
慶應義塾大学発の服飾団体Keio fashion Creator(ケイオウファッションクリエイター、以下KFC)は9月19日、代官山にあるセレクトショップ・カーブストア(CARV STORE)と一日限りのポップアップイベントを開催した。同イベントでは、KFCが制作した最新のルックブックやカーブストアとのコラボレーションビジュアルを展示。カーブストアの“Curve”にちなみ、“歪み”をテーマに作られたこのビジュアルは、直線が集合することにより歪んで見えるモアレ現象にインスピレーションを受け制作したという。
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ポップアップイベントでは、山田雅之レインボーシェイク代表による講演会を実施。「ジュンヤワタナベ(JUNYA WATANABE)」「キムへキム(KIM HEKIM)」などを取り扱うカーブストアの運営や、「ノリエノモト(NORI ENOMOTO)」などプロダクトブランドを有するレインボーシェイクの設立背景や、学生が悩むキャリアプランについてのヒントを語った。
山田雅之レインボーシェイク代表に聞く
キャリアプランの描き方
PROFILE: 山田雅之/レインボーシェイク代表

Keio Fashion Creator(以下、KFC):山田さんのこれまでのキャリアについて知りたいです
山田雅之レインボーシェイク代表(以下、山田):ファッションの専門学校に通っていたころは、スタイリストを目指し、アシスタントとして経験を積みました。でも正直、金銭的な問題もあり、一回就職をしようと考えたんです。そのとき好きだった「ヘルコビッチ アレキサンドレ(HERCHCOVITCH ALEXANDRE)」というブランドを有するアッシュ・ぺー・フランスに入社し、当時傘下にあったPR01.というプレスチームに参加することになりました。
プレスルームではリースの返却対応や、スタイリストのアテンドをしたりするのですが、そのときに最初に来てくれたお客さんが、スタイリストアシスタントをしていた当時の師匠だったんです。過去の人脈や経験は、そうやって後からつながってくるもの。今回のKFCのイベントも、業界の先輩方と出会う貴重な機会。プロの方と関わる時間は、キャリアを築く上でとても大切なことだと思います。
アッシュ・ぺー・フランスで会社員を経験したのち、3〜4年ほど専門学校の教員を務めていた時期があります。その後フリーランスを経て、ブランド事業を立ち上げて起業し、今は組織を作る立場にいます。教員をしている中で自分のコンプレックスになっていたのは、「服について教えているにも関わらず、服にほとんど触れられない」ということ。私自身、27歳くらいまではほとんど海外に行ったことがなかったんです。そんな中でフリーランスになりたいと思い職場の先輩に相談したら、業務委託として講師を続けてほしいと言ってくれました。当時の私にとっては業務委託がどんなものなのかもわかりませんでしたが、結果的に講師をしながら、年4回、2週間ほど海外に行く生活を実現することができたんです。現地ではファッション業界内外のトレンドマーケティングをしているうちに起業したいと思うようになり、今は会社を経営する立場になりました。
会社を辞めても、フリーランスになっても、起業をしても、自分が歩んできたキャリアの周りにいた人たちと仕事ができている今、振り返ってみればそれらの経験が全て今につながっていると感じます。その場所で一つ一つ経験を積んで信頼関係を結んでいった結果、今も皆さんと一緒に仕事ができていて、それがコミュニティーになっていく。自分自身のカルチャーを築いてきた欠かせない経験だったのだと思います。私が会社を辞めた当時は、きっと組織に対するモヤモヤがあったり、自分がやりたいことをやる上で障壁を感じていたからだと思いますが、そんな自分が今は組織を作っているーーどこか矛盾もありますが、会社員をやっていた経験が組織作りに生かされていると感じます。
KFC:キャリア選びについて、何かヒントをもらえるとうれしいです
山田:皆さんは今、将来どんな仕事に就きたいと考えていますか?ファッションの仕事=メーカーやブランドなど、作る分野に特化した職業に焦点が当てられることが多いと思いますが、「今自分がやっている勉強×仕事」など、将来的にファッション分野へ幅を広げていきたいなど、いろいろな考え方があると思います。例えば、今一緒に働いてくれている弁護士は、ファッションエディターを経てファッションローに特化した働き方をしています。ファッション業界に対する知見があるので、話がとてもスムーズ。そんなふうに、違う分野のお仕事でもファッション業界に貢献できる働き方はたくさんあります。
KFC:「なりたい自分」を実現するために、必要なこととは?
山田:今に至るまでの10年以上、私が意識して行ってきたことを皆さんにお伝えしたいと思います。まず1つは、「20文字以内で自己紹介ができるか」。私自身は27歳のときに「日本一の次世代ファッション教育者」と言葉を掲げ、それに向かって走り続けてきました。今は経営者ですが、私の根本は教育者であり、だからこそ今回のような機会を大切にしたいと思っているのです。
2つ目は、「自分に何ができるか」=運動エネルギーを増やしていくこと。この運動エネルギーを蓄積していくことが、自分のブランディングにつながります。では、どうすればこの運動エネルギーを獲得できるのか。“ティッピングポイント”という言葉をぜひ覚えてほしいです。1つの分野に対して費やしスキルをモノにするには約1万時間が必要と言われ、この1万時間=“ティッピングポイント”を超えると、自分の強みとなる運動エネルギーになるのです。この1万時間は、社会人の働き方に換算すると約3年間。3年間同じ職種を続けていれば経験スキルが身につき、1つの強みになるのです。
私で言うなら、ファッション業界に20年、教育に14年携わってきました。この掛け合わせで、“ファッション×教育”ができるようになる。そうして掛け算をしていくうちにオリジナリティーが生まれ、それが自分のブルーオーシャンになるはずです。色々な運動エネルギーを手に入れるには決め切ることも大事ですし、焦らずにやり切る力=“グリッド力”も大事。学生の皆さんにはぜひ10年後になりたい自分を想像しながら、必要な運動エネルギーを見定め、獲得し、未来に向かって進んでほしいと思います。
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