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高級化粧品から「シェービング」の道へ シック・ジャパン製品開発トップが語る挑戦

PROFILE: 小澤舞 シック・ジャパン 技術開発本部長

小澤舞 シック・ジャパン 技術開発本部長<br />
PROFILE: (おざわ・まい)東京工業大学大学院修了後、国内大手化粧品会社でスキンケア製剤の処方設計に従事。フランスでの研修・留学を経て、「ディオール」で約14年半、皮膚科学的知見に基づく処方開発・研究を経験。ロングセラーとなった美容液の処方骨格開発や日本における研究所の拡大、成長をけん引した。現職ではこれまでのスキンケアの専門性を生かし、シェービング剤・スキンケア製品の開発、ならびにカミソリ開発の融合を主導している PHOTO : REIKO KONDO

シック・ジャパンの製品開発全般の責任者である小澤舞・技術開発本部長は、高級化粧品ブランド「ディオール(DIOR)」で長年スキンケアの処方・開発を担い、昨年シック・ジャパンにジョインした。「シェービングと高級美容液も、目指すところは同じ」と語る彼女に話を聞いた。

WWD:シック・ジャパンでの職務は?

小澤舞 シック・ジャパン技術開発本部長(以下、小澤):シェーバーやシェービング剤、スキンケア製品まで、処方・開発の責任を担っている。「シック」ブランドは日本市場の売り上げが非常に大きい。シック・ジャパンの技術開発本部には、日本で日本人のために開発した製品を、さらにグローバルにも展開していく「イノベーションハブ」としての役割が求められている。

WWD:高級化粧品からシェービング領域へ挑戦した理由は?

小澤:「ディオール」ではロングセラーとなった美容液の処方骨格を開発し、日本の研究所を拡大・成長させるなど、やりがいのある仕事ができた。一方、「日本発の価値をより主体的に創り、世に届けていく挑戦を、他の道でできないか」という思いも強くなっていった。そんな時、巡り合わせもあって声を掛けてもらったのがシック・ジャパンだった。

後藤(秀夫シック・ジャパン社長 兼 北アジア地域社長)が掲げる「ビューティーグルーミングを通して一人でも多くのお客さまにワクワク感と幸せを感じて頂ける毎日を届ける」というパーパスに、心を動かされた。化粧品とシェービングは一見全く違う畑だが、目指す先は変わらない。私がずっと化粧品作りで大切にしてきた「変身の魔法」を、男性の毎日のルーティンにも届けたいと考えた。

WWD:転職後はどのような学びが?

小澤:女性のメイクやスキンケアと同じように、男性も「毎日のヒゲ剃り」という手間のかかる行為をこなしている。男性たちに話を聞くと、「このメーカーの、この刃でないと」というこだわりがある。一方、製品に対して多少の不便・不満があっても“我慢”している。声を上げないだけで、実は毎日必死に自分の肌と向き合っている「サイレント・マジョリティー」だ。20代から50代までの男性にアンケートを取ると、肌悩みのトップ2に「カミソリ負け」がランクインした。ヒゲを剃るUゾーンは水分量もバリア機能も低く乾燥しやすい一方、シェービングはスキンケアの「ゴールデンタイム」を生み出す。余分な皮脂や古い角質、毛が除去され、スキンケア成分が角質層まで浸透しやすくなる。そこに目を向けたのがトータル・グルーミングケアブランド「プロジスタ」。シックの100年のシェーバー技術と肌サイエンスを融合させ、「シェービング起点」のスキンケア製品の開発に取り組んでいる。

WWD:具体的には?

小澤:導入美容液の“プロジスタ スキンブースター”[医薬部外品](30mL、4950円)は抗炎症成分とエイジングケア成分で肌を柔らかくし、カミソリ負けを根本から抑え込む。また、一般的な化粧品の粒子が角質細胞の隙間(約250nm)よりも大きく不均一であるのに対し、化粧水“プロジスタ コスメティックウォーター”(150mL、3300円)や乳液“プロジスタ ミルキーローション”(75mL、3300円)は、高圧乳化技術を用いてアラントイン、セラミドといった保湿成分を細胞間隙よりも小さい極小カプセル化にし、角質層のすみずみまで保湿成分を浸透させる。

WWD:開発に苦労した製品は?

小澤:特に“プロジスタ シェービングフォーム”[医薬部外品](180g、2200円)。化粧品の研究者時代の私は、「いかに有効成分を肌の奥(角質層)へ浸透させるか」を考えてきた。しかし、シェービング剤に求められるのは全く逆の機能。「剤を肌の上に留め、クッションとなって肌を守り抜く」こと。この設計と洗い流した後の「サッパリ感」の両立が本当に難しく、何度も試作を繰り返した。

WWD:スキンケアとシェーバーを両輪で開発できるのは、シックならではの強みだ。

小澤:「プロジスタ」のシェーバー(刃付きホルダー5478円)は、バーバー(理髪店)から着想した亜鉛ダイカスト素材で作った。絶妙な重みを持たせたショートハンドルで、余計な力を入れずに優しく剃れる。剃り心地や仕上がりにこだわる男性に向け、しっかり深剃りできる「5枚刃」と、肌へのやさしさを追求した「6枚刃」を用意した。社内には、何十年もシェーバーと向き合い続けてきたエキスパートがいる。彼らが「5枚刃はこういう角度で当たるから、フォームの粘度はこれくらいでないと」と主張すれば、化粧品開発の視点を持つ私が「それでは使用感が重すぎる。ポリマーで滑りを加えるべき」と返し、マーケティングチームが「30代男性はこの香りを好みそうだ」とカットインする。こんな具合で、ラボでは常に活発な議論が行われている。

WWD:これからの目標は?

小澤:「使い続けて肌がきれいになる」「持っていてテンションが上がる」。目指している先は、何万円もする高級美容液もシェーバーも同じだ。まずはシェーバーのクオリティーに最も厳しいであろう日本の男性に「これは手放せない」と感じてもらうこと。そして、シック・ジャパン技術開発本部の「イノベーションハブ」としての地位を確立すること。「たかがヒゲ剃り」を、「自分を整え、自信を持てる特別な時間」に変える。私たちシック・ジャパンの目指す、この「ビューティグルーミング」の価値観を世界へ届けていきたい。

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