ファッション

「あえて完成形を作らない」 セレクトショップ「スタジオラボ404ドットコム」が心斎橋へ広げる新たな可能性

PROFILE: モネ/「スタジオラボ404ドットコム」オーナー兼ディレクター

PROFILE: 1994年、兵庫県生まれ。ニューヨークでSNS運用やマーケティング、ショールーム業務などを経験後、2021年に東京・祐天寺でセレクトショップ「スタジオラボ404ドットコム」を創業。デッドストックアイテムや国内未上陸ブランド、ジュエリーなどを扱いながら、コミュニティーとしての店作りにも取り組む。26年4月には大阪・心斎橋パルコに新店舗をオープンした PHOTO:MIYU TERASAWA

東京・祐天寺のセレクトショップ「スタジオラボ404ドットコム(studiolab404.com)」(以下、404)が、2026年4月に大阪・心斎橋パルコ地下1階に新店舗をオープンした。21年の開業以来、デッドストックアイテムや日本未上陸ブランド、ジュエリーなどを扱いながら、コミュニティーとしても存在感を高めてきた同店。なぜ今、大阪への進出を決めたのか。オーナーでありディレクターのモネに、店作りの考え方と自身のキャリアについて聞いた。

曖昧さが、人を引きつける

21年に店を始めた当初は、日本ではまだ知られていないブランドを紹介するセレクトショップという側面が強かったとモネは振り返る。展示会を開いたり、ファッションを言語化している人たちと交流したりすることが多く、お客に背景を説明しながら購入してもらう過程に、大きな喜びを感じていたそうだ。

その後、ポップアップなどを通じて店の外へ発信する機会が増え、渋谷パルコやニュウマン新宿などにも出店するようになる。一方で「自分たちは何屋なのか」と迷う時期もあった。「何かに特化していないと、お客さんに足を運んでもらえないのではないか」。そんな不安もあったとモネは打ち明ける。

試行錯誤を重ねるなかで、見えてきたのはジェネラルな立ち位置だ。「服を買いに来る人もいれば、会話をしに来る人もいる。尖った部分はありながらも、『その存在そのもの』が好きな人たちが集まる場所になっている気がします」。彼女にとっては、「常に変化し続ける場所」。扱う物も、人も、テイストも変わり続け、それは結局、誰かの手によって変化していくものなのだという。

「『あの時期はこうだった』と振り返ることはできても、自分自身が常に新しいものを探してしまうため、同じ場所にとどまることができない。大阪への出店もそうですが、むしろ真逆のことをやりたくなる性格なんです。成長はゆっくりでも、あえていばらの道を選びたくなる。新しいものを作っては壊し、また作る。その繰り返しなんです」。

年齢を重ねるにつれて、自分の興味や価値観も変わっていくことに気付いた。「お客さんも同じように年を重ね、好きなものは変わっていきます。だからこそ飽きさせないよう、アップデートを続けたいという思いがあります」。

心斎橋パルコへの出店は「新しい風」を吹かせる決断だった

今年4月、心斎橋パルコへ出店した。大阪を選んだ理由として、生まれ故郷である関西への思いと、新しい挑戦への期待を挙げる。雑多で活気のある街の雰囲気が、自身の感性を育んだニューヨークとどこか重なるとモネは語る。

きっかけは、祐天寺店をオープンして2年ほどたったころ、心斎橋パルコの営業担当者が来店し「出店しませんか」と声を掛けたことだった。その後ポップアップを2回開催し、さらに常設店の話が持ち上がる。

「当時はまだスタッフや運営体制が整っておらず実現には至りませんでしたが、25年ごろには事業の規模感も見えてきて、『今ならできるかもしれない』と思えたんです。会社として大きな決断をすると、新しい風が吹く気がします。祐天寺店、心斎橋店、オンラインと販路が広がれば、提案できる商品の幅も広がり、新しい地域のお客さんの反応を見ることもできる。それが出店の決め手になりましたね」。

祐天寺店と心斎橋店の違いを、「祐天寺が『平日』だとしたら、心斎橋は『休日』のようなイメージ」と表現する。無機質な空間で知られる祐天寺店に対し、心斎橋店は一転、木材を多用した温かみのある内装に。「全く違う店舗を作るなら、木を使いたいと思っていたんです」。その一言通り、店内には木のぬくもりが広がっている。

商品構成も祐天寺店とは少し異なる。大阪の客層は祐天寺店よりも華やかなアイテムへの反応がよく、店頭でのコミュニケーションを重ねる中で、地域ごとの感覚の違いも見えてきたという。そのため、祐天寺店の世界観をそのまま持ち込むのではなく、土地の空気感も取り入れながら商品を編集している。インバウンド需要も追い風となり、特にジュエリーは好調だ。

商業施設への出店には葛藤もあった。「個店なのに商業施設に入るというのは、一見すると矛盾しているようにも見えます。ただ、関西で住宅街の一室で店をやるなら、祐天寺でやっていることと変わらない。まだ知らない人たちに届けたいのであれば、形態そのものを変える必要がありましたね」。

実際に出店してみると、想像以上に幅広い客層が商品を手に取り、これまで接点のなかった層との出会いが生まれた。商業施設ならではの環境も、新たな気付きを与えてくれているという。「他業態のお店も多いので、日々刺激を受けています。『404』らしさを大切にしながらも、新しい挑戦ができる場所だと感じています」。

ニューヨークで培った視点が原点

モネのキャリアの原点は、ニューヨークで働いていた頃にある。当初はローカルのセレクトショップで働くことを希望していたが、オーナーが一人で運営する店だったためスタッフ募集はしていなかった。それでも交流を続けるなかで縁が広がり、現地のファッション企業でSNS運用やマーケティング、EC業務を担当することになった。

その後はショールーム業務に携わり、イベント企画やブランドとのコラボレーション提案、店舗リサーチなどを経験。並行してファッション誌の撮影現場を手伝い、インディペンデントなショールームやビンテージショップにも足を運ぶ日々を送った。大手企業から個人経営のショップまで、多様な現場を行き来するなかで、ブランドの規模ではなく、「誰が、どんな思いで作っているのか」に引かれるようになったという。

「ニューヨークでは、自分たちの手でゼロから価値を生み出している人が本当にたくさんいました。大きな会社だからできることではなく、小さくても面白いことをやっている人たちがたくさんいて。その姿を見て、『こういう働き方や店作りがしたい』と思うようになったんです」。

そうした経験は、「404」の店作りにも色濃く反映されている。単に商品を並べて販売するのではなく、人やカルチャーが交わる場所をつくりたいという思いは、ニューヨークで出会ったクリエイターたちから学んだ価値観が土台になっている。

店の在り方を問い続けるモネに、これからの「404」の姿を尋ねた。「わざわざ足を運びたくなる理由がたくさんある場所。商品構成でも、スタッフでも、空間でもいい。その積み重ねが結果的に、この店らしさになっていけばいいですね」。

今後は衣食住に関わる分野やインテリア、アートなどにも関心があるそうだ。「特にジュエリーを好きな人たちが持つカルチャーにも興味があり、業種を横断するような挑戦もしていきたいです。情報があふれる今の時代、単に物を売るだけでは難しい。だからこそ、どう見せるか、どう語るかが重要になっています。変化し続けながら、自分たちらしい方法を探していきたいです」。

完成形を目指す場所ではない。扱うものも、人も、空間も、その時々で変わり続ける。「常に新しいものを作っては壊す」という言葉は、そのままこの店の在り方そのものなのだろう。心斎橋という新しい舞台を得て、また次の姿へと変わっていく。

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