ファッション
連載 中高生のファッション育

社員の「好き」が作るビームスの企業文化  中高生のファッション育Vol.11

中高生のためのファッション育プロジェクト「フューチャー・ファッション・インスティテュート(FUTURE FASHION INSTITUTE、以下FFi)」は、「ファッション育」を通じて子どもたちの感性を磨き、未来の業界を担う人材やセンスを生かして働く子どもの育成を応援する。展示会への訪問や業界人へのインタビューなどを重ねる中高生のメンバーは、自らの体験をシェアして友人に刺激を提供。FFiはポジティブなループを通して、子どもたちが「未来の自分」を思い描き、夢に一歩近づくことを願う。

今回のFFiは、ビームス(BEAMS)の社員からキャリア選択について学ぶことをテーマにインターンシップを行なった。原宿にある本社を訪れ、日本を代表するセレクトショップで働く人々のキャリアデザインや、多種多様な仕事内容について学んだ。 FFiの大学生メンター、松浦ゆら(明治学院大学2年)がリポートする。

本社があるのはビームス始まりの地・原宿

オフィスにはビームスの商品や歴史を振り返るアーカイブの展示ブースがあるほか、社員のサステナビリティ意識を高めるポスターの掲示など、さまざまな工夫が施されているのが印象的だ。学生の中には学校終わりに直接参加したメンバーもおり、社員の話を直接聞ける機会に目を輝かせながら社内を見学した。

まず学んだのは、企業の歴史と会社概要について。ビームスは1976年にアメリカンライフ ショップ ビームス(American Life Shop BEAMS)として今のビームス原宿の場所に6.5坪の店舗をオープン。これが現在につながるビームスの1号店だ。原宿に本社を置いているのもビームスの始まりの地である原宿を大切にする気持ちの表れだろう。

続いて、主に3つのカテゴリーに分けられたビームスの内勤スタッフの仕事について学んだ。直接的に利益を生み出すフロントオフィス、フロントオフィスを間接的に支えるミドルオフィス、そして会社の運営を支えるバックオフィスだ。それぞれのカテゴリーにはさまざまな部署があるが、今回はその中から3つの部署でスタッフにより、キャリアや仕事内容について話した。

「コト×ヒト」を軸に育むブランド価値向上
渡邊かれん宣伝販促部 宣伝課

最初にお話ししてくださったのは、宣伝販促部 宣伝課の渡邊かれんさん。幼い頃からクラシックバレエを習い、大学は演劇学科の洋舞コースに入学。みんなで1つのものを作り上げることを学んだそう。周囲の友人はダンス業界やアーティストを目指す中、「好きなことをしながら自分のお金で生活したい」と心に決め、アパレル企業のみを狙って就活し、念願の ビームスに入社。入社して最初に配属されたのは、デミルクス ビームス 柏だった。カジュアルなスタイルが好みの渡邊さんにとって、きれいめスタイルが売りの「デミルクス ビームス(DEMI-LUXE BEAMS)」への配属には少し戸惑いがあったそうだが、実際に働いてみることでさまざまなレーベルの服を好きになることができたという。

社会人2年目と共にコロナ禍が始まり、キャリアについて考えることが多くなった渡邊さんは「自分はビームスで何がしたかったのか」「ビームスはどんな未来を目指しているのか」を考え、社内公募で現在の宣伝課に配属されたという。

宣伝課は、ビームスを形成する「モノ/コト/ヒト」のうち「コト × ヒト」を軸に、企業ブランドの価値向上に寄与するビームスの編集長的存在である。フェスや書籍の制作、サステナ関連のイベントなど多岐に携わってきた渡邊さんは、当時の写真を見せながら説明を行った。ビームスというとファッションという印象が強かったが、実際に商品を用いるだけではなく、イベントやフェスなどの「コト」と「ヒト」を掛け合わせてビームスを世間に伝えている。どの写真でも社員が心から楽しんで働いている姿が見られたのが印象的で、渡邊さんが就職活動時に理想としていたことがかなっているのだと感じられる。

挨拶から生まれるポジティブ循環
今井敬也サステナビリティ推進部 部長

次に登壇したのは、サステナビリティ推進部 部長の今井敬也さん。今井さんは多数の店舗で長年にわたり店長を経験した。そんな今井さんが1番大事にしてきたことは挨拶だ。挨拶をして場を盛り上げること、スタッフのモチベーションを上げること、ポジティブを全面に出すことが、売り上げにも大きくつながるという。実際にお話ししている姿も明るく、ポジティブな印象を受けた。

サステナビリティ推進部はできたばかりの新しい部署で、その責任者に抜擢されたのが今井さんだ。前例がないことからプレッシャーも多くあったが、人とのつながりを大切にしてきた今井さんを手助けしてくれる社員が多く助かったという。

サステナビリティ推進部では「ファッション業界=環境汚染産業」とみなされてしまう現状がある今、あらゆる人や業界を巻き込んだビームスらしい取り組みで、ファッション業界を取り巻く課題に向き合おうとしている。

今井さんは環境に配慮した事業活動だけでなく、働きやすい環境づくりや、地域・コミュニティとの共生・共創もサステナビリティ経営の一環だという。例えば、オフィスを開放して従業員向けのイベントを開催し、積極的にコミュニケーションをとる。すると新たなアイデアが閃いたりパワーをもらえたりするなど、従業員の幸福度を高める効果も期待できるのだそう。「今後若い世代が住みやすい地球を守っていくため、推進部が中心となって、0から1の積み重ねをしていきたい」と語る今井さん。さまざまな店舗で店長を経験し、多くの社員と関わってきたからこそできる取り組みだ。

「好き!」の情熱が生む"共感する”コラボ事業
佐野明政ビジネスプロデュース部 プロデューサー

最後に登壇したのは、ビジネスプロデュース部 プロデューサーの佐野明政さん。佐野さんは大のスポーツ好きで、1998年のサッカーワールドカップから全て現地で観戦しているという。そんな「スポーツが好き!」という気持ちを大切にしている佐野さんが社内で掲げるのが「スポーツ×地域×ファッション」である。

佐野さんは、スポーツは地域の誇りを醸成する鍵となる資産であり、ユニホームなど、スポーツをファッションと掛け合わせることで期待できるビジネスに取り組んできた。その事例の1つとして「Jリーグ × J60クラブ × ビームス ジャパン」が紹介された。Jリーグ30周年を盛り上げて欲しい、Jリーグの観戦をファッションに昇華したいなどの背景から、Jリーグ、ビームス共に地域を大切にしているという共通点を通して、Jリーグとビームス ジャパンのコラボ事業が始まったという。佐野さんは全ての仕事に対して、「日本を元気にしたい」「諦めたくない」「文化を大切にする」という気持ちを持って取り組んでいるそうだ。スポーツを愛する情熱が共感を生み出し、ビジネスが広がっていく様が大変興味深かった。スポーツに関心のあるFFiメンバーが特に興味津々で話を聞いている姿が印象的だった。

3人の話に共通するのは、ビームスが「社員の個性を大切にしている」ということ。それぞれに異なる「好き」や「得意」があることを活かして仕事ができる環境が整っていることを強く感じた。

最後の質問の時間では、FFiメンバーそれぞれが感じたことや疑問などを3人にぶつけ、時間が足りなくなるほどであった。メンバーからの鋭い質問にも丁寧に回答し、ビームス社員からも「中高生と話す機会はなかなかないので、とても刺激的だった」とコメントをいただいた。

近年働き方が大きく変わり、働き方に対しさまざまな答えがある今の時代において、学生は将来が不安なことも多い。今回のインターンシップで、個性を認め合い、さまざまな角度から社会を見つめ直し、あらめてビームスを通して「HAPPY」を届けている社員の姿を見ると、これが現代社会での理想的な働き方なのかもしれないと感じさせられた。

参加した学生のリポートから

「実際に活躍されている3人に経験談を聞くことができ、ブランドへの理解が深まりました。それぞれ自分のスタイルや価値観を大切にしながら働いていて、個性を尊重する企業であることを実感しました。将来、自分もファッションを通して誰かに影響を与えられるような仕事がしたいと強く思いました」(けん/高校3年)

「宣伝やサステナビリィについてたくさんのことを知ることができ、楽しかったです。自分の視野がとても広がりました。そして、将来『自分は何をやりたいのだろうか』とあらためて考えることもできました。また、ビームスという1つの会社にいても、それぞれやることが違うんだなと感じました。次は『どのように洋服ができるのか』など、洋服のことについてもっと知りたいです」(さお/中学1年)

「みなさんの話を聞いて『社会人とはこういうものなんだ』と明るく想像することができました。どの方々も人とのつながりを重んじ、何より仕事を楽しんでいて、理想の社会人像を間近で拝見することができました。何事もポジティブに挨拶から、人とあらためて向き合っていきたいと思います。ビームス大好き!」(川嶋洵生/高校3年)

「今回のインターンシップを通じて、『ナニが好きで、どうに貢献したいのか。それはナニを介して?』という疑問をあらためて自分に問いかけるきっかけになりました。登壇者3人の異なる職種やライフキャリアを聞くことで、それぞれが "譲れないもの”を知ることができ、仕事をする上でその軸がどれほど大事なのかを学びました。また、私はサステナビリティや社会課題に対する知識があまりに少なすぎると自覚したので、これからはニュースをたくさん見ようと思いました。そしてFFiに何度か参加させていただいている中で、『どんな順番で話したら相手に上手く伝えられるのか』『上手なプレゼンってこういうことなんだ』と、新たな気づきもたくさんあり、学びにつながっています」(FFi大学生メンター/成城大学3年大野和可)

「アパレル業界の大手であるビームスで働くみなさんのお話を伺い、改めて自分の夢であるアパレル業界で働きたいという思いが強まりました。社員の方々は皆、自分の『好き』に自信と情熱を持ち、周囲とのコミュニケーションや出会いをとても大切にしていて、本当にすてきだと感じました。私も自分の『好き』にもっと自信を持てるように、自分自身と向き合い、自分らしさを追求していきたいと思います」(FFi大学生メンター/明治学院大学2年久住琉菜)

今回のリポーターについて

松浦ゆら(まつうら・ゆら):福岡県出身。明治学院大学文学部フランス文学科2年。FFiでの活動を通じて、ファッション業界への理解を深めながら、自分の可能性を広げる。現在はフランス語を学習中で、グローバルで活躍できる職業を志す。今秋からのフランス留学を控え、日々インプットと発信を行い、最近はVLOG制作にも挑戦中

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