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「イソップ」新作香水“アバヴ アス、ステオーラの開発秘話 香りに秘められた“天空のアンバー”が意味するものとは

イソップ(AESOP)」から登場したオードパルファムの最新作“アバヴ アス、 ステオーラ オードパルファム(以下、ステオーラ)”は、ブランド初となるアンバー系のフレグランスだ。同ブランドは2005年から、自然で独創的な方法でフレグランスを開発している。繊細で細かいニュアンスを表現するために香料本来の姿にこだわり、知的好奇心を掻き立てるようなストーリー性が「イソップ」のフレグランスの特徴だ。

新作の名前“ステオーラ”とは古英語で“ステラ=星”のこと。流れ星がインスピレーションのこの香水は、頭上の星空に広がる無限の可能性を香りで表現している。調香を担当したのは、セリーヌ・バレルだ。“タシット”や“オルナー”に続き、3度目のコラボレーションになった。アンバー(琥珀)は、そのもの自体に香りはない。それをバレルは、どのように表現したのか話を聞いた。

アンバーと星空、宇宙とつながるために必要だった勘

この香りの出発点は、黛まどかの俳句「流れ星 行方知らずの 恋をして」や星空の写真、さまざまな色をした琥珀など。彼女は、ブリーフィングにある星とアンバーについて思考を巡らせ、共通点を見つけたという。アンバー(琥珀)は地層に眠る宝石。彼女は、それが天空から舞い降りた星のように思えたようだ。「流れ星の香りを想像したとき、夜空に輝く星と地層に眠るアンバーという一つの物語がつながった」。彼女が目指したのは、“天空のアンバー”の表現だ。

香りのないアンバーを表現するにあたり、バレルが考えたのは流れ星が持つ双対性だったという。流れ星が暗闇で放つ光、動的なエネルギー、地上に着地した時の静けさに見られるコントラストを香りで表現したいと考えた。「天と地、明暗、熱さと冷たさ、さらには、心と体の二元性を喚起するような香りを目指した」。

「イソップ」のクリエイションは、知的で哲学的なアプローチが特徴だが、“ステオーラ”の調香にあたり、バレルはそこからさらに自身の姿を投影させストーリーに発展させた。「今回は、もう少し“肉感的”な香調を導入したいと考えた。自分自身が宇宙と深くつながるには、内臓レベルの勘を働かせる必要があると感じた」とバレル。そのため彼女が採用したのは、シナモンやバニラビーンといったスパイスだ。「これらを使うことで、包み込まれるような肉体的な安心感が加わる。“ステオーラ”は、私たちの動物的本能に語りかけるような香りだ」。

「イソップ」にとって”らしくない”香りへのチャレンジ

通常アンバーの香りというと、甘く、パウダリーなイメージが強い。だが、“ステオーラ”は、その概念を覆すような香りだ。樹脂やウッディ、スパイスを基調にした型にとらわれない「イソップ」の姿勢を表現している。バレルは、「“ステオーラ”は、アンバーフレグランスを再構築した香り。艶やかさと節度の両方があり、肌にまとうと澄んだ贅沢さを感じるはずだ」と語る。肌につけると、カルダモンが香り、フランキンセンス(樹脂)からバニラビーンの温かみのある香りへと変化する。

彼女は、「アンバーの香りを作りたいと言われた時、不意をつかれたようだった。アンバーは、甘くパウダリーな香調でノスタルジックな印象。それは、型にはまらない『イソップ』の潮流からかけ離れていると感じた」と話す。”らしくない”香りを作ることは、「イソップ」にとって大胆な試みだ。それは、バレルにとっても新たな挑戦だった。「存在するアンバーフレグランスと歩調を合わせない視点で捉えるため、アンバーアコードを解体して、調香の比率を大胆に変え再定義した」とバレル。「イソップ」らしい”アンバー”にするためには、それを構成する素材一つ一つに立ち戻る必要があった。

新たな香りを通して紡がれる物語り

トップノートには、流れ星の明るさとエネルギーを表現するために冷たさを感じるスパイスの1つであるカルダモンを使用。アンバーにありがちな“重く甘い”印象を“かすかな甘さ”にするために、フランキンセンス、ラブダナム、バニラビーンを組み合わせた“ファビュリスト アコード”を開発した。バレルは、「“ステオーラ”は、カルダモンの鋭さとファビュリスト アコードが描く甘さの幻影の二面性がある香りだ」と話す。現代的でミニマル、流麗さもある「イソップ」を体現するアンバーフレグランスに仕上がった。この香りの開発には、イソップのチームと協業で2~3年の年月をかけたという。

人類が天を見上げ、夢を持ち、未知の世界へ飛び込む、そのためには、足元にある大地をしっかりと感じることが必要だというメッセージが込められた“ステオーラ”。バレルは、「私は、共感覚(シナスタジア)の力を信じる。優れた香りは五感全てを惹きつける心に響くストーリーがある」と話す。「イソップ」では、新たな香りが誕生するたびに、素材一つ一つの個性を熟知した調香師という語り手を通して、嗅覚という知覚を超えて訴えかけるストーリーが紡がれる。

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