ファッション

新ブランド「アイン アモア」が上陸 業界歴約30年、ジル・サンダー氏から学んだミニマルの真髄

PROFILE: ソフィア・ルイス/「アイン アモア」クリエイティブ・ディレクター

ソフィア・ルイス/「アイン アモア」クリエイティブ・ディレクター
PROFILE: ウェールズ出身。セントラル・セント・マーチンズ卒業後、1990年代に「ジル サンダー」のデザインチームに所属。ジル・サンダー本人のもとで、素材、カッティング、造形、そしてミニマルな美意識を実地で培う。その後、ドイツ・ハンブルクを拠点とするファッションブランド「クローズド」のデザインチームに所属。2026-27年秋冬シーズンに「アイン アモア」を始動 PHOTO:YOW TAKAHASHI

2026-27年秋冬シーズンに始動した新ブランド「アイン アモア(AIN AMOR)」は、豊田貿易を通じて2027年春夏シーズンから日本での本格展開をスタートする。デザイナーのソフィア・ルイス(Sophia Lewis)は、1990年代に「ジル サンダー(JIL SANDER)」で経験を積み、ジル・サンダー本人のもとでミニマリズムの哲学を学んだ。「アイン アモア」では、業界歴約30年のキャリアの中で培った素材への審美眼とミニマルな美意識を軸にしたワードローブを提案する。

ブランド名は、アラビア語で「目」を意味する“Ain”と、「愛」を想起させる“Amor”を組み合わせたもの。さらにドイツ語で「ひとつ」を意味する“Ein”の響きを重ね、「見ること」と「愛すること」、そして「愛でひとつになる」という意味を込めた。イタリア・プラトやミラノを中心に築いたサプライヤーネットワークを背景に、上質な素材とモノ作りを追求する。価格帯は、コート13万〜18万円、ニット5万2000〜6万5000円、ジャケット8万5000〜16万円、パンツ4万5000〜8万9000円など。

ルイスは、なぜ今、自身のブランドを立ち上げるのか。「アイン アモア」で実践するミニマリズムの考え方と、その原点となったジル・サンダー氏からの学び、過剰消費が続くファッション市場で目指す服作りについて聞いた。

ミニマルとは、
問い、見極めること

WWD:セントラル・セント・マーチンズ卒業後は、「ジル サンダー」に入った。

ソフィア・ルイス(以下、ルイス):そう。1990年代の終わりだった。あの頃はみんなが「ジル サンダー」を見ていたと言っても過言ではなかったと思う。私にとって「ジル サンダー」には、ほかのブランドとは違う知性があった。キャンペーンひとつとってもそう。服を見せること以上に深いメッセージが込められていた。

例えば、あるキャンペーンでは女性が男性のような仕草でセーターを脱いでいた。それは女性とは何か、男性とは何か、私たちは自分自身をどう表現するのかというアイデンティティーに対する問いを投げかけていた。そういうものに強くひかれて、卒業後はここで働きたいと強く思っていた。幸運にも入社でき、当時のチームはとても小さかったから本当に多くのことを学んだ。

WWD:「ジル サンダー」といえばミニマリズムを象徴するブランドだ。ジル・サンダー氏から学んだ“ミニマル”の本質とは?

ルイス:問い続けること。彼女はデザインの過程で、「今の時代に必要か?」「これは顧客にとって正しいのか?」とあらゆることを問い直していた。例えば1cm当たりのステッチ数といったことまで「これで本当に正しいのか」と考え抜く。“ミニマル”というと、削ぎ落とすことだと思われがちだけど、それだけではない。「ここに意外な要素を足すべきではないか」と問うことでもある。

私が働いていた当時の思い出で、「WWD」の1999年10月1日号で、私が開発に携わったプリントを使ったルックが表紙に使われたことがある。このプリントを巡ってもチームで、「誰にとって必要なのか」「なぜ必要なのか」をとことん議論したのを覚えている。

あの頃の経験は、衣服そのものよりももっと深い次元のことを教わったと思う。それこそが、私がファッションだと考えているもの。ファッションは自己表現であり、自分を表現するということは、自分を世界にどう見せたいのかを問いかけることでもあると思う。

WWD:問い続けた先に生まれるデザインを「アイン アモア」でも実践している。

ルイス:そう。もう一つの観点として、ミニマリズムはサステナビリティとも強くつながっている。若い世代を見ていると、「そんなに多くのものはいらない」と考える人が増えている。買うなら長く使えるもの、品質のいいものを選びたい、と。私の娘の世代を見ていてもそう感じる。昨年、ジルに会ったとき、私は「ジル サンダー」で働いていた頃に買った靴を履いていた。20年以上持っている靴だ。私にとって、それはサステナブルなこと。質のいいものを買って、長く使う。組み合わせやすいものを持つことで、ワードローブ自体もミニマルにできる。

過剰生産・過剰消費の時代に
届ける服の価値

WWD:長いキャリアを経て、なぜ今、自分のブランドを立ち上げた?

ルイス:実は、かなり突然の話だった。「ジル サンダー」を離れた後は、ハンブルグに残って別のブランドの仕事をしていたのだけど、一度ファッションから離れて、仕事を減らして、自分が興味を持てるプロジェクトだけをやろうと思っていた。でも、ファッション業界に長くいると、じっとしているということができなくなるの(笑)ブランドの話が持ち上がったときに、「これは絶対にやるべきだ」と直感的に感じた。適切な生産背景があり、素晴らしいセールスチームがいて、この人たちとなら良い形で実現できると思ったから。

WWD:競争の激しい今のファッション市場で、「アイン アモア」はどんな位置を目指す?

ルイス:私たちが大切にしているスローガンに「Wear Your Truth(自分の真実をまとう)」という言葉がある。誰もが望むままに、自分自身を表現できる服を提案したいということ。そして、何年も長く着られる服であること。できる限り「オネストなプロダクト」であることも重要。高い品質を保ちながら、価格も誠実でありたい。

WWD:タイムレスな服を作る一方で、毎シーズン新鮮さも求められる。そのバランスはどう取る?

ルイス:それこそ、ジルから学んだ「問う力」の出番。「今シーズンにとって何が新鮮なのか」と考え抜く。時代を問い、顧客が誰なのか、今何に興味を持っているのかを考える。そこから少しストーリーを加えていく。

WWD:ブランドの指針として、過剰生産を避けることも掲げている。

ルイス:これは、私がいつも考えているテーマの一つ。服は生活必需品。食べることと同じように、私たちは服を着る。私自身、心地よい服を着ていると「今日も世界と向き合える」と思える。つまり、ファッションには社会の中できちんと役割がある。

でも、過剰生産やファストファッションについては問い直さなければいけない。価格が手頃な服そのものが悪いわけではない。買った人がきちんと着て、使い続けるのであればいい。問題は過剰消費だと思う。一着の服を作るためにも、生地を作る人をはじめ、多くの人の手間がかかっている。決して、簡単に捨てられるものではないはずなのにそうした服の価値を忘れてしまっている。服を過剰に生産し、消費しているその感覚を疑問に思わなければいけないと思う。

だからこそ、「アイン アモア」が目指すのは、汎用性があり、何度も着られる毎日のための服。着る人が、自信を持ちながら心地よくいられる服。そして、愛着を持って長く着続けてもらえるものを届けていきたい。

WWD:今後は日本市場でも取り扱いが始まる。

ルイス:日本のテイストは、自分自身の好みに近いと感じている。東京に来ると、服を見ることも買い物をすることも本当に面白い。年齢についても、「アイン アモア」はかなり幅広い人に着てもらえると思う。日本で店を見ていても、「ここに置かれていても自然だな」と感じる場所がいくつもあった。これからさまざまな店と取り組めることが楽しみ。

「アイン アモア」公式サイト

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