大阪府泉佐野市と交通、商業施設、宿泊施設、飲食店事業、地元経済団体を含む計16の民間企業・団体が共同でりんくうエリアの「まちづくりビジョンマップ」を策定した。6月18日開催の発表会で泉佐野市に提案し、市の公認を得た。
泉佐野市、泉南市、田尻町の2市1町にまたがるりんくうタウンは、関西国際空港の対岸に位置し、今年9月に街開き30周年を迎える。近年は宿泊施設の整備が進み、泉佐野市内の宿泊施設数はコロナ禍前の19年と比較して65施設から100施設に増加。客室数も3600室から4800室へと拡大した。泉州エリアの延べ宿泊者数は大阪市域に次ぐ年間約255万人泊(24年実績)で、熱海や別府に並ぶ水準だ。りんくうタウン駅の年間乗降者数も19年度比で約123%と高い伸び率で推移する。インバウンドを含む来訪需要の回復、拡大が続く。
一方で事業者間の連携ができておらず、エリア全体の一体感や回遊性には課題が残っていた。関西国際空港とつなぐ鉄道をはさんで南北に長く広い立地に加え、移動手段が限られ、駐車料金も施設ごとに発生するなど施設間を回遊しにくい環境もエリアの活性化を阻んでいた。
りんくうプレミアム・アウトレット(運営:三菱地所・サイモン)支配人の平岡杏奈氏は「「アウトレットでの滞在時間が長く、エリア全体の積極的な回遊には至っていない印象」と指摘する。泉州野菜を使った食品の製造販売やカレー店、アパレル事業を展開するNSW社長の西出喜代彦氏も「新しい事業者や取組は増えてきている。エリア活性化の方向性は意識しているが、一事業者ができることは限られる」と話す。こうした課題意識を共有する16の企業・団体が、30周年を機に結集したのが今回のプロジェクトだ。
親しみやすいイラストに落とし込む
ビジョンマップは、りんくうタウンの北エリアにあたる「泉佐野市りんくうエリア」活性化の第一歩として、将来のまちの姿や目標をビジュアル化したものだ。官民一体となったまちづくりの共通の羅針盤として機能することをめざす。作成にあたっては、まず現状を整理したあと、業界の垣根を超えた14事業者27人がワークショップに参加した。複数のグループに分かれて議論し、「海や夕日などのロケーションを活用した施策」「移動手段の開発やまちを巡りたくなる動機づくり」などのアイデアを出し合った。それをもとに泉佐野市との協議を経て、ビジョンマップを完成させた。
コンセプトは「おもろそうやしやってみタウン!」。新しいことに挑戦し続けてきた街らしく、遊び心あふれる挑戦を後押しする掛け声として設定された。具体的なアクションプランとしては、地域の特産品などを生かした共創型イベント「海辺のロングテーブルダイニング」や、まちの回遊を促進する「りんくうスタンプラリー」、新たな体験を生む「おしごとチャレンジツアー」のほか、「街ごとウェディング」「高架下シネマ祭」など計16のアイデアを掲載する。エリア全体を俯瞰しながら体験や過ごし方がイメージできるよう親しみやすいデザインのイラストマップに落とし込んだ。
食や体験を軸にした新たな動き
直近の取り組みとしては、OMO関西空港by星野リゾートが近隣事業者の食材を使い、機内食カートを模した「ご近所おつまみカート」をビアガーデンで展開する。ヤッホーブルーイングは7月23日、「ヤッホーブルーイング大阪醸造所 よなよなビアライズ」を開業する予定。クラフトビールを軸にした体験型施設として地域活性化の新たな核となることをめざす。
同プロジェクトは、よなよなビアライズの工事が終わった昨年12月頃から活動を開始した。地域内での連携やコミュニケーションの困難さを感じたことが立ち上げのきっかけだ。ヤッホーブルーイング大阪醸造所事業責任者の谷篤実氏は「連携があまりなかった事業者が集まって話をし、アイデアを出し合うことが第一歩。お互いの顔が見ながら話し合い、共通の指針を出せたことは大きな成果だ。16の事業者・団体がこれからも手を取り合って歩き続けることが一つのゴール」と語る。
泉佐野市長の千代松大耕氏は「りんくうタウンの伸び悩みが市の財政を苦しめてきた要因でもあった。最近は食や体験を軸とした新たな拠点が誕生するなど新しい動きが生まれている。提示いただいたビジョンマップと市の施策を連携させ、りんくうタウンが国内外に誇れるまちへと発展していくよう尽力していく」と挨拶した。
ビジョンマップで発表されたアイデアは、現時点では実現時期も含めて未定。泉佐野市を含めた参画企業・団体が議論と検討を継続し、有機的に連携することがエリアの活性化につながると期待されている。