仏化粧品大手ロレアル(L’OREAL)は8日(現地時間)、皮膚科・美容医療領域であるフェイシャル・インジェクタブル市場大手のスイス・ガルデルマ・グループ(GALDERMA GROUP)の株式10%を新たに取得し、保有比率を20%に引き上げると発表した。ロレアルは、市場拡大を背景に美容医療分野への投資を強める。株式は、投資会社EQTが主導し、サンシャイン スイスコ(SUNSHINE SWISSCO)、アブダビ投資庁(ADIA)、アウバ インベストメント(AUBA INVESTMENT)などが参加するコンソーシアムから取得する。取引金額は明らかにしていない。ロレアルは手元資金と信用枠で資金を賄い、2026年初頭の完了を見込む。
ロレアルは、24年にガルデルマ株10%を取得し、戦略的パートナーシップを結んでいた。ニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)最高経営責任者(CEO)は声明で、「美容医療は当社の中核事業に近接する重要領域だ。初期投資の成果が大きく、関係強化を決めた」と述べた。ガルデルマのフレミング・オルンスコフ(Flemming Ornskov)CEOは、「当社は強い成長と革新を続けており、皮膚科分野のプラットフォーム拡大とブランド強化が進んでいる」として、ロレアルの追加出資が企業価値の向上に対する信認の表れと強調した。
フェイシャル・インジェクタブル市場は高成長が続く。調査会社インストロスペクティブ・マーケット・リサーチ(INTROSPECTIVE MARKET RESEARCH)によると、23年の世界市場規模は94億5000万ドル(約1兆4647億円)で、32年に181億2000万ドル(約2兆8086円)へ拡大する見通しだ。
ロレアルは、今回の株式取得後もガルデルマの戦略と独立性を尊重するとしており、さらなる出資は現時点では「検討していない」としている。一方、市場ではロレアルが将来的にガルデルマの一部事業、とりわけ皮膚科治療領域への関心を強める可能性を指摘する声もある。取引完了後、ガルデルマ取締役会で、EQT側が指名した2人の取締役をロレアル推薦の2人に交代する案を検討する。
ガルデルマは1981年、ロレアルとネスレ(NESTLE)の合弁会社として設立。2014年にネスレがロレアルの持分を買い取り、その後19年にEQTとADIAが同社を買収。スイス証券取引所に24年3月に上場し、株価は上場後155%上昇している。同社は約90カ国で事業を展開し、敏感肌用スキンケアブランド「セタフィル(CETAPHIL)」などのほか、ヒアルロン酸フィラーや神経調節剤などを取り扱う。売上規模は11年前の1億6000万ユーロ(約288億円)から24年には44億ユーロ(約7920億円)に成長した。
ロレアルは近年、皮膚科学ビューティ事業を強化しており、23年にはアクティブコスメティックス事業本部をロレアル ダーマトロジカル・ビューティ事業本部へ改称。傘下に「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」や「セラヴィ(CERAVE)」などを擁し、今期はグループで2番目の成長率を記録した。今回の株式取得は、ロレアルが10月に40億ユーロ(約7200億円)でケリング ボーテ(KERING BEAUTE)買収を発表したのに続く大型投資となり、同社の皮膚科学領域への注力姿勢を一段と鮮明にした。