ファッション

“服を着倒してきた大人”、萩原輝美が「テン」で実践するアップサイクル 「もう道楽の服作りとは言わせない!」

 「テン(TEN.)」は、「ギンザ・コマツ(GINZA KOMATSU)」のバイヤーや「デザインワークス(DESIGN WORKS)」のディレクターを務めてきた萩原輝美さんがプロデュースするウィメンズブランド。年齢を重ねる中で、自身が納得できる上質でエレガントな日常着がない、という思いから2018年春夏にスタートし、ギンザシックス内の編集売り場「シジェーム ギンザ(SIXIEME GINZA)」や地方の専門店などで同世代の女性をつかんでいる。20-21年秋冬物で意識したのは“アップサイクル”。サステナビリティの意識は今やファッションビジネスで欠かせない要素になっているが、小規模なブランドが取り組もうとするとどこから手をつけていいかが見えないもの。「テン」は小規模であることを逆手に取って、地方の織物工場などに眠っている上質素材を使い、限られた数のアイテムを売り切れ御免の形で販売する。

 「生地の在庫がなく、数枚しか作れないような商品はかつてはバイヤーに敬遠されたけど、オーダーメードのデザイナーだった叔母が遺した特別なレース生地で20年春夏に参考商品としてスカートを作ったら、地方の専門店バイヤーに『1着しかなくてもいいからぜひ買いたい』と言ってもらえた」と萩原さん。そこで今季はカシミヤ100%のダブルフェースを少量抱えていた生地屋に掛け合い、ガウンコート(28万円)を3着だけ作成。それにも展示会ですぐにオーダーが入った。「限定数しか作れないということは、その店でしか買えないということ。今の時代は逆にそれがいいのかも。少量しか在庫がない生地は、ある程度以上の規模のブランドだと買うわけにはいかない。だから、倉庫に眠っている生地はこうでもしないと使い道がない」。そのように限定数量だけ作るアイテムは、タグも「テン クチュール(TEN COUTURE)」に変えた。

 デニムやツイードのジャケットに飾ったブレード(テープ飾り)も、工場の倉庫から探しだしたものだ。オリジナルのブレードを作ろうと素材展で出合った工場に掛け合ったところ、「オリジナルを作るなんて、数百メートル単位でしか請けられない」と断られた。そこで諦めず、栃木にある工場まで出掛けていって、倉庫に少量ずつ残っていた中からイメージに近いブレードを探し出したという。

 こういった、地方の工場からお宝生地を見つけ出すといった話は、今までも駆け出しの若手デザイナーなどからは聞いたことがある。「テン」もまだ3年目で駆け出しと言えば駆け出しだが、いつ会ってもエレガントな業界のご意見番、萩原さんがそれを実践しているということには驚く人も多いはず。服作りが本業ではないため、今までは「『道楽で服を作っているんでしょ』とからかわれることもあったけど、地方の工場に生地を探しにいくくらい本気でやっているし、モノ作りは楽しい」と笑う。

 20年春夏から企画しているデニムのプリーツスカートも、そのように自身で九州の加工場を訪ねて思いを伝え、生産につなげたアイテム。コットン100%のデニムには通常プリーツ加工がかからないが、その工場は特殊技術によって加工ができるため、ラグジュアリーブランドの生産も行っているという。

 小さく始めたブランドだが、ビジネス的にも転機がやってきた。20-21年秋冬からは、インポーターのサン・フレールが営業代行を務めており、展示会を訪れるバイヤーの数が増えている。サン・フレールといえば、「レ・コパン(LES COPAINS)」など、マダム層に人気のブランドを中心に輸入代理している会社。国内ブランドを扱うのはこれが初めてだ。「当社のお客さまである専門店の客層は50~60代以上がメイン。大人の上質な日常着を求めているという点で『テン』と重なる」と加島勉サン・フレール社長は話す。

 21年春夏以降には、サン・フレールが輸入代理を務めているイタリアのニットブランド「カングラ(KANGRA)」で、「テン」のニットウエアを数型生産することも想定しているという。「そうなると、『テン』もいわゆるドメスティックブランド、という感じだけではなくなって、より面白くなる」と加島社長。同社はイタリアブランドを中心に扱うが、イタリアは新型コロナウイルスの感染拡大で工場の操業停止なども続いており、ビジネスが読めない部分もある。「(新型コロナの問題に限らず)今後も市場の状況はどんどん変わっていくので、これまでやったことがない領域も含め、いろいろとチャレンジしてみることが大事」という考えから、「テン」との取り組みに至ったという。

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