者が雑誌の垣根を越えて自分の言葉で語る「セリーヌ」など、特別感・独自性が功を奏し、延べ13万人のアクセスがありました。また、「SPUR.JP」では本誌カバーで登場した東方神起の3回の動画配信により、80万PVを獲得しました。
WWD:ウェブとリアルが連動したイベントなど、クロスメディアで成果を上げた事例は?
川島:「マキア」では年2回、ブロガーと読者を招待した大型美容イベントを開催しています。美容が大好きな美女ブロガーと「マキア オンライン」会員計300人をウェブで集め、イベントを実施し、その場で得た情報を拡散します。年ごとに来場希望者も増え、広告収入とPV両方を伸ばしています。また、ECサイト「フラッグショップ」ではエクラの通販サイト「エクラ・プレミアム」が過去4回、期間限定で伊勢丹新宿本店と日本橋三越本店に実店舗を出店。4階イベントスペースでの売り上げを更新するなど、両館への新客誘導に成功しました。
WWD:ウェブ広告収益、ECの販売収益以外で収益を得られるニュービジネスはあるか?
川島:最大の強みは「ハッピー プラス」「フラッグショップ」が抱える約112万人のユーザー・データベースを用いたビジネスですね。また、今後は他企業のCMS構築やアプリ開発、ソリューション事業なども手掛けていきたいです。
川島敦子
1957年7月15日生まれ。蟹座、B型。上智大学卒業後、81年集英社入社。「モア」編集部配属になり、5年間在籍。86年広告部に異動。女性広告営業の草分けになり、2012年広告部部長代理。14年ブランド事業部配属になり、15年3月から現職
コラム3 編集長行きつけのお店は?
米村(銀座)
漆のカウンターで懐石コース料理がいただける料亭内のカウンター個室。おいしいもの好きな人をぜひ連れて行ってほしいお店です。
焼肉三幸園(神保町)
校了明けなど、打ち上げにもってこいのお店です。仕事終了は遅い時間ですが、それでもここのお肉が食べたくなります!