ファッション

【ARISAK Labo vol.10】ラッパー・CHANGMOとARISAK 2人に通ずる“削ぎ落とす美学”

フォトアーティスト・ARISAKがファッション&ビューティ業界の多彩なクリエイターと共鳴し、新たなビジュアル表現を追求する連載【ARISAK Labo】。Vol.10となる今回のゲストは、今夏にアルバム「Op(オーパス).2」をリリースした、韓国出身のラッパー・CHANGMO(チャンモ)。今回の撮影のために来日したという彼と、2日間にわたり撮影を行った。

PROFILE: CHANGMO/ラッパー、プロデューサー

CHANGMO/ラッパー、プロデューサー
PROFILE: 1994年5月31日、韓国生まれ。幼少期からピアノを始め、14歳からビート制作をスタート。2019年には楽曲「METEOR」が大ヒットを果たし、「otel Walkerhill (feat. Hash Swan)」がMAMA2020「ベストヒップホップ&アーバンミュージック」にノミネートされるなど注目を集める。今年8月にはアルバム「Op.2」をリリースした

“If I had time”
CHANGMO × ARISAK
Interviewed by Daniel Takeda

今回撮影を行ったのは、イマーシブシアター・Anemoia Tokyo、裏千家茶道教室 SHUHALLY、渋谷スカイ。2日間に及ぶ撮影でのスタイリングは石川淳氏、ヘアスタイリングは芝田貴之氏、メイクはYUKA HIRAC氏が手掛けた。ARISAK、CHANGMO共に「新たな発見があった」というビジュアルは、一体どのように生まれたのか?2人の出会いから撮影背景、撮影時の様子まで、音楽業界に精通する竹田ダニエルが2人にインタビューを行った。

竹田ダニエル(以下、ダニエル):では最初に、ARISAKさんとの出会いについて教えてください。彼女の作品について最初はどういう印象でしたか?

CHANGMO:最初の出会いとしては、僕が所属していたレーベルのボスであるThe Quiett(ザ・クワイエット)というラッパーのアルバムのカバーを見て「これ誰がやったの?」と聞いたら、「ARISAKさんがやったんだよ」って教えてもらって、そこから彼女の存在を知りました。

それで名前を知ってから自然な流れで、昨年のイベントで初めて会うことになりました。そこで「はじめまして」と挨拶して、その後、韓国でもARISAKさんと3人でご飯を食べたり、自然と会う機会が増えていった、という流れです。

ARISAK:CHANGMOくんのボスのThe Quiettさんが若い子たちをフックアップして「場数を踏ませたいという思いから毎月開催している「RAP HOUSE」というヒップホップのイベントがあって。そのイベントを今回日本で初めて開催するというので見に行ったんです。

それにCHANGMOくんも来ていて、終わった後にみんなで打ち上げで焼肉に行ったんですけど、その時にインスタとかでお互いフォローし合ってたので、「あれ? CHANGMOくんじゃない?」ってなって話しかけた、という感じです。

ダニエル:ARISAKさんから見たCHANGMOさんの最初のイメージとか、「一緒に撮影したい」と思ったきっかけは何ですか?

ARISAK:最初に持っていたイメージは、すごく「優しさがにじみ出ている方だな」という感じで。そういうのは、目の感じとかに出るじゃないですか。気さくで優しい目をしているのが印象的でした。
彼の音楽ももちろん聴いていたけど、最初はインスタでつながって、「SMOKE」とか有名な曲にも参加されていたり「あ、これも、これもCHANGMOくんの曲なんだ」と少しずつ一致していった感じでした。

いわゆるギャングスターラップみたいなイメージが先行しがちだけど、その中でもピアノも弾いていて、天才的で唯一無二な部分があるし、同時にすごくやさしい感じもにじみ出ている人だなという印象でした。実際に話したら、私が思うイメージ通りでした。

ダニエル:今回、もともとCHANGMOさんがARISAKさんをフォローしたということですが、今回の撮影に至った背景や、撮影に至るまでのアイデア出しのプロセスとかは、どのような感じでしたか?

CHANGMO:The Quiettさんを通じてARISAKさんの作品を知り、そこからARISAKさんをフォローすることによって、「いつか一緒にやるんじゃないかな」という確信のようなものが自分の中にありました。

一方で、自分の見た目がわりとソフトな感じに対して、ARISAKさんの作品はすごくエッジが効いたコントラストがあるものなので、僕の見た目が果たしてARISAKさんの作品にマッチするのか、正直不安な面もありました。ですが、ARISAKさんの作品には普段からリスペクトを持っていて、全部信じているので、今回は彼女のリードについていこうと思いました。

ダニエル:作品を見させてもらったんですけど、アー写やライブ写真だと、基本的に大きいサングラスをしていたり、シルエットが大きい服を着ていたりすることが多くて、「かっこいい」「ちょっと近寄りがたい」みたいなイメージがあるんですが、ARISAKさんの写真を見ると、さっき言ったみたいな目のやさしさや柔らかい雰囲気、あとピアノの写真もすごく良くて。かなり内省的なアーティストのイメージをうまく引き出しているなと思いました。

CHANGMO:通常インスタとか表に出る写真っていうのは、かっこよく見せたいって思っている人が多いと思いますし、僕もそのうちの1人でした。ですが今回のARISAKさんとの作品に関しては、ダニエルさんの言う通りありのままの自分を表現できた気がしていたと思います。今回は、いつもと違う自分を表現できたような気がしています。

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ARISAK:すごくうれしい話。サングラスかけてる感じもかっこいいけど、CHANGMOくんの「個性的な美しさ」って絶対あると思っていて。アジアンモデル的な、高身長で、そのままでも画になる。

ただ、ナチュラルな制限の中での「ちょっとした変化球」みたいな感じで見せたいなとも思って、今回はとにかく「削ぎ落とす美学」を意識しました。私の世界観の中でも、必要なものだけ残す、っていうのをすごく大事にしました。

LOOK

ダニエル:ARISAKさんに撮影のお話を伺いたいんですが、撮影場所は渋谷スカイなどのロケーションも含めて、どういうふうに選んだかとか、どういう部分を引き出したかったかっていうお話を聞かせてください。コンセプトとか衣装のポイント、難しかったことや注目してほしいところなどあれば。

ARISAK:今回のタイトルはCHANGMOくんの曲の「If I Had Time」っていう曲名にちなんでいて、「もし時間があったら」というニュアンスです。時間の制約のない不思議な世界に来たCHANGMOくん——それがイコール「日本」なんですけど——その不思議な世界を旅している、というイメージです。

その世界が実は夢の中なのか、そうじゃないのか、どっちなんだろう?という見せ方にしたくて、「これは夢なの? 現実なの?」と思わせるような世界観を目指しました。なので、時間の制約のない不思議な世界を表現できそうなロケーションを選んでいて、それが渋谷スカイの屋上だったり、イマーシブシアター Anemoia Tokyoという劇場セットだったり、本物の裏千家茶道教室のSHUHALLYだったり。主にその3ロケーションを回りました。

映画のインスピレーションになったのは「マトリックス(The Matrix)」とか「インセプション(Inception)」、「インターステラー(Interstellar)」などクリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)系の作品。毎回そういた映画にインスピレーションを受けることが多いんですが、「ここはインセプションらしい」「ここはマトリックスらしい」という思想を感じるロケーションを厳選しました。ロケーションのアポイントメントの確認に時間がかかって大変だったんですけが、編集担当の方とも手分けしてロケハンに何度も行って、「ここだ!」って場所を詰めていきました。

CHANGMOくん本人のビジュアルイメージとしては、「マトリックス」の主人公・ネオみたいな感じがいいなと思っていて。ネオみたいな強さもありつつ、内面のセンシティブさも両方引き出したかったんです。映画の主人公って、実は作り込みすぎていないというか、「削ぎ落とされたナチュラルさ」があると思うんです。だから今回も、自分の世界観なりのストーリーで必要な部分以外はとにかく削ぎ落とす。詰め込みすぎない。「派手さ全開」なものももちろん好きだけど、今は情報量の多いビジュアルがあふれすぎて、見る側も疲弊している気がしていて。自分自身も変わらなきゃいけないなと思っていたタイミングだったので、今回の企画はすごくいいきっかけでした。本当に、かなり気合いを入れてやりました。

ダニエル:そのあたりについて、CHANGMOさんの印象も聞いてみたいです。撮影全体を振り返ってみての感想とか、ロケーションで印象に残っている場所、気に入っているルック、韓国での撮影との違いなど、クリエイティブの捉え方の違いなども含めて教えてもらえますか?

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CHANGMO:20代の頃にライブで東京に来たことはありましたが、「ライブだけしてすぐ帰る」みたいな感じで、自分で東京を選んで「ちゃんと満喫する」というのは、30代になってからが初めてでした。
僕にとっての東京はずっとファンタジーというか、神秘的な都市というイメージがあったんですけど、今回の撮影で訪れた場所は、まさにそのイメージを視覚化したような場所でした。たとえば横浜でピアノのカットを撮影したSHUHALLY、渋谷スカイでのカットもそうですけれども、自分が抱いていたファンタジーがそのまま形になっていて、とても印象的でした。

ルックに関しては、「ユリウス(JULIUS)」というブランドが本当に好きで。ずっとインスタグラムをフォローしていたんですけど、自分の背が高いので「これを着こなせるのかな」と躊躇していたブランドでもありました。でもARISAKさんの撮影を通して実際に着ることができて、とてもうれしかったです。

何よりも今回の撮影で感じたことは、言葉が通じなかったとしても、本当にいいアーティスト同士ならフィーリングで目指すゴールが一致するんだな、ということ。今回の撮影を通してそれを体感できました。ARISAKさんには本当に拍手を送りたいです。

ARISAK:彼にとって、今回のようなファッションシュート、そして日本での撮影が初めてだったので、日本の現場の感じも全然分からない中、不安もすごくあったと思うんですけど…でもCHANGMOくんって、すごく素敵なものをたくさん持ってる。「ユリウス」も本人が「好き」って言ってたので、スタイリストの淳さんにダイレクトに「『ユリウス』借りてきてほしい」とお願いして、今シーズン全部借りてきたんじゃないかってくらいたくさんお借りできて、本当に助かりました。現場でも「これ全部CHANGMOくんに合うじゃん!」って盛り上がって。だからこそ、いいものをいっぱい持っているCHANGMOくんが不安もたくさん抱えてるのが意外でした。

CHANGMO:「意外に不安だったんですね」と言われて、自分でも改めて考えてみたんですけど、実は韓国でもこういったファッション系や作品撮り、いわゆる「作撮り」をあまりやってこなかったーーというよりは、避けてきたところがありました。

過去にやったことはあるけれど、満足できる結果を得られなかったので「それならやらない」という選択をしてきたんです。でもARISAKさんに関しては、不思議と最初から「この人は信じられる」という感覚があって、誘われた時点で信頼できた。だから今回の撮影は不安もあったけど、「ARISAKさんと一緒にやれて本当によかった」と心から思っています。

ARISAK:こちらこそです。しかもこの連載のためだけに来日してくれて。今回のためにわざわざ来てくれたので、「絶対いいものを撮ってやる!」みたいな気持ちで、相性が良さそうな日本のクリエイターたちを集めました。

ヘアスタイリストの芝田さんはなかなかスケジュールが取れないとても人気の方で、「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」の広告のヘアーも担当されていて。「メンズはヘアーが命」だと思うのでどうしてもこだわりたくて、芝田さんにお願いしました。せっかく韓国から来てくれるんだったら、「心臓削って一旗あげてやる!」くらいの勢いで悔いが残らないようにやり切りました。

CHANGMO:国ごとのスタイルの違いというよりは、結局は「人」だと思っています。国籍とか、その国のしきたりとかではなく、担当している人がどういうスタイルを持っているのかが大事。

今回のARISAKさんの撮影に関しては、僕が普段音楽を作る時、「無駄な音を入れず、大事なものだけを作る」ことを意識しているんですが、それがARISAKさんにも共通していると感じました。たとえばシャッターを切る瞬間も、本当に「ここだ」という時だけ撮っていて、それがとても印象的でした。

ARISAK:そうかもしれない。他のフォトグラファーよりも、シャッターを切る回数は少ない方だと思います。必要のないカットはあまり撮らないタイプです。

ダニエル:ありがとうございます。今回の撮影を終えてどんなインスピレーションを受けたか、そして次にARISAKさんと撮影するとしたらどんな撮影がしたいか、教えてくれますか?

CHANGMO:今回2日間撮影させていただいた中で、ずっとARISAKさんには「今回すごくインスピレーションを得た。ありがとう」と伝えていました。自分1人だったら絶対に企画しなかったであろう内容やルック、新しい自分と出会えたことに強いインスピレーションを受けました。

音楽においても、これを機に今までやってこなかったタイプの音楽を新しく作ってみてもいいのかもしれないーーそれが新たな自分につながるかもしれない、という勇気を与えてくれた撮影でした。

ARISAK:めっちゃうれしい。撮影中、本当にずっと楽しそうだったよね。フェイクな笑顔じゃないというか、「素で楽しんでる」のが分かる感じで、それがこちらのエネルギーにもなってました。

ダニエル:今回の撮影で日本に来てくれたのもそうだし、ARISAKさんからは「日本での活動を広げたい」という話も聞いたんですけど、日本の人からするとヒップホップも含めて音楽業界全体が「韓国の方が盛り上がっている」ように見えるし、韓国に行きたい人がすごく多いと思います。そんな中で「日本でも活動したい」と思う気持ちとか、日本の音楽シーンのどういうところが面白いと思っているのかを聞きたいです。

CHANGMO:音楽を「伝えたい」みたいな、大げさなことをしたい、というよりは、隣の国である日本で、自分CHANGMOとしての音楽活動をナチュラルにやれたらいいなと思っています。

アンダーグラウンドのシーンで活動していると、似たようなジャンルのミュージシャン同士で自然と仲良くなったりするじゃないですか。韓国・ソウルの音楽シーンで自分がそうやって音楽の輪を広げてきたように、日本でも同じような考えの人やそうじゃない人、いろんな人と交流して、彼らと音楽的な話をするためにも、また日本に来たいです。

ダニエル:CHANGMOさんのディスコグラフィーを見ると、本当に「韓国ヒップホップの中心にいる人」という印象で、あらゆる人とコラボしてるし、あらゆる曲にフィーチャーされているし、すごく中心的な存在だと思います。

CHANGMO:自分は韓国ヒップホップシーンの「中心」にいるとは思っていません。どちらかというと、これから中心になりうる若手アーティストをサポートする先輩の立場になってきたように感じています。

自分は韓国で十分たくさん活動してきたので、これから出てくるエナジーあふれる若手をサポートしたい気持ちが大きいし、韓国全体を揺るがすようなすごい曲がこれから出てくることを願っています。そのために、自分はサポートしていきたいです。

ダニエル:すごい…責任感が素晴らしいですね。

ARISAK:本当にそう思います。

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ダニエル:CHANGMOさんは過去にオーケストラでピアノを弾いていて、クラシックのバックグラウンドがあるんですよね。最新のシングル「Op.2」の中で、ロッテコンサートホールでの音源が収録されていますが、クラシックとヒップホップってイメージが全然違うから、すごく面白いなと思って。そのクラシックのバックグラウンドは、今の音楽活動にどういう影響を与えていますか?

CHANGMO:もともと幼い頃からずっとピアノが好きで、ピアノをずっとやっていたので、自分がラッパーになるとは思っていませんでした。大学もアメリカやヨーロッパの音大に進んで、その道に行くつもりでした。
でも、音大ってとてもお金がかかるので、せっかく受験に受かっても行くことが難しく、夢を諦めざるを得なかった。それくらい家庭の事情が厳しくて、いわゆる「ヒップホップ的な家庭」だったので、「お金がないから何もできない」という現実に対する怒りをその時覚えました。その怒りをぶつける場所が他になかったからこそ、ヒップホップにはまるようになりました。

当時は「ラッパーになりたい」と思って歌詞を書いたというよりは、不安や怒りをライムにして歌詞にしていったのが、今の活動につながっています。ロッテコンサートホールでのオーケストラのライブ映像を使うのも、本当はずっと昔からやりたかったことですが、なかなか実現が難しく時間がかかっていました。今回、ロッテ側が手を挙げてくれたことで、ようやくこういったコラボが実現したんです。

ARISAK:すごい話…。

ダニエル:そこまでは全然知らなかったので、教えてもらえてうれしいです。「Op(オーパス).2」の最新曲、「If I Had Time」もすごく大人な雰囲気で、内面にフォーカスした曲だと感じました。この曲の制作背景や、今後どういう曲を出していきたいかを教えてほしいです。

CHANGMO:韓国で、タイトルを「オーパス(Opus)」と読んでくれる人がなかなかいないので、ダニエルさんがちゃんと読んでくれてすごくうれしいです。クラシックの曲って「〇番・〇番」と数字が増えていくじゃないですか。なので、この「オーパス」シリーズも1、2で終わらせず、できれば100まで続けたいと思っています。クラシックの音楽家たちは作品に番号をつけますよね。商業音楽のアルバムとは違って、「曲集」みたいな概念になっていく。このOPUSシリーズにこれから入っていく曲たちは、「If I Had Time」も含めて、もっと正直に、詩的に、自分が言いたいことを素直に言える作品にしていきたいと思っています。

ダニエル:「100までやりたい」というのは、ファンが聞いたらすごくうれしい話だと思います。先程「次世代のラッパーやヒップホップアーティストを支える存在になりたい」とも言っていましたが、どんどん韓国の音楽が世界的に盛り上がっている中で、CHANGMOさん的に、韓国ヒップホップシーン、さらには韓国の音楽シーン全体は今後どんなふうに進化していくと思いますか? 予測でもいいし、「こうなったらいいな」という未来像でも大丈夫です。

CHANGMO:韓国音楽シーンの今後を正確に予測するには自分の人生経験がまだ足りないと思っているので、「こうなる」と断言はできないけれど、「こうなってほしい」という未来はあります。

日本や韓国、中国、台湾など、近隣アジア諸国の音楽的な交流がどんどん増えてきています。それはiPhoneなどのテクノロジーや、さまざまな媒体を通した交流も相まって、文化を楽しみやすい時代になったと感じています。たとえば、自分がマイク1本持って違う国に行ってライブをしても、「808(ヒップホップのベースの音)」をみんな理解して、一緒に楽しんでくれる。

交流しやすい時代になったからこそ、これからの10年は、いろんな国の人たち——若手もそうですし、自分も含めて——がより交流して、一緒に音楽を作って楽しめる空間をつくっていけたらいいなと思っています。自分も日本のアーティストとこれからコラボしていきたいし、日本のアーティストの皆さんも、僕のことを見つけてくれたらうれしいです。実は最近、プライベートでも静かに日本に来ていて、普通の観光客みたいに原宿をうろうろしていることもあります(笑)。

ダニエル:じゃあ、日本での活動を広げるにあたって「挑戦してみたいこと」、例えばコラボしたい人や、ライブをやってみたい場所とか、何かあれば教えてください。ARISAKさんとの次の企画でもいいです。

CHANGMO:今回の撮影が終わったあと、ARISAKさんとは「今度はARISAKさんを韓国に招いて、韓国のロケーションで撮影してみたい」という話をしました。というのも、自分が見るソウルは「つまらない」と感じてしまうこともあるけど、ARISAKさんの審美眼なら「ここ、面白いじゃん」という新たな発見をしてくれるんじゃないかと期待しているからです。日本のアーティストで誰が好きか、誰とコラボしたいかという話では、本当は坂本龍一さんをものすごくリスペクトしていて、コラボしたかったけれど、亡くなられてしまったのがとても残念だと感じています。

ダニエル:ARISAKさんはどうですか?

ARISAK:早くまたコラボしたいです(笑)。来週、韓国でCHANGMOくんのライブを見に行こうとしているところで。日本にも来てくれたし、それはそれとしても、彼のフルセットのライブをちゃんと見てみたい。前に日本で見たときはショートセットだったので、「これはガッツリ見たい!」と思ってたタイミングで、ちょうどライブ告知を見て、「今逃したらもうない気がする」と思って行くと決めました。今回いろんなルックで撮影したんですけど、「一番お気に入りのルックは何か」を聞いてみたいです。

CHANGMO:全部好きなんですけど、どうしても選ばなきゃいけないとしたら…3つくらいにまでならなんとか絞れるかもしれない、でも本当は選びたくない、っていうくらい全部好きでした。それから、いくら成功したラッパーとはいえ、100万円を超えるような服を着るのは本当に勇気のいることなんですけど、ARISAKさんを通してそういう服を着ることができて、とても感謝しています。

ARISAK:トータルいくらなんだろうね(笑)。「これCHANGMOくんらしくない?」みたいな淳さんからのスタイリング提案もありつつ、コンセプトとしては「ドメスティック、日本のブランドで全部統一してほしい」とお願いしていました。

私が一番「CHANGMOくんのニューチャプターだな」と思ったのは、羽を持っているカット。白い服を着ていて、背景に自然がある写真。あのカットが一番「新しい」というか、自分の作風的にも新しい感覚があって。削ぎ落とされてるけど内省的で、でも目はちょっと強くて、赤いカラコンも入っていて…その絶妙なバランスがすごく良かったです。
赤いカラコンはメイクのユカさんからの提案。その提案をもらったときは痺れました。彼女のメイクの世界観が本当に大好きです。

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CHANGMO:あのルックは、自分だったら絶対に選ばなかったものなんですけど、写真で見たら意外と似合っていて新しい発見につながりました。本当に感謝しています。

ARISAK:あのカットは、スタイリストの淳さんのプランがすごかったなと思う。削ぎ落とした美学を熟知している。私はCHANGMOくんのことをよく知っているけど、当日までスタッフの皆さんは彼のことを知らない状態で、どういう雰囲気の人かもわからない中、ものすごく汲み取ってくれて。

私は油断するとどんどん詰め込みたくなるタイプなので、ロケーションもスタイリングも派手にしがちなんですけど、その「ストッパー」になってくれたとおもいます。羽の提案もその方で、「翼を片方君にあげる」みたいな歌詞が「If I Had Time」や「Fade Out」に出てくるんですけど、それともリンクしていて、ピースが全部ハマったかんじでした。

CHANGMO:スタイリストの淳さんとは、これから友達としても仲良くしたいなと思っています。感覚がすごく合うと感じました。

ARISAK:私は0から作品をつくるタイプなので、どの方とどの方をスタッフとしてチーム編成するかというところから、作品のストーリー構成やビジュアルディレクション、撮影イメージなど全て1人で構成します。スタッフの皆さん各々の世界観や思想がありつつも、私の世界観に皆さんがチューニングしてくれて、全体のバランスがすごく良くなった気がしますね。 とてもいいチームで空気感も最高だったし、あの2日間が思い出深いです。

ダニエル:私が個人的に気になっているのは、CHANGMOさんが「普段どういうところからインスピレーションを得ているのか」というところです。映画なのか、クラシックなのか、世界のアーティストなのか…出している作品の数も多いし、どういうものをインプットしているのかを聞きたいです。

CHANGMO:20代の頃の僕は、クラブに行ったり、お酒を飲んだり、いわゆる「外側の世界」にインスピレーションを受けて曲を書いていました。でも最近は、1人でいる時間がかなり増えたので、孤独や自分の内面と向き合いながら、言いたいことを内側から探す努力をしています。

ダニエル:今回のインタビューでちゃんとお話しするのは初めてだったので、ライブで見ていた時は「すごくかっこいい人」というイメージが先行していましたが、質問をすごく真剣に聞いてくれて、よく考えて、なおかつ謙虚に答えてくれて、私はさらにファンになりました。

CHANGMO:本当にありがとうございます。僕も、改めて「WWDJAPAN」とARISAKさんの企画に参加できたことを光栄に思っています。

ARISAK:さっき「孤独」や「自分の内面にインスピレーションを得ている」と話してくれたけど、私もファンタジーな作品が多いとはいえ、根っこにはやっぱりそういう内省的な部分があって。CHANGMOくんの最近の内面の部分や、孤独からくるインスピレーションにすごく引かれていたんだなって、今日話を聞いてあらためて感じました。

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CREDIT
STARRING:CHANGMO
DIRECTION & PHOTOS:ARISAK
HAIR:TAKAYUKI SHIBATA (SIGNO)
MAKE UP:YUKA HIRAC
STYLING:JUN ISHIKAWA
INTERVIEW TEXT:DANIEL TAKEDA
TRANSLATION: SUNGJOON CHOI, YONYON
LOCATION:ANEMOIA TOKYO, SHUHALLY, SHIBUYA SKY
LOGODESIGN:HIROKI HISAJIMA
SPECIAL THANKS:DAZZLE TATSUYA HASEGAWA
※特別な許可を得て撮影しています

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