
日本と比較して暑さ、特に湿度への意識が薄かった欧州のファッションシーンだが、“地球沸騰化”とも言われる気候変動の中で変わり始めている。今季は、パジャマのようにリラックスしたスタイルや、シワ加工やシアサッカーなどの素材使いでリゾートムードを演出しつつ、肌に触れる面積を最小化。レザーなど日本では難易度の高い素材でも、風になびく軽やかさを追求し、メゾンならではのクラフツマンシップが夏の新たな装いを形作っている。(この記事は「WWDJAPAN」2025年7月7日号からの抜粋です)
「エルメス(HERMES)」
DESIGNER/ヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)
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「エルメス」の手仕事の魔法で、重厚なはずのレザーが風をはらみ、まるで呼吸を始めたかのように見えた。オープンワークで繊細に編まれたヌバックや羊のレザーは、Tシャツやブルゾン、パンツへと仕立てられ、極薄スエードのスカーフが首元で軽やかに揺れる。最上のクラフツマンシップがなし得る夏の装いだ。シャンタンシルクやポプリンの上で、サンドやミント、バーガンディーの詩的な色彩が日差しと溶け合い、柔らかな陰影を描き出す。
「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」
DESIGNER/ドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)&ステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)
“パジャマ・ボーイズ”を掲げた今季は、酷暑にこそ映える究極のリラックスウエアによる色気の提案。コットンポプリンの開襟シャツに短丈ショーツはリラックスしたムードではあるものの、手刺しゅうが煌めき、ファーや艶っぽいレザーアウターが重ねられると、どこか挑発的に映る。都市とリゾートやオンとオフの間を揺れながら、ラグジュアリーな官能をまとったパジャマルック。フィナーレは、会場の外を大行進して締めくくった。
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